分科会先進から学ぶ組織の運営と拡大奈良県農民連事務局長 竹島 茂直さん
地域を3分化、事務所構え要求実現を必ず仲間づくりに結実はじめに、奈良県農業の概要ですが、販売農家戸数は1万5040戸で全国44位、1戸あたりの経営耕作面積も0・86ヘクタール(全国43位)で、非常に小規模なのが特徴です。
毎年約60人加入いま700戸に奈良県農民連が結成されて23年たちますが、2003年に専従と事務所を構えた3つの地域単組に分けてから、9年ほどは毎年、正会員40人前後、賛助会員20人前後が加入しています。一方で、10人〜20人が退会しています。その結果、会員戸数は当初は43戸でしたが、今では700戸を超えています。正会員は会費が月2500円。賛助会員は、労災保険や朝市などちょっとした産直に出荷をする人が対象で、会費が月1000円です。正会員への入会のきっかけにと位置づけられています。 奈良県農民連の組織は、県連、新規就農相談センター、食品分析室、青年部、女性部があります。地域単組は、北和センター、中和センター、南和センター。産直組織は、産直センター、直売所に分かれ、それぞれ役員会が運営し、事務局を配置しています。 この間、農民の要求実現を仲間づくりに結びつけることを重点に進めてきました。1年を通じた仲間づくりの具体的な取り組みを紹介します。
なんでも相談会多彩に取り組む1月から3月は、春の大運動と位置づけ、1年のうちで最も重視しています。「確定申告」と「生産・出荷のなんでも相談会」に取り組みます。これは県下の全農家を対象にする構えでチラシや口コミで広く呼びかけます。会員は、自分が経験した「よかったこと」を知り合いの農家に伝え、加入を呼びかけます。そして、確定申告を通じて、所得税・住民税の軽減、所得税の還付、国保税・介護保険料の軽減など会員一人ひとりが実利を取ることが大切です。今年の春の大運動では、54戸の仲間が増えました。内訳をみると、新規加入の要求別では、税金の要求が33戸、生産と流通の要求が23戸でした。また、加入のきっかけ別では、会員の紹介によるもの15戸、チラシが23戸、その他16戸でした。 税金なんでも相談会は183回開かれ、参加者数は806人(うち非会員74人)、産直なんでも相談会は105回開かれ、376人(非会員50人)が参加しました。 1月から3月に新規会員から寄せられたさまざまな要求をもとに、4月からの活動を組み立ててきました。一つは、「固定資産税なんでも相談会」です。これは3年に1回の評価替え時だけでなく、毎年取り組める課題です。課税根拠と現況が違う場合に、役場に行って交渉し、評価額を下げてもらう取り組みです。 去年の夏からは、相続対策と相続登記の相談を始めました。農作業による事故への対策として「労災保険なんでも相談会」も好評です。 農民にとって大事な生産と流通の問題では、農民組合と産直組織が連携して「ものづくりと産直なんでも相談会」を半年ごとに開いています。県内の農産物を集めて回る集荷便も遠方の会員から喜ばれています。 7月以降は、会員のさまざまな要求にもとづいた活動を重視しています。たい肥学校、鳥獣被害、農薬安全使用基準、畑回り学習会、肥料や種苗の共同購入などの生産にかかわる要求、民医連や医療生協と連携した健康チェック、免税軽油の申請、パソコン教室、青年の男女交流会など、多彩に取り組んでいます。 また、県農林部との交渉や自治体キャラバンなど毎年恒例の行動のほか、原発事故によるしいたけ原木の損害賠償請求や原木の確保、がれき処理問題など、ときどきの会員の声にもとづいた運動も必要です。
10年先見越した組織拡大求めて役員と専従事務局員の役割は、(1)農民の要求を察知し聞き出すこと(2)その要求を実現する能力をつけることです。また、組合員の役割として、(1)自分の要求と周辺農家の要求を把握し声に出すこと(2)「農民連会員でよかった」という経験を整理して周辺の農家に伝えて広げることが重要です。組織が大きくなれば、要求実現の可能性が広がり、社会運動の力がつきます。日本農業の動向と関連させて、農民組織の10年先を見越した組織拡大が求められています。
(新聞「農民」2012.8.27付)
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[2012年8月]
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