「農民」記事データベース20140203-1103-05

1年間の運動報告と
今後の方針について
(1/7)

2014年1月21日
農民連運動全国連合会常任委員会

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T いま、どんな情勢か

1、暴走する安倍自公政権と国民との矛盾の深まり

 昨年秋の臨時国会で安倍自公政権は、国民の暮らしといのち、平和と民主主義の根幹に関わる悪法を次々に強行しました。国民の知る権利を奪う違憲立法の特定秘密保護法を、多くの国民の反対、慎重審議を求める世論と国会のルールを無視して強行した暴挙は断じて認められません。

 特定秘密保護法は、臨時国会で成立させたNSC(国家安全保障会議)法、今後、成立をねらっている共謀罪、国家安全基本計画、さらには集団的自衛権行使容認、9条を中心にした憲法改悪と一体のものであり、海外で戦争できる国作りに向けたものです。そして、昨年12月26日、安倍首相は過去の日本軍国主義による侵略戦争を美化・正当化することを目的とする靖国神社を参拝しました。これは、自らの侵略戦争を肯定する立場を世界に向かって宣言したことにほかならず、戦後の国際秩序に対する重大な挑戦です。

 2014年4月からの消費税増税の一方で、70歳〜74歳の医療費本人2割負担、「要介護者」はずし、年金支給年齢引き上げなどの改悪を行うための「社会保障制度改革」プログラム法、生活保護を水際で締め出す「生活保護法改悪法」、「成長戦略」の名のもとに、大企業の利益の後押しや規制緩和を行う「産業競争力強化法」「国家戦略特区法」も強行成立させました。

 与党の公約や国会決議を無視したTPP交渉での譲歩、福島第一原発事故が収束していないなかでの原発再稼働や輸出、オール沖縄の声を踏みつけにした米軍普天間基地の名護市辺野古への移転を押し付ける動きを強めています。

 1月19日に投開票された名護市長選挙で、辺野古への基地移転反対を訴えた稲嶺すすむ候補が圧勝しました。このように、民意と選挙公約を投げ捨てて暴走する安倍自公政権は、国民に包囲されて早晩、破たんせざるをえません。

2、国民各層各分野での共同のたたかいの発展

 特定秘密保護法をめぐって、 「知る権利」を奪って戦争につながる法案の危険性が明らかになるにつれて反対する運動が急速に広がりました。二度の集会にあわせて2万5千人が集まり、連日、全国各地で集会やデモが行われ、ジャーナリストや文化人をはじめ、幅広い人たちが法案反対の声をあげました。平和と民主主義を守る国民のエネルギーが爆発したもので、今後の安倍暴走政治を追い詰めるたたかいの展望を切り開きました。

 政府や推進勢力が世論を分断するキャンペーンを行っている中で、原発再稼働でも、4月からの消費税増税でも、世論の多数は反対です。生活保護法改悪や社会保障の切り捨てに反対する運動も、法案は強行されたものの政府・与党を大きく包囲しています。

 農民連は、中央でも地方でも、こうした安倍暴走政治に対する共同したたたかいの先頭に立って奮闘しました。

3、TPP交渉の現状をどう見るか

 (1)TPP交渉の現局面

   (1)TPP閣僚会議の結果
 「年内合意」をめざして12月7日から10日までシンガポールで開かれたTPP閣僚会議は、2014年1月に閣僚会議を開くことだけを決めて閉幕しました。この3年間、交渉国は毎年、年末までに交渉を妥結させることを誓い合ってきましたが、期限未達成は常態化しており、ついに今回は4回目の目標期限すら設定できずに終わりました。

 閣僚会議後に発表された共同声明では「実質的な進展が見られた」と強弁しているものの、中身はまったくなく、「潜在的な着地点を特定した」と述べているだけです。また、唯一、明示的な決定であった2014年1月の閣僚会議開催も、「各国の意見の隔たりは埋まっておらず、次回会合に向けた調整が全く進んでいない」(交渉関係者)ことを理由に、2月以降に延期されることが確実なありさまです。

 農民連はシンガポール閣僚会議に際して初めて代表を送りましたが、集会やデモは禁止、利害関係者への公式の説明会(ステークホルダー会合)も開かれないという異様な状況で、わずかに日本政府が業界団体・NGO向けのオフレコ説明会を一回開いただけでした。説明会では、基本的にマスコミ報道以上の説明はなく、何を質問しても「秘密交渉だから言えない」の一点張りに終始し、交渉のスピードアップのために閣僚会議を3つの「分科会」に分けて運営するという異例のやり方をとりましたが、悪あがきは通用しませんでした。

   (2)21分野中、半分が難航
 交渉の対立点は、アメリカが多国籍企業の利益を最大化することを目的に、各国の経済主権を踏みにじり、弱肉強食の競争原理を押し付けるところにあります。

 何が難航し、何がまとまっているのかも「秘密」とされていますが、報道によると、21分野中、ほぼ合意に達している分野は12にすぎず、「やや難航」が3(金融サービス、投資、労働)、「最難航」が6(関税、知的財産、政府調達、競争政策=国有企業、原産地規則、環境)と半分近くに達しています(東京新聞、産経新聞、13年12月11日)。

 「貿易協定」の核というべき関税で合意に達する見込みがまったく立っていないTPP協定は、そもそも貿易協定の名に値しません。加えて、貿易協定の範囲を大きく逸脱した多国籍企業のための憲章作りにほかならないISD・知的財産などのルールは「自由貿易」とは真逆のものであり、多国籍企業のための「保護主義」ルールにほかなりません。

 たとえば、知的財産の分野では、巨大製薬企業の利益を優先して特許保護期間の延長を迫るアメリカに対し、新興国側は安価な後発(ジェネリック)医薬品の利用は死活問題として強く抵抗しています。国境なき医師団は「TPP協定が5億人以上の生命に影響を及ぼす恐れがある」と批判しています。

 国有企業と外国企業を同等に扱う競争政策や政府調達をめぐっては、経済発展の段階や経路も異なる国々に、力まかせに自由化原理を押しつけようとすることが反発をよんでいます。欧米や日本の植民地から独立して、遅れて経済建設に乗り出さざるをえなかったアジア諸国に対し、発達した資本主義国と共通のルールを押しつけることは許されません。保護関税や国有企業、公共事業の国内独占などの手段を使って現在の地位に上り詰めた工業国が「自由貿易」の利益を説教し、自らが初期に使った政策と制度を発展途上国が使うことを禁止するのは道理に合わないことは明白です。

 一部で合意済みと報道されている「投資家と国家との紛争解決(ISD)」条項は、外国投資家の提訴によって参加国の環境・健康などの公共政策を破たんさせるとして抵抗が続いています。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2014.2.3付)
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2014年2月

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