「農民」記事データベース20140203-1103-08

1年間の運動報告と
今後の方針について
(4/7)

2014年1月21日
農民連運動全国連合会常任委員会

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U 要求運動と組織作りの到達点と教訓

1、暮らしと経営を守る多様な要求運動

 経営の困難が増す一方で医療・介護、年金などの負担増が農家の暮らしと経営を圧迫しています。高すぎる国保税や跳ね上がる後期高齢者の保険料の引き下げ、固定資産税の軽減など、多様な運動が前進しています。2014年からの記帳義務化のなかで、農民連の「記帳簿」に対する注目が高まり、普及が進んだことも特徴です。燃油の高騰が経営を圧迫しているなかで、宮崎県連などで免税軽油の要求を恒常的にとりくみ、会員拡大を大きく前進させたことは重要な経験です。

2、生産、販路拡大、「みほん市」 のとりくみ

 地域の条件や、高齢者などの生産力を生かしたものづくりや加工、学校給食、多様な販路の拡大、直売所などのとりくみが全国で展開され、地域の活性化に貢献しています。

 2年ぶりに開催した「ふるさと産直みほん市」は、この間の生産や加工などのとりくみの発展を土台に、自治体や関連業者、農水省や被災3県などからの後援もあり、新たな分野の業者などが多数、参加して成功しました。とりくみのなかで多くの商談が成立し、今後の可能性を広げました。

3、原発事故の損害賠償運動と被災地救援・復興の取り組み

 原発事故による被害の賠償を要求する運動を、原発ゼロを政府に迫る運動と一体的に展開し、東電と政府の不誠実な責任逃れの態度を跳ね返し、各地で成果を上げてきました。農民連の奮闘で“賠償の壁”に穴をあけたものが多く、多くの被害者を励ますものでした。また、会員拡大の前進に結び付いていることも重要な教訓です。

 一方、2012年の東電の事実上の国有化を境に、風評被害に対して「原発事故との相当因果関係がない」として損害賠償に応じない事例が相次ぎ、2013年4月以降は、福島県内の農産物ときのこ、山菜以外の風評被害は「おさまった」として賠償にまったく応じない不当な態度をとっていることは重大です。こうした中でも具体的な請求を積み重ね、宮城県、茨城県の野菜の検査費用、千葉県での菌床しいたけの風評被害、近畿のしいたけ原木の品種変更による減収分の賠償を勝ち取っていることは重要です。

 東日本大震災の被災者への救援活動が、全国各地の奮闘で恒常的にとりくまれ、被災者を大きく励ましています。政府や県に対する復興要求をかかげた行動や交渉も粘り強く展開され成果を上げています。

 農民連食品分析センターの旧事務所であったプレハブを、東京土建労組板橋支部の協力で宮城県東松島市の被災地に移設し、救援や復興運動の拠点として活用されることが期待され、被災者を激励しています。

 昨年は、台風や長雨、土砂崩れなどで全国各地で甚大な被害を受けました。農民連は県連組織と連携して現地調査を行い、全国から寄せられた義援募金を届けて激励しました。

4、原発ゼロ・再稼働反対、再生可能エネルギーのとりくみ

 (1)広がる原発ゼロ・再稼働反対

 各地で原発ゼロ、再稼働に反対する運動が展開され、数次にわたる大規模な全国集会とデモ、全国から7000人が結集した「11・2ふくしま大集会」も大きく成功しました。毎週金曜日に行われている首相官邸前行動と、これに呼応した行動が全国に広がっています。こうした運動が再稼働をねらう政府を包囲しています。

 福島第一原発は汚染水問題などが深刻化し、収束のめどさえ立っていません。また、“核のゴミ”処理の方策もまったくありません。

 こうしたなかで安倍政権は、12月6日、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の原案を発表しました。原案は、原子力発電を「重要なベース電源」と位置づけ、民主党政権が2012年9月に打ち出した「2030年代に原発稼働ゼロ」をめざす方針を転換しました。そして、2014年中に原発を再稼働させる動きを強めています。原発ゼロを政府に決断させる、さらなる国民的な運動の発展が求められています。

 (2)再生可能エネルギーのとりくみの広がり

 福島県、茨城県、埼玉県、千葉県など、各地の農民連組織で太陽光発電を中心に、多様な形態で再生可能エネルギーの実践にとりくみ、さらにこうした動きが広がろうとしています。多くの会員の自主的なとりくみも広がっています。これらの経験は、今後、農民連組織をあげたとりくみにするうえで重要な蓄積です。

5、組織作りについて

 (1)1年間の到達点について

 この1年間の組織拡大は全国が奮闘したものの、会員・読者とも拡大を上回る後退があり、残念ながらいずれも後退となりました。

 こうした中でも、会員で福島、東京、新潟、岐阜、愛知、三重、宮崎、沖縄、読者で福島、長野、愛知、三重、奈良、和歌山、徳島、高知、宮崎の各都県連が増勢となり、福島、愛知、三重、宮崎県連は会員と読者の両方で増勢を勝ち取っています。増勢にこそならなかったものの、拡大の努力で減少数を最小限に食い止めている組織があることも正しく評価されなければなりません。

 会員拡大は、もの作りや販路作り、税金、免税軽油、原発事故の賠償請求、分析センターの活用要求など、拡大の全てが多面的な要求運動を通したものです。高齢化等の反映もあって会員、読者数の自然減が避けられない中で、要求運動を中心に懸命な努力で2割近い県連組織が前進していることは、今後、全国的に前進に転じるうえで重要な足がかりとなるものです。

 (2)いくつかの教訓と傾向

 原発事故以来、300人以上の会員を拡大した福島県連、80人を超える会員を拡大した茨城県連・県西農民センター、免税軽油で一昨年秋以降70人近い会員を拡大した宮崎県連の前進など、短期間に一気に会員拡大を前進させた組織が生まれています。これは、それぞれの地域の農民の最も切実な要求を機敏にとらえ、宣伝を力に会員の力に依拠してとりくんだ結果であり、重要な教訓です。

 同時に、拡大の可能性がどんなにあっても、組織を確立し、役員を先頭に打って出なければ前進させることはできません。

 大会後の拡大運動の中で、経営規模の大きい農家、集落営農組織、多様な生産グループが生産や販路の要求、原発損害賠償などの要求で加入する例が増えていることは注目すべきことです。これらの層は、農産物価格の低下などで経営維持に苦慮しており、要求を切迫化させています。今後の「農政改革」に対する不安も大きいものがあります。結びつきと信頼関係を強め、共同して経営を守るとりくみを進め、加入を働きかけることが求められています。

 また、規模が小さく運営に苦労している組織のなかで、定年退職者を迎え入れて組織を盛り返したり、いくつかの組織で、若い専従者の成長で組織を活性化させつつあることも貴重な教訓です。

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「TPPは絶対にノー!」。昨年12月8日に開かれた「これでいいのか?! TPP大行動」

(新聞「農民」2014.2.3付)
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2014年2月

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