「農民」記事データベース20140203-1103-09

1年間の運動報告と
今後の方針について
(5/7)

2014年1月21日
農民連運動全国連合会常任委員会

関連/1年間の運動報告と今後の方針について(1/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(2/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(3/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(4/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(5/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(6/7)
  /1年間の運動報告と今後の方針について(7/7)


V 今後の運動の重点

1、高まる農民連の役割、何をめざしてたたかうか

 (1)安倍暴走政治とのたたかいに全力をあげよう

 国民的共同で安倍暴走政治をストップさせ、退場させるたたかいに全力をあげます。国民を主人公にした要求の通る政治を実現するとともに、多国籍企業の利益を最大化する徹底した自由化と市場万能主義の政策から、人間の命と暮らしを最優先にした政治の転換をめざしてたたかいます。

 (2)地域作りの先頭に立とう

 農業と農村を愛し、農業にまじめにとりくんでいる農民や農村住民、農業・食糧問題を憂える広範な国民と団結して、農村の資源を生かした循環型の地域社会、都市と農村の連携による農業と農村地域の再生をめざします。

 (3)運動の基盤となる農民連の建設を

 農民の多様な要求を実現する運動を軸に、運動の基盤となる地域を基礎にした強大な農民連組織を確立します。

2、運動の重点について

 (1)安倍内閣の暴走をストップさせ、退陣に追い込むたたかい

 安倍自公政権が国民世論と国会ルールを踏みつけにして強行成立させた特定秘密保護法を撤廃させるたたかいを全国で展開しましょう。

 安倍政権は、全国各地の原発を再稼働させるねらいを強めています。毎週金曜日の首相官邸前行動に呼応した運動を全国で展開するとともに、再稼働を許さず、廃炉を要求するたたかいに全力をあげましょう。

 2014年4月から消費税8%を強行し、2015年10月からは10%に引き上げようとしています。「福祉財源のため」とした増税の口実の欺まんが明らかになり、一方で増税の影響緩和策として打ち出された「経済対策」は大企業支援策ばかりで、増税が暮らしと営農に重大な打撃を及ぼすことは明らかです。増税の強行は、国民との矛盾を拡大し、“潮目の変化”を加速する可能性もあります。

 消費税増税に反対し、大企業と大金持ち優遇税制を正して適正な課税を行うなど、消費税に頼らない財源確保を要求して運動を強めましょう。

 沖縄県民のたたかいと連帯し、普天間基地の名護市辺野古への移転強行を許さず、基地撤去を要求してたたかいましょう。

 3・13重税反対全国統一行動に際し、労働組合や市民団体などが「ストップ安倍暴走政治」を掲げて結集する、総行動を成功させましょう。

 2月9日投票の東京都知事選、4月の京都府知事選など全国的意義を持つ首長選挙で、要求の一致する民主的候補を勝利させましょう。

 (2)TPP参加阻止、戦後農政の総決算を許さないたたかい

   (1)1月〜4月にTPPを挫折させる大運動の展開を
 TPP交渉が2013年末までに合意に至らなかったことは、オバマ・安倍戦略の挫折であり、国民のたたかいと国際連帯の成果です。交渉は今後も続行されますが、多国籍企業の利益を最大化するための貿易ルールを押し付けるというTPPの危険な本質や、TPPを利用して利益を独占しようとするアメリカと各国との矛盾は解消できません。交渉が重大な困難に直面しているいま、さらにたたかいを広げて交渉を暗礁にのりあげさせるときです。

 全国食健連はTPPの交渉妥結を許さないために、1月から4月までを「春を呼ぶグリーン・ウエーブ行動」とし、全国的に集中した行動を呼びかけています。

 政府を追い詰めるために重要なのは、すべての県・地域に「TPP参加反対」の一点での幅広い共同組織を網の目のように確立し、TPPのねらいや身近な国民生活への影響を広く知らせること、署名を大きく広げることです。農村を「TPP反対」で席けんする宣伝も重要です。3月地方議会での請願運動にも全力をあげましょう。

 昨年、幅広い共同で成功させた「12・8大行動」の枠組みを基本に3月30日に計画されている大集会とパレードの成功に全力をあげましょう。

   (2)国際連帯でWTO・TPP路線から食糧主権を確立する運動
 TPPが締結されれば日本国民は甚大な被害を受けるとともに、日本がアジア太平洋諸国の経済主権を侵害する加害者となりかねないことを自覚して、国際的連携を強めることが求められています。

 ビア・カンペシーナとアジアのNGO連合組織「もう一つのアジアのための社会運動」(SMAA)は、11月29〜30日に「TPP円卓会議」、12月1〜6日に「WTOを終わらせる行動週間」を展開しました。これらの行動を通じて、TPPは中心的な議題になり、国際的な理解と連帯の可能性を切り開くことができました。

 とくに「TPP円卓会議」では、日本と韓国、ビア・カンペシーナ地域事務局が中心になり、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどのNGOと農民組織に呼びかけて、TPP反対の広いネットワークをつくることが合意され、国際フォーラムやTPP反対の統一行動を行うことが確認されました。

 また、「WTOを終わらせる行動週間」では、TPP(環太平洋)、TTIP(環大西洋)、RCEP(ASEAN+日中韓、オーストラリア・ニュージーランド・インド)などの巨大FTAに反対するネットワークを作り、WTOに対してたたかったような運動を構築することの重要性が確認されました。

 2014年はTPPをめぐる攻防がヤマ場を迎えます。すでに準備が始まっている「3・30大行動(仮称)」と「春を呼ぶグリーン・ウエーブ行動」を大きく成功させるとともに、国際連帯の運動を発展させ、TPPの息の根を止めるために全力をあげましょう。

   (3)「戦後農政の総決算」を許さないたたかいを全国で
 TPPに便乗して家族経営農業を否定し、農業・食料を企業のビジネスチャンスに供するためのアベノミクス型の「農政改革」は、地域で懸命にがんばる農家、担い手、農協や自治体の努力を根底からひっくり返し、生産の後退と食料自給率の低下は避けられません。

 また、国際的な食糧危機が深化しているもとで、FAO(国連食糧農業機関)が1996年の世界食料サミットで「全ての人にとっての食糧安全保障の達成」や、その達成のための「地域ごとの食料増産の努力」を呼びかけ、「農業の多面的機能を考慮しつつ、持続可能な農林水産業および農村開発政策を追求する」とした宣言にも真っ向から反するものです。さらに、国連が2014年を「国際家族農業年」として強調していることにも逆行します。

 今、求められる農政の方向は、農民連が一貫して主張している(1)TPP参加をやめて農産物の野放図な輸入をコントロールする、(2)生産費を償う価格保障と所得補償を組み合わせた制度を確立する、(3)多様な担い手の確保を国、自治体、団体があげてとりくむことです。また、EUが行っている地域支払のように、都市と農村の格差是正や持続可能な農村を維持するための支援が求められています。こうした政策的方向を対置して運動を強めます。

 政府は「改革」のための法案を通常国会に提出するとしています。「改革」はTPPを前提にしたものであり、TPPと一体のものとしてたたかいます。特定秘密保護法撤廃、原発再稼働を許さない国民的なたたかいとも連携して地域から悪法をストップさせるたたかいに全力をあげましょう。食糧の生産を激減させ、輸入依存をさらに強めることは、農民や農村の問題だけでなく、国民全体の死活にかかわる問題であることを大きく打ち出し、国民的な運動に広げましょう。

 矛盾の大きい大規模農家、集落営農、農協、自治体への働きかけと共同を重視しましょう。地方議会から政府に意見書を集中させましょう。

 本部は、TPPと「農政改革」に対する批判と農民連の主張を打ち出したチラシや学習資材を作製します。農業と農村の役割、食の安全などの学習会の開催や宣伝を強めましょう。

   (4)生産と農地、地域を守る核となった運動を
 生産から撤退せず、「物を作ってこそ農民」という農民連の原点を発揮した運動がいまほど求められている時はありません。

 TPP参加を許さず、「農政改革」をやめさせる運動とあわせて、生産の拡大と農地、地域を守る運動に全力をあげることは農民運動の重要な課題です。

 政府が進める一律で中央集権型、効率一辺倒の大規模・企業型農業の推進ではなく、食糧主権の見地に立った地域の資源と条件を生かした多様な農業の発展に踏み出すことが重要です。この方向こそが農業の持続可能性と農村の再生を保障し、食料自給率を向上させる道です。

 *経営所得安定対策で当面、減額されようとしている10アール7500円分を上回る米の収量を確保するとりくみを強めましょう。

 *地域で話し合い、助け合いを基礎にした多様な形態で生産を維持するとりくみを広げ、農外企業の進出を許さない運動を進めましょう。地域主体の「人・農地プラン」作りにも積極的に関わりましょう。

 *環境と安全に配慮した適地適作の産地作りや、地産地消、農商工連携による地域循環型の地域作り、都市と連携した販路作りで、お金と人を呼び込むとりくみをすべての地域で展開しましょう。こうしたとりくみを推進するための自治体への振興策を要求しましょう。

 *新規就農支援制度も活用して親元就農を広げ、勤労青年を新規就農者として迎え入れて育成しましょう。定年退職者の帰農を促進・援助し、高齢者の知恵と意欲を引き出すなど、多様な担い手作りにとりくみましょう。

 *政府に、構造改革推進のための補助金ではなく、地域間格差是正と農山村の存続を支えるための地域のとりくみへの援助制度や集落営農などのとりくみに対する援助制度を要求して運動を強めましょう。

 *再生可能エネルギーのとりくみを地域づくりの重要な課題としてとりくみましょう。

 *農協に地域作りの拠点の役割を発揮させる働きかけを強めましょう。

 *水田農業を基本にした日本農業を守るための方向として、(1)米を原料出荷するだけにとどまらず、生産者自らが生産・加工、販売までを一貫的に行う構造をつくる、(2)米単作から脱却して適地適作による米を上回る収益性のある作物と組み合わせた生産構造が重要で、これは多くの会員や産地の実践の教訓でもあります。これらの視点を踏まえたとりくみを強めましょう。

画像
地域活性化のとりくみが注目される長野県阿南町(昨年11月27日「ふるさと産直みほん市」)

(新聞「農民」2014.2.3付)
ライン

2014年2月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2014, 農民運動全国連合会