農民連の要求と提言(3/7)
―今こそ食料自給率の向上に踏み出す時、
農業・食糧政策の大転換は待ったなし
2009年6月 農民運動全国連合会
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提言2 減反押し付けをやめ、水田の力を全面的にいかして自給率向上へ
減反(生産調整)政策が始まって40年、多くの稲作農民にとっては“減反に明け暮れた人生”といっても過言ではありません。それでも1995年にWTOがスタートするまでは、ミニマム・アクセス米の輸入は行われず、食管制度によってまがりなりにも米価が保障されてきました。
しかし事情はガラリと変わりました。“食管制度を守るための減反協力”だったはずなのに食管制度は廃止され、下支えをはずされた米価はピーク時(93年)の1俵(60キロ)2万2760円から、現在では1万4000円を下回り、4割強、9000円近く下がっています。500ミリリットル入りペットボトルの水は1本120円前後ですが、同じ量の米は100円に満たないという異常事態です。
減反をめぐって、政府は二つの「自己責任」論を農家に押しつけています。一つは「米価を回復させたかったら、農家みずからの責任で減反しろ」というものであり、もう一つは、減反に協力しない“不正直者”がいるから「正直者がバカを見る」「不公平だ」(石破農相)と、農家の対立をあおる議論です。しかし、責任を負うべきなのは価格保障制度を廃止し、ミニマム・アクセス米輸入と大企業の買いたたきで米価の足を引っ張っておきながら、減反を押しつけている政府です。また、農民には減反拡大を迫りながら、汚染米が発生しても、世界で米不足があらわになっても、1トンたりとも減らすことなくミニマム・アクセス米を輸入しつづけていることこそ最大の「不公平」です。
いま、政府は、こういう無責任と不公平を棚上げして、減反政策見直しのために農民と国民の意見を聞くと称して、減反を「廃止」「緩和」「現状維持」「強化」した場合など「5つのシミュレーション」を示しています
が、どの道を選択しても生産費すら償えない“貧乏クジ”だらけの選択肢であり、日本の米を守ることはできません。
農民連の提案
政府の米政策が破たんしていることはすでに明らかです。農民連は、次のような方向で、強制減反を廃止し、世界でも有数の高い生産力を誇る日本の水田の力を全面的にいかして食料自給率を向上させることを要求します(図1)。
(1)ゆとりある需給計画と備蓄の改善によって10万ヘクタールの米増産を
現在、国産米の在庫は、ちょっとでも不作になれば不足になるという綱渡り状態です。備蓄米を最低200万トン以上確保し、数年経過した米を加工・飼料用などに振り向ける「棚上げ備蓄」方式に切り換えることを求めます。ミニマム・アクセス米の輸入中止と合わせて50〜100万トン、10〜20万ヘクタールの米増産が必要になります。
(2)大豆、麦、米粉、飼料米(稲)の大増産を
自給率を40%に引き下げている要因は、穀物(麦・飼料穀物)と大豆の圧倒的な輸入依存です。これらの国内需要は無限といっていいほどあり、自給率向上のための戦略作物です。「提言4」で求める価格保障・所得補償を実現して大増産をはかり、耕作放棄や非効率的利用(「調整水田」)の解消をはかります。
(3)米の増産や自主的な転作条件の整備によって減反強制をやめる
価格保障・所得補償や転作奨励金、転作作物と競合する輸入農産物に対する規制など、自主的な転作の条件整備を行えば、未達成者・地域への補助金カットなどのペナルティ(罰則)をともなう減反の強制そのものが不必要になり、農民同士を反目させている不毛の対立も解消するでしょう。
(新聞「農民」2009.6.29付)
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