「農民」記事データベース20140203-1103-10

1年間の運動報告と
今後の方針について
(6/7)

2014年1月21日
農民連運動全国連合会常任委員会

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 (3)要求運動の重点

   (1)原発事故の賠償請求、被災地を復興させる運動
 東電と政府の賠償逃れは絶対に許されません。原発事故で暮らし、生業、財産を奪われた被害者への全面的な補償、精神的損害に対する慰謝料、作物転換、「風評被害」に対する賠償を要求してたたかいましょう。全面賠償のための法律制定、損害賠償に対する課税を中止させる運動を強めましょう。「ふくしま復興共同センター」が呼び掛けている原発ゼロ署名を全国でとりくみましょう。

 東日本大震災被災者への支援活動に全国の力を結集してとりくみましょう。また、被災者の暮らしと生業の回復、医療・福祉の支援、住宅再建など、引き続き、復興への万全な支援策を求めて運動を強めます。

   (2)確定申告運動と3・13重税反対運動について
 4月からの消費税増税や国民負担の押し付け、すべての事業者への記帳義務化のもとで、今年の確定申告と3・13重税反対行動は、増税に反撃する重要なたたかいであり、安倍暴走政治とのたたかいです。学習を力に、納税者としての自覚を高め、 「手びき」と記帳簿の普及を前面にして会員に迎え入れましょう。

 この時期にとりくまれる「春の大運動」では、確定申告だけでなく国保税、損害賠償請求、生産や販売、準産直など、農民連の多様な要求運動を大量宣伝し、地域できめ細かい「相談会」を開いて拡大運動を飛躍させましょう。

   (3)すべての組織、会員が再生可能エネルギーのとりくみに参加しよう
 再生可能エネルギーは、原発に依存しない社会の実現、地球温暖化対策、そして電力企業の利益独占から地域還元型社会への転換のためにも重要な課題です。特に農民にとっては、売電収入を確保して営農を維持し、農山村を再生させる課題でもあります。

 これまでの産直事業に再生エネルギーを加えたとりくみを組織的に展開しましょう。会員も多様な形態でとりくみましょう。農民連は交流会の開催や情報提供を強めます。

   (4)免税軽油制度のとりくみを強めよう
 燃油価格が高騰しているもとで、免税軽油制度を利用して負担を軽減させることは農家の切実な要求であり、2015年3月までとなっている制度を恒常的制度にさせるためにも重要です。すべての組織が実務対応できるように準備し、農家への働きかけを強めましょう。

   (5)暮らしを守る日常的な「相談会」活動を
 確定申告期だけでなく、農家が営農や暮らし、国保税など、多様な問題で「困ったら農民連に」という信頼を広げることが求められます。そのためにも日常的に宣伝を強めるとともに、要求に応えるために、弁護士や労働組合、市民団体、地方議員などと協力した日常的な相談活動を進めましょう。

   (6)畜産を守る運動
 飼料や燃油価格が高騰しているもとで、畜産物価格がコストを吸収できないために畜産経営の困難が広がっています。再生産が可能な畜産物価格の実現、国内産飼料生産への支援策などを要求して運動を強めましょう。

   (7)漁業や林業など農山漁村を守る運動
 震災や原発事故で苦しんでいる漁民の要求を取り上げた運動、魚価の価格保障の実現、漁民の暮らしと経営を守る運動を引き続き進めます。沿岸、内水面漁民の組織化をさらに広げるための対策を強化しましょう。林業は中山間地の活性化、雇用と地域経済の再生、温暖化対策からも重要な課題です。林家や森林組合への働きかけや共同を広げましょう。

 (4)生産と結んだ多様な産直運動の展開を

   (1)多様な産直のとりくみを
 朝市や直売所、インショップ、旅館や飲食店など、地域のあらゆる消費の場面に地場産の農産物を提供するとりくみは、農家の要求であるだけでなく、“食品偽装事件”などで本物志向を強める消費者の要求に応えるとりくみであり、循環型の地域作り運動でもあります。地域の業者と提携した農産加工と販路の確保のとりくみも強めましょう。地元産米を使って災害に備えた自治体の食料備蓄を実現させることも重要な運動です。

 学校や保育園給食を“食農教育”として重視し、大都市の学校に全国ネットワークを生かして食材を提供しましょう。組織内産直も重視してとりくみましょう。

   (2)新婦人会員との産直
 新日本婦人の会会員との産直を今日の情勢に即して新たに発展させるために全力をあげましょう。食の安全・安心の実現、学習と交流による顔の見える関係の強化、食料自給率向上や農政転換をめざす運動などを通して双方の組織的な発展を勝ち取るという原点をふまえ、新婦人会員の要求に応えたとりくみにするための努力が求められます。

 同時に、農民連と新婦人会員との産直は、大企業の利益を最大化するアベノミクス型の経済や流通政策に対抗した、地域を基礎にした地産地消や循環型社会、農村と都市、農商工が連携したとりくみの担い手として発展させることが求められています。農産物の産直だけにとどめず、再生可能エネルギーや地域を守る多面的なとりくみに発展させましょう。

   (3)米の準産直などの運動
 新たな米政策のもとで需給と価格の混乱は、いっそう激しくなることは避けられません。「主食の需給と価格の安定に国は責任を果たせ」の声が生産地でも消費地でも共通の声となるよう運動を進めましょう。あわせて米作りから撤退させる政策に立ち向かい、大いに米を作ることが求められます。その際、自ら「販路」をもつかどうかが決定的です。米業者にとっても信頼できる安定した産地の確保は切実です。この間の準産直米の実績と経験を生かしてとりくみを飛躍させましょう。米業者の先の消費者も視野にいれたとりくみ、備蓄米や加工用米など多様な米づくり、多様な販路を確保するとりくみを強めましょう。

   (4)在来種を守り、引き継ぐ運動
 多国籍企業によるバイオテクノロジーをテコにした遺伝資源や種子の独占など、生物多様性の破壊が進んでいます。TPPへの参加はこうした動きをさらに加速させるものです。国際連帯で国際的な規制を求めるとともに、生産現場で生物多様性に配慮した生産の努力、在来種を守る運動を強めましょう。

   (5)食の安全と国内産農産物の大切さを学び広げる運動
 食品をめぐる事件が相次ぎ、食の安全に対する国民の不安が広がっています。食をめぐる現実を国民にアピールするとともに、国内産・地場産農産物を守り、消費することの意義を国民に語り広げることが大切になっています。

 食に関わる優れた映画やDVDを使った学習、港見学などのとりくみを強めましょう。

 (5)市場を守る運動

 地域の生産と流通を支える卸売市場にするために、地域の市場や、自治体、卸との話し合いや提携を進めましょう。

 東京都は市場関係者の強い反対や、土壌の重金属汚染への都民の不安を無視して築地市場を東京都江東区豊洲への移転を強行しようとしています。そのねらいは、市場を大手量販店の集配センター化することにあり、生産者にとっては買いたたきに拍車をかけるものです。築地市場の移転を許さない運動を強めましょう。

 (6)都市農業、中山間地を守る運動

   (1)都市の農業と農地を守る運動
 2009年6月に国土交通省社会資本整備審議会が打ち出した「都市政策の基本的な課題と方向検討小委員会報告」は、都市農業を農業生産機能、自然とのふれあい、憩いの場、防災機能などの多面的機能を積極的に評価して都市計画に生かすなど、これまでの農民連や一部自治体などの要求を一定程度反映した積極的なものでした。しかし、安倍政権は、こうした方向による都市農業政策を行わず、相続税納税猶予の適用条件(終生営農)を調整区域にまで拡大し、2015年度から相続税の課税最低限度額が引き下げられるなど、都市農業をさらに困難にしています。

 「小委員会報告」の内容に沿った方向で国や自治体の具体策に実らせるのはこれからの運動が重要です。宅地並み課税をはじめとした税制の転換、都市農業を振興させるための農政と、自治体での条例制定と振興、住民と共同した「農のある街づくり運動」を引き続き強めましょう。

   (2)中山間地を守る運動
 中山間地では、高齢化と担い手不足による困難が深刻です。農地の維持、地域コミュニティーの確保、鳥獣被害防止など、中山間地の困難を打開する国による対策を要求します。中山間地の直接支払い制度の充実など、住民の要求にもとづいた人の住める山村にするための支援を要求して運動を強めましょう。

 (7)食品分析センターの発展と活用、食の安全を守る運動

 残留農薬、重金属、遺伝子組み換え、高度な放射能測定器を完備し、新たに法人格をもった「一般社団法人・農民連食品分析センター」を、食の安全を守る“市民の分析センター”として機能を強化することが求められています。

 輸入農産物の安全性のチェックなどの「食品安全の番人」としてのとりくみや、輸入ナタネの自生調査結果などの公表を通じて遺伝子組み換え農産物の実態を暴露するなど、食をめぐる現状を国民に知らせるとともに、政府に対策を要求する運動を強めます。また、地元や国内産の農産物を消費することの意義を語り伝える運動を重視して運動を進めましょう。政府に輸入食品の監視・安全対策の強化を要求して運動を進めましょう。

 安全、本物の農産物を生産する農民連会員の積極的な活用を呼びかけます。広く農家に分析センターの利用を呼びかけ、会員割引制度を生かして会員拡大も前進させましょう。

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旧食品分析センターに土地を提供した田中山五郎・東京農民連会長(右)を表彰する白石会長(その隣)と齋藤常任委員

(新聞「農民」2014.2.3付)
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2014年2月

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