農民連の要求と提言(2/7)
―今こそ食料自給率の向上に踏み出す時、
農業・食糧政策の大転換は待ったなし
2009年6月 農民運動全国連合会
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提言1 歯止めなき輸入自由化にストップを
食料自給率を向上させるには、まず歯止めなき輸入自由化をストップさせなければなりません。
WTO(世界貿易機関)が世界中の農産物貿易を支配する巨大企業の利益を最優先し、自由貿易主義をゴリ押しした結果、世界中で家族経営農民の暮らしが破壊され、“食の不安のグローバリゼーション”が進みました。
1995年にWTOが発足して以来、日本の農民と消費者が直面してきたのは、農産物の輸入急増と生産者価格の暴落、史上最大の稲作減反であり、残留農薬などに汚染された農産物や遺伝子組み換え食品の輸入増加による食の安全に対する限りない不安でした。
しかし、政府・与党と財界は、WTO交渉の促進に加えて、アメリカやオーストラリア、EU、中国とのEPA(経済連携協定)交渉を促進するなど、さらに輸入自由化を推し進めようとしています。
残念ながら民主党も、自民党に負けず劣らずです。前党首は就任直後に「民主党が政権を取ったら、アメリカと自由貿易協定(FTA)を結ぼうと考えています。韓国とも中国とも結ぶ。ただし、結ぶからには例外はなし」と述べ、完全自由化しても「たいしたことはない」、自由化による損害「13兆円を全部補償したところでタカが知れている」と言い放ちました(『月刊BOSS経営塾』06年6月号)。
農水省は、関税をゼロにして完全自由化すれば、食料自給率は12%になり、米の生産はいまの10分の1に落ち込むと試算しています。“亡国”の歯止めなき自由化にストップをかけることこそが求められています。
国連人権理事会もWTO農業協定に“異議あり”
WTOの原理は“世界はすでに十分な食糧を生産している”という前提に立って、効率的に生産できる国で食糧を生産し、“非効率”な国の農業はつぶれたほうが望ましいという「自由貿易」の原理であり、「生産刺激的」な政策や補助金を一切禁止しています。しかし、飢餓に苦しむ国々、あるいは日本のように食料自給率が著しく低い国では、飢餓根絶と自給率向上のための増産が必要であり、「生産刺激的」な政策こそ必要です。「生産刺激的」な政策を禁止するWTO農業協定は、飢餓根絶・食料自給率向上、食の安心・安全の確保、地球温暖化防止とは絶対に相いれません。
こういうWTOに対する批判は特殊なものではなく、世界の流れです。
世界ではいま、食糧を市場・自由貿易原理まかせにするのをやめ、「食糧主権」にもとづく食糧・農業政策の確立を求める流れが広がっています。「食糧主権」とは、すべての人々が安全でおいしいものを食べる権利であり、こういう食べ物を家族経営農民が持続可能なやり方で生産する国民の権利です。また、このような政策を、WTOなどの国際機関や大国の干渉を排除して実現する国家の権利でもあります。「食糧主権」は南米やアジアの国々で憲法上の権利として確立されています。
国連でもこういう流れが広がっています。国連人権理事会「食糧に対する権利」特別報告者のドシュッテル氏は、(1)各国の農業・食糧政策は、飢餓からの解放と安全な食を求める権利を実現するために決められるべきだ、(2)WTOや地域貿易協定(FTA・EPA)は、これを妨害する政策を強要してはならないと勧告しました(09年3月)。
農民連の提案
(1)新自由主義の破たんが明白になったいま、WTO農業協定を絶対化する自民党農政は時代遅れであり、WTO、EPA・FTAなど歯止めなき自由化を促進する外交交渉をただちに中止するよう要求します。
(2)政府は、あたかもミニマム・アクセス米の輸入が「義務」であるかのようにいっていますが、実際は「義務」ではなく“希望者には輸入の機会を提供せよ”というものにすぎません。「義務的輸入」の中止と、ミニマム・アクセス制度そのものの廃止を要求します。
(3)野菜や果実・ジュース、茶など輸入が急増しているか、あるいは輸入が国内生産に悪影響を及ぼしている品目に対し、関税引き上げや輸入規制、セーフガードの実施を要求します。
(新聞「農民」2009.6.29付)
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