農業・食料・気候危機打開と
アグロエコロジー、「家族農業の10年」を
進める農政へ、要求で広く農民と結びつく
農民連づくりを
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農民連第25回定期大会決議案
2022年12月7日
農民運動全国連合会常任委員会
(2)地場産農産物による安全で豊かな学校給食の実現、給食費無償化を全国共通課題に
子どもたちに安全・安心の学校給食を求める運動や、学校給食の無償化、有機農産物・地場産農産物の利用が各地で広がっています。新婦人と共同で行政を動かし、地場産や有機の小麦を学校給食に導入させる実践も各地で進んでいます。
地場産農産物を使った安全で豊かな学校給食の実現、給食費無償化を全国共通課題に位置づけて運動を広げましょう。行政・学校関係者、保護者、JAなど関係者との懇談、学習会やシンポジウムなど、地域ぐるみの運動をさらに広げ、給食をテコにアグロエコロジーで社会を変える運動を発展させましょう。
(3)食と農、 地域の現実を共有する学習運動、 市民運動との連帯
種子法廃止、種苗法改悪反対、学校給食無償化など、幅広い市民運動や団体とのつながりを広げてきました。
農民連食品分析センターの最新の情報を生かし、生産現場での活用の強化、生産者・消費者が提携した運動を広げましょう。
日本では遅れているネオニコチノイド系農薬、グリホサート、ゲノム編集などの規制、子どもを農薬や環境ホルモンなどの暴露から守ることが、世界では当たり前にとりくまれています。
農民連ふるさとネットワークは、20年産米から、学校給食と準産直でネオニコフリー米のとりくみを進めています。
安全・安心の農畜産物の生産と販売拡大につながるよう、実践者や研究者の協力を得て「参加型認証」の研究も進めています。
食料危機や脅かされる食の現実を学ぶことは運動を前進させる基礎です。奈良県の「生産する消費者」との共同や、富山県の映画「食の安全を守る人々」の上映運動などの経験に学び、草の根からの学習・集い運動を展開しましょう。
種子の輸入依存の現実から脱却するために国内産種子を拡大することを政府に要求します。在来種を保存・継承しましょう。全ての都道府県で種子条例を制定させましょう。
(4)食健連運動、 広範な団体との共闘
広範な団体が結集して農と食を守る運動を草の根から進める食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)の役割がいよいよ大切です。全ての県と単組に対応した地域食健連を構築しましょう。
畜産危機を打開する運動で酪農家有志の団体との共同が前進したように、要求が切迫しているいま、多様な農業団体・市民組織と結びついて共同の運動を発展させる条件が広がっています。要求での共同を大きく広げましょう。
改憲や戦争する国づくり、軍拡政治反対など、国民的課題と農民要求を結んだ様々な共闘を広げましょう。
(5)原発ゼロ、 再生可能エネルギーをめざす運動
福島原発事故から11年経過したいまも人々は苦しみから解放されていません。
岸田政権は、被災者支援を縮小・廃止しながら、福島原発事故はなかったかのように、ウクライナ危機や円安による燃油高騰に乗じて稼働停止している原発を再稼働させ、新規建設まで打ち出しています。
また、原発の運転期間を40年から60年に延長したうえ、休止していた期間を運転期間から除外して実質的に60年を超えても稼働を継続させようとしています。さらに、原発被害を拡大する汚染水の海洋放出を23年にも強行しようとしています。
安全な原発は存在しません。ロシアはウクライナの原発施設にミサイル攻撃を行いました。政府が「戦争する国」に突き進んでいるなか、原発は「敵国」の攻撃目標にされかねません。
いったん事故が起きれば命と生活を奪い、国土と環境破壊、経済的損失をもたらす原発は人類とは共存できません。
多くの国民ととともに、原発依存の強化を止めさせ、原発ゼロ、再生可能エネルギーへの転換を求める運動を草の根から広げましょう。地域で農業と再エネをシェアするとりくみを始め、地域還元型の小規模な再エネのとりくみを進めましょう。
(5)多様な要求実現活動が地域農業を守る
(1)地域の担い手づくり、 就農支援策の充実を
農水省は、農家や農業法人を「農業次世代人材投資事業(準備型)」の支援対象からはずして「農の雇用事業」のみを対象にすることを打ち出しましたが、これを運動で跳ね返したことは大きな成果でした。政府は全体として制度を後退させ、担い手づくりを自治体に丸投げする動きとなっています。担い手づくりは、農政の重要課題です。制度と交付金の充実を国・自治体に要求します。
(2)中山間地域を守る運動、 鳥獣害対策を求める運動
中山間地域は、持続可能な農業を担う大きな潜在力を持つとともに、国土保全などの多面的機能を発揮し、都市住民をはじめ、国民に良好な生活環境を提供しています。
しかしいま、長年の自民党農政の結果、集落の消滅など人が住めない地域が増え、洪水被害の大規模化や鳥獣被害の激増など農業生産や多面的機能の面でも弱体化してきています。手入れされた里山と多様な家族農業が存在することは国民の願いです。中山間地域等直接支払い制度を農家の使い勝手の良いものに改善させ、制度の充実を要求します。
いま、コロナ対策として過密な都市から地方分散への機運が高まり、地方での暮らしや農林水産業が見直されようとしています。「田園回帰」を本格的な軌道に乗せるためには、国と地方の支援が不可欠です。有害鳥獣の被害は、農民の生産意欲を根こそぎ奪い、住民の命の安全を脅かす事態に及んでいます。国と地方自治体・住民が連携したとりくみへの支援強化を求めます。
(3)都市農業を守る運動
都市農業振興基本法で都市に「あるべきもの」と位置付けられた生産緑地は、指定期限の2022年を前に、特定生産緑地制度によって「10年間の農業継続」を条件に農地を維持・保全する制度が確立しました。そして22年3月末、国土交通省は生産緑地約9400ヘクタールのうち88%近くの農地が特定生産緑地として申請される見込みであるとする意向調査結果を発表しました。
これは、体験農園や直売所など、都市住民と一緒に農地を守るとりくみが進み、農業生産と緑地空間の保全など、生産緑地が持つ多面的機能への期待の高まりが政府を動かしたものです。
市民農園開設の簡略化や、担い手の規模拡大、新規就農者に農地を賃貸するなど新たな担い手も生まれています。こうした都市農業振興基本法にもとづく様々なとりくみに学び、都市の住民と都市農地を生かすとりくみをさらに広げましょう。
三大都市圏以外の市街化農地の固定資産税の上昇が続いています。
22年3月現在、負担が軽減される生産緑地への申請が13都市にとどまっています。和歌山市の経験などに学び、生産緑地への申請運動を広げましょう。
(4)漁業、 林業を守る運動
政府の沿岸漁業切り捨て政策に加え、温暖化による影響が漁業資源と漁民経営に重大な影響をもたらしています。JCFU全国沿岸漁民連絡協議会と連携して漁民要求を実現する運動を展開します。林業関係者と連携した運動を広げます。
(5)自治体に要求を届け、 住民ぐるみで実現する運動
水田活用直接支払い交付金の見直し反対など、全国いっせいの自治体議会請願運動で情勢を動かしたことが大きな教訓です。政府が有効な対策をとらないなかで、引き続き、地方創生臨時交付金を使った地域農業を維持するための支援策を自治体に要求し、これを恒久的な制度に発展させましょう。
(6)農民連食品分析センターを生かして安全・安心の生産を
分析センターが輸入小麦製品からグリホサートを検出したことが注目され、21年11月6日のTBSテレビのネオニコ系農薬に関する報道特集への再生アクセスが280万回に及ぶなど、大きな反響が寄せられました。
農民連女性部が一般社団法人アクト・ビヨンド・トラストの助成を受けて尿に含まれるネオニコ系農薬の検査を行い、大学の研究室や養蜂業界からの検査依頼の増加などで、原発事故後の検査点数を超えました。
一方、農業情勢の厳しさもあって、農民連内部の検査依頼は横ばいとなり、サポーター会員の登録数も目標の3分の1にとどまり、円安による海外製試薬の値上がりや物価高騰による経費の上昇などから厳しい経営が続いています。
さらに食品分析センターの存在と役割をアピールし、様々な市民運動などと連帯して検査件数を増やします。また、農民連内部の検査を増やすための議論を深めましょう。分析センターのスタッフが積極的に農民連の会員と交流を強め、生産現場の現状をつかみ、検査業務に生かす努力を強めます。
(新聞「農民」2022.12.19付)
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