1年間の運動報告と
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「岩盤対策」としてきた「経営所得安定対策」の縮小・廃止は、「改革」の核であり、農家を追い出して企業と大規模農家に農地を集中させる冷酷なテコです。制度を利用している百数十万戸のすべての稲作農家が影響を受けますが、打撃が最も深刻なのは、「担い手」として育成の対象とされ、農地を集積してきた大規模農家や集落営農組織であり、地域農業への打撃は計り知れないものがあります。
生産調整は、1970年に100万トンを減産して以来、43年間続けられてきました。生産調整は、アメリカの食糧戦略を背景にした自民党農政の失政の象徴であり、農業と農村を衰退させ、田んぼを荒らした政策ですが、今回の生産調整の廃止は、これまでの反省を踏まえたものではありません。TPPで関税の撤廃を受け入れれば、アメリカやベトナムなどから米が輸入されるため、生産調整が機能しなくなるからです。TPP参加を契機に、政府が米の需給と生産への責任を全面的に放棄するもので、政府が生産コストを9600円(1俵60キロあたり)に大幅に引き下げることを目標にしているように、米価の大暴落は避けられません。
「米価下落対策」として検討されている「収入保険」は、本来、政府と農家が掛け金を負担し、暴落時の収入減を補てんするものですが、検討されているのは国の関与のない単なる「民間保険」であり、政策の名に値しません。
生産費を償う価格を確保して飼料米を生産することは必要ですが、現状は、養鶏以外の畜種に飼料米が普及されず、農家と飼料実需者とのマッチング、施設の不備などの問題もあります。需要増が見込まれるといいますが、TPPで関税が撤廃されて畜産農家が激減すれば需要減は避けられません。百数十万戸以上の農家が対象となっている「経営所得安定対策」をバッサリ切って捨て、“絵に描いた餅”になりかねない飼料用米を根拠に“所得増”と幻想を振りまくことは許されません。
地域のとりくみへの支援の拡充は必要ですが、この制度のねらいは「担い手の負担を軽減し、構造改革を後押し」することにあります。農地の8割を大規模経営や農外企業が担うことになれば、多くの農家が“土地持ち非農家”となり、総出で行ってきた農地や水路、農道の維持管理が困難になり担い手の負担が増えます。特に「農地中間管理機構」を通じて農外の企業が参入すれば、地域の共同作業は一層、困難になります。
農家の多数を農業から締め出して集落機能を弱める方向に踏み出しながら、草刈りと水路の維持管理に「土地持ち非農家」をつなぎとめるねらいが見え見えで、今後、現場での矛盾は避けられません。
稲刈り交流会(福岡・みのう農民組合) |
農民連は早くからこうした事態を想定し、備蓄米の買い入れなどの対策を要求してきました。しかし、政府は100万トン備蓄に25万トンもの買い入れ余地がありながら「米価に影響する買い入れはしない」として要求を拒否してきました。全農など民間が独自に「需給調整対策」を行う動きも伝えられていますが、政府は傍観者的態度に終始しています。こうした政府の需給と価格の安定に背を向けた市場任せの姿勢こそが、米関係者の不安と混乱を助長し、「過剰感」を増幅させています。昨年夏には「政府の見通しの狂いは20万トン」と言われていたのが、いまや「80万トンは過剰」と米業界から指摘されるまでに至っています。
民間の「需給調整対策」が実施されても時期が遅すぎること、消費税増税前の乱売合戦とその後の消費の後退が必至であること、などから米価の回復は限定的なものにならざるをえません。
5年後には経営所得安定対策の交付金をなくし、生産目標数量の配分もやめるとしながら、今年産は過去最大の26万トンもの減反の推進など、矛盾に満ちた米政策に生産、流通いずれの現場もいっそうの混乱は避けがたいものになろうとしています。
[2014年2月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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