コーディネーターのまとめ暉峻 衆三氏(農業・農協問題研究所理事長)
このシンポジウムは、三人の外国のパネラーを迎え、北海道から九州までスタッフを含めて四百十人が参加、その半数は農民です。
国際的な経験の交流・連帯さらに私たち参加者は、より深い認識と確信に満ちて、パネラーの発言を聞くことができました。それは、われわれが日本で日常的に経験していることが、アメリカでもメキシコでもインドネシアでも、形は違うけれども、基本的には同じことが起きている、そう感じたからです。このことは、国際的な経験の交流と連帯を強めていく意義を、参加者により深く認識させたといえるでしょう。そして、三人の外国のパネラーもまた、同じ見解ではないかと思うのです。各国の経済を支配し、政府とWTOなどの国際機関を動かしているのは、多国籍企業だということが、はっきりしてきました。彼らは、新自由主義・市場原理にもとづく貿易の自由化を政府とWTOなどの国際機関に実行させ、企業展開していますが、世界の民衆に対する責任には欠けています。この多国籍企業の支配のもとで、富と貧困、所得の格差がますます広がり、失業者が生まれ、多くの農民が海外への出稼ぎを余儀なくされ、経営が立ち行かなくなっていること、そしてそれに対抗する民衆の運動・たたかいが、各パネラーから実にリアルに報告されました。
日本政府の弱点・困難さ追及してWTO閣僚会議は、一九九九年のシアトル、そして昨年のカンクンと、二度にわたって挫折しましたが、このことは、民衆の国際連帯がいっそう強まってきていることを示しました。多国籍企業は、新自由主義にもとづく貿易の自由化を推進することにつまずき、いま地域での貿易自由化協定、FTAの締結に奔走しています。しかしメキシコからの報告は、北米自由貿易協定(NAFTA)がメキシコの農業と農民に何をもたらしているかを、リアルに明らかにしました。日本政府は、WTOへの提言の中で「各国の多様な農業の共存」を掲げ、四〇%に落ち込んでいる食料自給率を二〇一〇年までに四五%まで引き上げることを目標にしています。その一方で、多国籍企業の要求を踏まえて、貿易の自由化の道を推進するという手法をとっていますが、ここに、日本政府の困難さと弱点があります。民衆のサイドで、この弱点を徹底的に追及していくことが求められています。
食糧主権による食の安全確保をフロアーからの発言では、食の安全・安心、地産地消、学校給食など、創意と工夫にあふれた要求と運動が、日本でも強まっていることを示しました。こうした運動の広がりは、国の政策を変え、WTOという国際システムをも変える大きな力になっていくにちがいないと思います。外国のパネラーも、こうした日本の運動を深く認識し、学ばなければならないと感じたのではないでしょうか。多国籍企業が支配するアメリカで、いまどういう事態がおこっているのか。四月六日付の「日本経済新聞」にワシントン支局長が、「アメリカでは、保護主義的圧力が今までとは違って手ごわい状況になっている」と書いています。それは、新自由主義による被害者が増大しているからだとして、学会やマスコミでも批判が強まっているそうです。多国籍企業は強大なようにみえますが、民衆が粘り強く新自由主義に反対する運動をやっていけば、未来に展望はあるのではないでしょうか。 最後に、私たちは、違ったところで働き、生活し、運動を進めていますが、新自由主義にもとづいて貿易の自由化を進める多国籍企業の政策に、「おかしい」と異議申し立てをして、食糧主権にもとづく食糧の安全保障を確保していこうではありませんか。 このシンポジウムの成功を力に、さらに国内そして国際レベルでの連帯の輪を広げましょう。
(新聞「農民」2004.4.26付)
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[2004年4月]
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