「農民」記事データベース20041213-664-08

農業・食糧をビジネスチャンスにする大企業のねら
いに抗し、国民の期待に応え、農業と農山村の復権
めざす「もう一つの流れ」を強く大きくしよう!

農民連第十六回定期大会決議(案)(3/8)

二〇〇四年十二月一日 農民運動全国連合会常任委員会

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三 二〇〇三年、二〇〇四年の活動を振り返って

(1)農政を動かし、農民や国民と共感を広げた農民連の運動

 米価の暴落など、農業の危機と農民の苦悩が広がっています。また、新たな自由化攻勢、BSE問題や輸入農産物への農薬残留、遺伝子組み換え作物の氾濫、食品偽装事件の頻発など、農業危機の深化とともに食の安全、信頼が脅かされています。

 農民連は、アメリカ言いなり、財界中心の農業破壊と、国民の食糧をますます外国に依存する農政をきびしく批判し、国民の食糧と健康、日本農業を守る立場に立った価格保障制度の確立を中心に日本農業を再生する方向を対置し、全力をあげてたたかってきました。

(2)「国際米年」キャンペーンと、米を守り、自給率を向上させる国民運動

 国連は世界の人口の半数以上が依存している米に着目し、食料安全保障や貧困撲滅における米の役割を考え直すことを目的に、〇四年を「国際米年」とすることを呼びかけました。

 農民連は、〇四年四月の「国際米年記念・国際シンポジウム」を皮切りに、食健連と共同して「国際米年」キャンペーンを展開してきました。

 また、政府が「国際米年」の決議に参加しながら、国内では米の輸入を前提に生産を縮小し、多数の農家を米づくりから締め出す「米改革」を推進していることを批判し、「米改革」の中止と、稲作を再生する提案を示して全国的に運動を展開してきました。

 いま、「主食・米を守れ」の国民の世論が高まり、「米改革」は重大な矛盾に直面しています。また、価格暴落対策や適正な備蓄を求める運動は、農業団体や米業界などに共通する要求となって広がっています。

 「米改革」に抗した「準産直米」のとりくみが、農協との共同にも発展して前進していることは重要な成果です。米屋さんとの間で、市場価格に左右されることなく、農家の生産費が確保できて、消費者が買い続けられる価格を模索する動きも生まれています。

 農民連・食健連が提起した「国内農産物の増産で食料自給率を向上させる国民署名」は、多くの国民に歓迎され、国民署名として大規模に発展させる可能性が生まれ、「地産地消都市宣言」運動など、地域での生産拡大と自給率を向上させる契機になる展望が生まれています。

(3)農民・国民の苦難に応える多面的な運動の広がり

 消費税法の改悪で課税免税点が一千万円に引き下げられた問題で、「農民連に入って一緒に記帳と対策を」とよびかけ、相談会の開催などのとりくみを進めています。経営を圧迫している固定資産税を軽減する運動が農民連ならではの運動として全国的に広がっています。また、減免軽油、資材の共同購入など、農家の経営に役立つ多面的な要求運動も広がっています。

 相次ぐ台風・長雨、新潟中越地震などの災害対策では、救済活動とともに、国・自治体への被害対策要求に全力をあげてきました。特に、未曾有の震災被害となった新潟県中越地震の救援活動は、「農民・国民の苦難あるところ農民連あり」の立場に立つ生産者集団としての真価を発揮して被災者を激励し、全国的な救援活動に貢献しました。また、「全国災対連」と共同して「新潟県中越地震復興被災地共同センター」を発足させ、救援や政府申し入れ、各党要請などを行いました。

(4)農業破壊と大企業の農業・食糧支配に抗したネットワークづくり

 大企業の農業と食糧支配に反対し、地域を基礎に生産を広げ、安全・安心、信頼できる国内産の農産物を願う広範な国民の要求に応えるために、日本列島三千キロの安全で豊かな農産物を提供するルートをつくるために全力をあげてきました。そして、その役割を全国的に担う「農民連ふるさとネットワーク」を〇四年八月に立ち上げました。

 「農民連ふるさとネットワーク」は、一九八九年九月に発足した産直運動全国協議会の運動と成果を引き継ぎ、今日の情勢にふさわしく発展させたものです。産直協は、「日本人の味覚と胃袋をとりもどす」ことを戦略的課題と位置づけるとともに、地域経済の発展と、それにふさわしい流通を確立する多様なとりくみを発展させてきました。産直協の奮闘は、生産点での運動を農民運動の中心課題として前進させるうえで決定的に重要な役割を果たしました。

 「農民連ふるさとネットワーク」の結成は、多くの農民はもとより、農協や生産グループ、農業を基幹とする自治体などを激励しています。また、安全・安心の食を願う広範な消費者・国民、そして、これらの人々と結びついて生き残りをかけてがんばっている中小流通業者にも展望をもたらしています。

(5)WTO協定改定と、食糧主権の確立を求める草の根からの運動

 〇四年一月にインドで開催された「世界社会フォーラム」などの国際会議や、四月に全国食健連と共催した「WTO協定と食糧主権確立に関する国際シンポジウム」の成功などは、WTO協定の改定を要求する私たちの運動に確信と展望をもたらしています。

 この間の運動で私たちが実感したことは、(1)多国籍企業が一人勝ちしているなかで、先進国や途上国を問わず農業の危機が深化し、途上国で飢餓が拡大している元凶がWTO体制にあること、(2)「食糧主権」の確立を求める世界の農民の団結とたたかいが、WTO体制を包囲していること、(3)私たちの進めている大企業の農業・食糧支配に抗した生産の拡大と多様な産直、学校給食などの地産地消のとりくみは、「食糧主権」の確立に接近する運動として国際的に注目されていること、などです。国際連帯の活動のなかでの日本の農民連の役割が急速に大きくなっています。

(6)農民連食品分析センターの機能強化と発展

 会員の生産する作物の農薬や重金属、栄養分析を行っている農民連食品分析センターは、信頼できる農産物の生産を広げる役割を果たしています。また、輸入冷凍ホウレン草や漢方薬、精肉から残留農薬、鮮度保持剤などを検出して社会にアピールするとりくみは、行政を動かし、食の安全や自給率を向上させる国民世論の拡大に大きく貢献しています。

 全国から寄せられた募金により、カドミウムや鉛、ヒ素などの重金属の分析機器の配備や人的体制の充実など、「国民のための分析センター」としての機能を格段に強化することができたことは、今後の運動にとって大きな財産となるものです。

(7)平和と民主主義、暮らしを守る国民共同の発展

 農民連は、アメリカの引き起こす戦争に国民を総動員する有事法制や、テロへの報復を口実にした米英によるイラク戦争、憲法を踏みにじった自衛隊の派遣、沖縄米軍ヘリ墜落事故など、戦争と平和をめぐる問題、年金法の大改悪、消費税増税などの増税、生存権すら否定する悪政に対し、広範な国民と共同してたたかいに全力をあげました。

 また、憲法を守るたたかいとともに、二十五条に規定された生存権を保障する最低限のルールである労働者の全国一律最賃制や最低保障年金、課税最低限の引き上げ、農産物の価格保障など、「ナショナルミニマム」を確立する運動を、新たな共同の課題に広げるために力をつくしてきました。

(8)組織建設と、新聞「農民」読者拡大について

 第十四回大会で本部財政の実態を明らかにし、打開のための「財政健全化三カ年計画」を決定し、全力をあげて実践してきました。その結果、「計画」を前倒しして達成することができました。

 農民連結成以来の組織的困難を全国の団結で克服できたことは、今後の組織と運動を発展させるうえでも、財政問題の多くの教訓を生み出したという点でも重要な成果でした。全国の仲間と新聞「農民」読者の皆さんに深く感謝します。

 財政の健全化は、十月から新聞「農民」を月一回カラー化するなど、紙面を改善・充実する条件を広げ、「食と農を守る共同の新聞」としての値打ちをますます高め、多くの会員や読者から歓迎されています。

 組織的には、持続的・継続的な奮闘によって要求運動と組織運動を発展させ、組織現勢を前進させている県連組織があることは貴重な成果です。しかし、全国的には会員数が減少傾向にあり、新聞「農民」読者数も減っています。

 この原因は、農業破壊攻撃のもとでの離農などによることもありますが、最大の原因は、本部の推進体制やイニシアチブを含め、会員と新聞「農民」読者を拡大する目的意識的なとりくみの弱さと、対話し呼びかける規模が決定的に小さいことにあります。

 農民連運動全体の前進面や、農民連に対する国民の期待の高まりに比べて、組織と読者数の拡大が依然として最も立ち遅れた分野になっていることを直視し、農民の現状にかみあった組織方針を練り上げるとともに、今大会を組織的飛躍の結節点にすることが求められています。

(新聞「農民」2004.12.13付)
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2004年12月

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