TPP問題の現局面と
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野田政権は、原発再稼働と消費税増税に続いて、TPP交渉参加を強行しようとしており、夏から秋にかけての運動は非常に重要な段階を迎えます。
私たちはこれらの危機のいずれに対しても、独自に、あるいは広範な国民と共同して果敢に運動してきました。2011年8月27日に1300人が東京に結集して開いた緊急集会は、現政権誕生直前の初のTPP反対集会でした。
2011年10月には、ビア・カンペシーナと協力してFTA・TPP戦略会議と国際フォーラムを開き、韓米FTAが持っている重大な危険性を暴き出して、国民世論に大きな影響を与えることができました。日本国内で韓米FTAとTPPの毒素条項、とくにISD(投資家対国家の紛争解決)の危険性が広く語られるようになったのは11月以降でした。
今年4月の日米首脳会談にあたっては、4月25日に「TPP参加を訪米の手土産にするな」のスローガンを掲げ、「STOP TPP! 1万人キャンドル集会・デモ」が行われました。「TPP参加反対」の1点で、農民連や全労連などの運動体と市民社会組織、JA全中が一体になって、全国レベルでは初めての共同行動が実現したことは画期的であり、野田首相の参加表明のねらいを打ち砕く力になりました。
残る自動車については落とし所がはっきりしませんが、いずれにせよ、アメリカの無法な要求に屈する方向で「事前協議」という名の「裏交渉」が行われています。こんなやり方を許せば、交渉に入る前に“日本惨敗”で決着が着くことは明白です。
ある大企業シンクタンクは「交渉においては交渉当事国が対等の立場で交渉を行うのが筋である……(それができないTPP交渉は)世界史上稀(まれ)にみる非民主的かつ制限的なスキームである」と強く批判しています(大和総研コラム、7月11日)。
野田首相の決まり文句は「日本もルール作りに主導的に参加することが大事だ」ですが、交渉前に“惨敗”し、交渉に入ってもモノも言えないのが実態です。いいかげん、国民だましはやめるべきです。
(1)「老いた国」日本の経済成長は見込めないから、アジアの需要増加に寄生する「アジア太平洋戦略」を重点とし、日本の大企業の海外進出を進め、日本国内の産業を空洞化させる。
(2)日本国内では新設が不可能になった原発をベトナムやインドなどに輸出する。金融・流通・医療・建設業などのサービス事業のアジア進出をはかり、収益を2〜3倍化する。鉄道・高速道・水道などのインフラ輸出を官民あげて倍増させる。
(3)これらを推進するため、TPP、日中韓FTA、ASEAN+6FTA、日韓・日豪・日加・日EU・日モンゴルなどのFTA交渉を同時多発的に進め、最終的にはFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を締結する。これによって、総貿易に占めるFTA締結国との貿易比率(FTA比率)を現在の20%から80%にする。
しかし、FTAは「悪い仲間づくり」です。あいつは友達だからゼロ関税にしてやるが、あいつは仲間はずれにして関税をかける、という“いじめ”を露骨にやるのがFTAであり、それを一番徹底するのがTPPです。
すると仲間はずれになった国は脅威を感じ、われ先にとFTAに加わろうとする「FTAドミノ」現象が発生します。
また、世界銀行は「FTAが貿易を創出する、もしくはすべての参加国に利益をもたらすという主張を支持する有力な根拠は何もない」と断じ、むしろ世界の貿易がゆがめられてマイナスがたくさん生じると指摘しています。
日本は、1960年に発効した日米安保条約以来、小麦・大豆・飼料穀物など穀物を主体としたアメリカからの輸入農産物の激増のもとで、農業の基礎的な部門を「安楽死」させられてきました。同時に、野菜や果実、一部の畜産物などが「安楽死」作物に代わる「選択的拡大」品目に指定されましたが、これらは中国を含むアジアからの輸入によって打撃を受けてきました。
FTAなしでも「前門の虎と後門の狼」に十分に痛めつけられてきたのですが、このうえTPPや日中FTAが結ばれれば、打撃が深刻になることは必至です。これは韓中FTAにも共通する問題であり、韓国の仲間たちは「韓米FTAは廃棄、韓中FTAは結ばせず」のスローガンでたたかいはじめています。
一部には、完全自由化をめざす「極端な」TPPには反対だが、「柔軟」な日中韓FTAには賛成だという意見があるのも事実です。しかし、野田政権がねらっているのは「柔軟」なFTAではなく、「TPP化」したFTAです。また、日中韓FTA産官学共同研究報告書に「センシティブ品目への配慮」がうたわれているのは事実ですが、「包括的かつ高いレベルのFTAを目指す」「WTOルールと整合的である」ことが基本原則であり、本質的に自由貿易原理主義にもとづいていることは明白です。
これは、政党の動向にも反映しており、野党議員の80%、与党議員の半数がTPP参加に反対あるいは不同意の態度を表明しています。草の根からの運動を強めてTPP反対の世論を大きく高め、政治家に公約を厳守させる運動を発展させることが求められているし、運動を発展させる客観的な条件はあります。
●医師会、商工会、農協、漁協、森林組合、土地改良区、生協などを訪問して懇談し、さらに共同を広げる。
●広い共同の核となる地域共同組織をつくる。
●世論を変える学習、宣伝・署名を。
●全国食健連が呼びかけている8月20日からの宣伝・学習会・集会などの集中運動期間を全国でとりくもう。
●8月21日から始まる「ストップTPP!官邸前アクション」に参加しよう(毎週火曜日午後6時〜8時、首相官邸前)
[2012年8月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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