農民連の要求と提言(6/7)
―今こそ食料自給率の向上に踏み出す時、
農業・食糧政策の大転換は待ったなし
2009年6月 農民運動全国連合会
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提言5 若い農家を育てる国家プロジェクトを
石破農相は「基幹的農業従事者の6割が65歳以上になっている。あと10年経つと6割が75歳以上、さらに20年経つと6割が85歳以上になる。抜本的に構造改革を行わなければ、日本から農業をやる人がいなくなる。このまま行けば日本農業は消えてしまう」と、ことあるごとに危機感を表明しています(経済財政諮問会議、09年2月3日)。
しかし、暗い顔をして「危機」を騒ぎ立てるわりには、なぜここまで「危機的」な状態になったのかという分析も反省もありません。それもそのはずです。旧農業基本法以来、政府が育成するとしてきた「自立経営農家」も「中核農家」も失速状態におちいりました。政府が進めてきたのは、実は「育成」政策ではなく「蹴散らし」政策だったのです(図3)。その背景に、農産物輸入自由化や引き合わない農産物価格、減反の強制という悪政があったことはいうまでもありません。
そして、いま政府は新たな「蹴散らし」政策に突入しています。高齢化しているとはいえ、日本の農業と食糧を立派に支えている農家を規模の大小で選別し、293万戸の農家のうち230万戸を「政策対象外」としてしめだそうとしているのです。
しかし、こういう「政策対象外」農家が米生産の7割、農家直売所の9割を担っています。「蹴散らし」政策は、新たな食の不安を生みだすことは必至です。
また、規模の大小を問わず、専業・兼業の別を問わない共同の営みによって農村は成り立っています。これをこわしてしまえば、担い手など生まれるはずがありません。
農民連の提案
農民連は、次のように考え、提案します。
(1)“老壮青”のバランスのとれた農業に
人生90年時代です。機械化によって“苦役”から解放され、農業は高齢者にも十分可能になりました。都市に比べて高齢化が進んでいる農村で、高齢者の経験と力をいかし“老壮青”のバランスのとれた農業を追求する
ことは、日本社会の新しい発展モデルを切り開くものになるでしょう。
(2)若い農家を育てる国家プロジェクトを
“老壮青”のバランスのとれた農業にするうえで、若い力を育てることが重要なことはいうまでもありません。その大前提は、稲作農家の時給179円(日給1430円)というワーキングプア水準の改善です。同時に、若者や「定年帰農」、Uターン、Iターンなど5万人を超える新しい農の担い手を確保する事業を一大国家プロジェクトとして実施することが重要です。
国内外に立派な手本があります。
フランスでは、1973年から「青年就農者育成支援制度」を実施し、山岳地域に夫婦で就農する場合、3年分の生活費として約700万円(月20万円)を補助し、農地や機械、家畜などを無利子であっせんし、徹底的な技術・経営訓練を行っています(表3)。この制度の成果はめざましく、約30万人の青年就農者を確保しています。農家戸数比でみれば、日本では100万人に相当します。こういう思い切ったプロジェクトの結果、フランスの農民の年齢構成は、50歳以下が55%、65歳以上が7%と、日本とは正反対の構造になっています。
国内でも、多くの自治体で、新規就農者を確保するための事業が行われています。たとえば鹿児島県日置市では、2年間の研修に月18万円(単身者は12万円)の支援金を出し、就農後は1年間、月15万円(単身者は10万円)を支給し、家賃補助も行っています。同じ鹿児島県曽於市では、非農家出身の新規就農者に月15万円、農家の後継者に7万円を補助しています。
農民連は、年間5万人の後継者育成を目標に、これまで融資に限定している国の制度を、新規就農者に月15万円を3年間支給する制度に発展させることを要求します(この制度に必要な予算はおよそ2700億円と見込まれます)。また、農地の取得や住宅の確保、経営・生産技術の習得のための支援体制を強化し、親切できめ細かなサービスができるようにすることを要求します。
(新聞「農民」2009.6.29付)
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