新自由主義・軍事大国化の
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農民連は8月1、2の両日、宮城県大崎市「農民の家」で、全国研究交流集会を開きました。集会では、一橋大学名誉教授の渡辺治さんが特別講演を行いました。また、農民連の真嶋良孝副会長がTPPについて報告し、笹渡義夫事務局長が「本部からの問題提起」を行い、分科会では各地の取り組みを交流しました。それぞれの報告(要旨)を紹介します。
この3年間は私たちに何を示したのでしょうか。それは、新自由主義・構造改革の政治に終止符を打つには、大企業に負担と規制を課し、新しい福祉の政治を実現するという確固たる決意と対案を持った政権をつくらないかぎり、結局はアメリカと財界の圧力によって、もとにもどってしまわざるをえないことが明らかになりました。
そういうもとでいま、2つの流れが生まれています。ひとつは、民主党に裏切られ自民党にもどるのもいやだという人々が、第三の道として、あの大阪市長の橋下氏に期待してもう一度日本の政治を変えようという流れです。しかし同時に、民主党も自民党もだめだという声の中から、国民自らの声と力によっていまの政治を変えていこうというもうひとつの動きが出ています。大飯原発の再稼働に反対して首相官邸前に多くの市民が集まっている行動もそのひとつです。こうした動きは、TPP反対、オスプレイ配備阻止の行動でもあらわれています。
渡辺さんの講演を熱心に聞く参加者 |
ひとつは、大企業が思う存分あばれられる拡大した自由市場をいったい誰が守るのか。世界の憲兵であるアメリカが名乗りをあげますが、「おれだけがやるのは嫌だよ、日本の大企業だってアメリカに守られた自由市場でおおもうけして甘い汁を吸っているではないか。お前らも軍隊を海外に出して、いっしょに血を流せ。憲法9条があって軍隊を出せないなんてとんでもない」という圧力をかけてきたわけです。
もうひとつは、国境を越えた地球規模の多国籍企業との競争の中で、日本の大企業がどうやって競争力をつけていくのか。そのために、日本の大企業をサポートして、もっとおおもうけできるように政治を変えなければいけない。それが、新自由主義・構造改革と軍事大国化の国づくりになっていったわけです。
この結果、労働者派遣法によって10年間に470万人がリストラされました。こんなことは戦争でもなければおこらないことです。そして、若者は非正規で働かされ、最後の頼みの生活保護も切り捨てられようとしています。貧困によって餓死者や自殺者、ネットカフェ難民が絶えない、こんな先進国はありません。
まず運動に立ち上がったのは、自衛隊を海外派兵するために憲法を改悪しようという動きに対してでした。「九条の会」は、決して無から始まったのではありません。いま全国には7500以上の「九条の会」がありますが、農民連をはじめさまざまな社会運動が長い間にわたって地域でがんばってきたからです。「九条の会」の運動によって、2つの形で政治に大きな影響を与えました。ひとつは、憲法改悪反対の世論が大きくなってきたことです。資料のように、読売新聞の世論調査で憲法改悪に反対という比率と、「九条の会」の数が機を同じくして伸びています。その結果、2004年には65%あった改憲賛成派が減少し、2008年4月の世論調査では、憲法改悪反対が43%に達して賛成派を逆転し、そのときの読売新聞の社説は、「理解に苦しむ」というものでした。
もうひとつ、影響を与えたのは、民主党の憲法政策を変えたことです。当初は「論憲から創憲へ」とか言って憲法を変えるという主張でしたが、これが「憲法改正するかどうか具体的な決定をしていない」に変わったのです。この背後にあるのは明らかに世論の変化、「九条の会」の活動でした。運動が世論を変え、世論が民主党の政策を変えたのです。
この2つの運動、「九条の会」と反貧困のたたかいによって民主党は大きく政策を変えました。国民は、民主党ならやってくれるのではないかと期待を込めて投票し、政権交代を成し遂げたのです。これに対してアメリカのオバマ大統領は「普天間の国外移転」「密約の公開」に烈火のごとく怒ったし、財界は「構造改革はどうなるのか」とあせった。そして強力な圧力をかけて、鳩山政権、菅政権をひきずりおろしました。
そして「社会保障と税の一体改革」、つまり社会保障の切り捨てと消費税増税という構造改革そのものに命をかけるという野田政権を切り札として誕生させたのです。この政権は、6年間のブランクを取り戻し、新たな段階に引き上げることを使命にした政権でした。
それから、もう反対運動だけではだめです。新自由主義・構造改革の政治に終止符を打って新しい福祉型の地域社会をつくっていくためには、対案をはっきり示して訴えていくことが必要です。地域経済の中心は農林業や漁業です。特に農民連に期待したいことは、TPP反対の運動のなかで具体的な対案、政策をつくりあげることです。責任を持って現実的な対案を示していくことがいまほど求められている時はありません。それをやってこそ、新しい社会をつくっていくための大きな巻き返しの原点になるのではないでしょうか。
最後に訴えたいことは、今度は私たちの番だということです。農民連の果たしている役割は非常に大きいものがあります。農民連のみなさんが、大きな巻き返しの運動に取り組まれることをおおいに期待しています。
[2012年8月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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