1年間の運動報告と
|
関連/1年間の運動報告と今後の方針について(1/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(2/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(3/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(4/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(5/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(6/7) /1年間の運動報告と今後の方針について(7/7) |
「秘密裏の譲歩」について、アメリカの貿易情報紙は次のように報道しています。
(1)オーストラリアとニュージーランドが、アメリカ(砂糖、乳製品)と日本(重要5項目)の農産物市場アクセスの譲歩を条件に、知的財産権やISD条項に対する反対を取り下げ、修正テキストに同意した。
(2)ベトナムは繊維・履物に対する輸入規制・高関税に対するアメリカの譲歩と、発展途上国に対する適用期限の延長などの特別扱いを条件に、国有企業や知的財産権の分野で妥協する。
(3)この結果「知的財産権に関しては、途上国1カ国(おそらくマレーシア)を除いて意見が一致」しており、「国有企業についても合意は間近」である。
(4)しかし、アメリカが砂糖、乳製品、繊維、履物に対する譲歩提案をしなかったため、閣僚会議では合意が成立しなかった。
(5)フロマン米通商代表は、アメリカの態度が交渉前進の障害になっているという批判を日本に転嫁し、日本が農産物5項目で譲歩しないことを非難した。オーストラリア、ニュージーランド、カナダにとっても日本の農産物の譲歩が優先事項だ。
(「インサイドUSトレード」12月12日、「ワシントン・トレード・デイリー」12月10日)
秘密交渉のため真相は不明ですが、このように、水面下での駆け引きと妥協が重ねられている可能性があり、なお警戒と監視を強め、運動を大きくもりあげることが求められています。
同時にアメリカ議会では、民主党下院議員201人中151人(75%)がオバマ政権の自由貿易促進に反対するなど、TPPやEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)(TTIP)に対する批判が高まっています。11月の世論調査では、オバマ政権に対する不支持は54%と最高を記録し、支持の39%を大きく上回り、オバマ政権は“死に体”化しつつあります。日本国内でも、安倍政権は秘密保護法を強行し、国民的な怒りに包まれて内閣支持率を劇的にダウンさせました。
報告する笹渡義夫事務局長 |
第一に、日本側が米や麦、畜産物、砂糖などの「重要5項目」586品目のうち半分近い加工品の自由化に踏み込む「自由化率95%」を提案し、減反廃止によって米価が下がることを見越して米の関税引き下げを提案したにもかかわらず、アメリカはこれを一蹴し、「100%」の関税撤廃を強要しています。西川公也・自民党TPP対策委員長によると、アメリカは「関税撤廃までの期間を最長20年まで認める案を提示していた」とされ、西川氏はこれを拒否したものの「米国が譲歩するのなら、日本も現実的な対応ができる。(5分野を守る)公約が守れたと評価されるよう、政府は総合的に判断してほしい」と、譲歩をほのめかしています(産経、12月21日)。
国会決議を踏みにじる譲歩案を秘密裏に提示しておきながら、安倍首相はJA全中の要請に対し「国会決議に沿って交渉する」と白々しく答えていますが、国会決議・選挙公約違反は明白です。
国会決議は「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について……除外又は再協議の対象とすること。10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」「重要5品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること」としていたのであって、「米国が譲歩するのなら、日本も現実的な対応ができる」などという余地はありません。
また、西川氏は「(5分野を守る)公約が守れたと評価されるよう、政府は総合的に判断してほしい」とも述べていますが、これが欺まんにすぎないことは、鈴木宣弘・東大教授の次のような批判からも明らかです。
「重要5品目でなく、5『分野』だと言い始めた。5分野に586の細目があるから、例えば、コメならば、58細目のうち加工品や調整品はあきらめて生(ナマ)に近い部分だけを守ることで、つまり、5分野のそれぞれの細目の最低一つずつでも除外できれば、最悪586を5に減らしても、重要5分野を守ったのだというお粗末な詭弁(きべん)である。そもそも、加工品を関税撤廃すれば、国産農産物を原材料にしてきた加工業者は安い海外製品と競争できずに倒産する。そして、生産者も需要先を失って共倒れになるから、加工品の関税撤廃なら大丈夫という論理は破綻している」(農業協同組合新聞、10月30日)
「国民皆保険制度を守る」「食の安全・安心の基準を守る」「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない」「政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」などの公約も次々に踏みにじられています。
とくに許しがたいのは、ISD条項の実施や政府調達の開放、金融・小売サービスの規制緩和などを要求し、アメリカの腰巾着(こしぎんちゃく)ぶりを発揮していることです。その理由は、日本が世界第3位の多国籍企業母国だというところにあります。
経団連は、2013年4月に、次のような強欲な提案を公表しました。
「多国間投資ルールの策定にあたっては、質の高い紛争解決手続(ISDを含む制度)が不可欠である」「投資の保護については、投資後の最恵国待遇・内国民待遇、公正衡平待遇義務、収用の制限と適切な補償……などを確実に担保する必要がある」(日本経団連「通商戦略の再構築に関する提言」13年4月16日)
そのうえで経団連は、ベトナムやマレーシア、インドネシアなど30以上の国々を名指しして、原発輸出をはじめとするターゲット・プロジェクトを列挙し、パフォーマンス要求(社会貢献、技術移転、人材育成、現地人雇用等の義務)の緩和や国営企業の独占状況の解消、民間金融機関の参入規制の緩和などを要求しています。経団連がこれほどあからさまに強欲な要求を突きつけるのは異例のことであり、TPP段階での多国籍企業の本性をむきだしにしたものです(「戦略的なインフラ・システムの海外展開に向けて」13年11月19日)。
さまざまな潮流が連携をとりながらTPP反対運動を進めてきた最新の到達点は、12月8日に行われた「これでいいのか?! TPP12・8大行動」でした。この行動には、マハティール・マレーシア元首相からのメッセージが寄せられたほか、農協関係でも岩手県、鹿児島県はJAグループとして、千葉県、静岡県、佐賀県は県農協中央会、島根県、福岡県は中央会などが組織しているネットワークとして賛同し、生協も岩手県、宮城県の生協連合会など17の生協が賛同するなど、これまでの枠を突破するとりくみに発展しています。
政府を追い込む大きな力になったのが、44道府県議会と90%を超える市町村議会がTPP参加に反対あるいは懸念する決議を採択し、再決議も相次いでいることです。
また、政府やマスコミが「TPPは1次産業対国民経済」とする分断を、宣伝や学習で跳ね返したことです。農民連の奮闘がJAなどにも影響を与え、生協や建設業協会、漁協、森林組合、医師会などにも運動が広がり、民主勢力を含めたTPP反対の一点での共同運動に広がりました。地方では北海道、青森、岩手、秋田、山形、宮城、群馬、滋賀など、いくつもの県で立場を超えた共同組織が立ち上げられ、地域段階にも広がっています。
中央段階では、政府や与党のし烈な圧力や、農業団体に激震となった「農政改革」攻撃の影響があるものの、JAや漁協などネットワーク組織と市民団体、農民連・食健連、超党派議員などによる共同が維持、拡大されていることも重要です。
予断はもてないものの、TPP交渉が重大な困難に陥っていることは明らかであり、さらに運動を広げるなら阻止できる可能性も生まれています。こうした状況を作るうえで農民連が大きな役割を果たしました。
[2014年2月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2014, 農民運動全国連合会