農業・食料・気候危機打開と
アグロエコロジー、「家族農業の10年」を
進める農政へ、要求で広く農民と結びつく
農民連づくりを
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農民連第25回定期大会決議案
2022年12月7日
農民運動全国連合会常任委員会
(6)食料自給率向上めざす農政への転換を求めてたたかった参議院選挙
参議院選挙では、ウクライナ危機に乗じた「9条」改憲や軍事費倍増、敵基地攻撃などの議論に対し、食料危機と農業危機を特集した「農民」号外を40万枚発行し大きな反響を呼びました。「農民」号外を活用した学習運動が各地で行われ、憲法と農業・食料危機をテーマに、平和でなければ農業は成り立たないこと、食べたくても食べられないことは生存権、幸福追求権の侵害との訴えは反響を呼びました。
参議院選挙期間中の7月8日に、安倍元首相が銃撃される事件が起きました。参議院選挙の結果は、自民、公明の与党が引き続き過半数を維持し、改憲を主張する勢力の議席が衆議院、参議院ともに3分の2を超える国会状況となりました。
しかし、岸田首相が安倍元首相銃撃事件を政治利用する「国葬」に国民の反発が高まりました。特定の個人の葬儀を国が行い国民全体に弔意を強制することの違憲性や、銃撃事件を契機に表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一協会)と安倍元首相など自民党議員との根深い癒着関係への国民の怒りが岸田政権への批判となって高まり、内閣支持率が急落し「潮目が変わった」と言われる世論の変化が起きています。
(7)肥料高騰対策を求める運動
肥料原料のほぼ全てを輸入に依存している中、コロナ禍やウクライナ侵略、中国の窒素肥料の輸出制限により肥料原料の国際価格が高騰し、品目によっては2倍にもなっています。
農民連は緊急の肥料高騰対策を農水省に求め、肥料高騰対策事業を実現しました。しかし、実勢価格を補てんするには不十分であり、現場で使い勝手の良いものに改善させなければなりません。
(8)酪農・畜産の灯を消すな!11・30畜産危機突破中央行動
生産現場は飼料高騰を農産物価格に転嫁できず、離農が連鎖して、酪農・畜産業界は歴史上、かつてない危機です。
農民連は畜産農家を戸別訪問し、個人要望書を一人ひとりに書いてもらう運動を進めています。「たたかってこそ、事態は切り開ける、あなた自身が声をあげよう」という農民連の呼びかけは国への直訴です。まさに「農民の苦悩あるところ農民連あり」の活動を展開しました。
10月21日に直接、野村農水大臣に第1次分を手渡し、11月10日第2次行動、さらに11月30日には農水省前で畜産危機突破中央行動を今年のたたかいの最大の山場と位置付け、全国から300名以上参加して大きく成功しました。この集会には立憲野党や消費者が参加し、テレビ・新聞でも大きく報道され、政府を揺り動かしています。
岸田内閣の対策は、現場の畜産危機に対して全く機能していません。これまで畜産農家はいわば地域農業のリーダーとして、自民党の支持基盤でした。しかし、その人々が自民党に見切りをつけ始めるなど、農村の大きな変化がうまれています。
(9)地域から農業を守る運動を積み上げ、 地方自治体を動かす
農民連の繰り返しの要請に対し、農水省は地方創生臨時交付金の活用を呼びかけざるをえない状況となっています。この情報を積極的に受け止め、地方自治体に要請したところでは、米価暴落対策、肥料・飼料・資材高騰対策、次期作支援金、収入保険の掛け金への補助、学校給食の地場産利用と無償化など、補正予算や臨時交付金を利用した対策を実施する動きが全国に広がりました。
(10)新婦人産直について
東京都の新婦人と農民連産地がとりくんできた産直運動で、20年にカビ付着米や劣化米を届けた食品事故、放射能検査未実施の事実が発覚しました。重大なのは、単に一産地が引き起こした問題にとどまらず、新婦人と農民連の30年にわたる産直運動で築いてきた信頼関係を壊し、新婦人から強い不信を招く事態になったことでした。
21年9月、新婦人中央本部から「問題の教訓化と全国的共有のために、双方からの役員を含むチームで話し合い、文書化を」との申し入れを受け、1年近くに及ぶ議論を経て、改定「4つの共同目標」「『共同目標』実現のために大切にする確認事項」の2文書を双方の中央段階の機関で決定しました。30年に及ぶ新婦人産直の到達点と今後の課題を示したものです。新婦人産直運動を力に、持続可能で公正な社会を目指し一緒に学習を進めていきます。都道府県連が新婦人と協議し、農民連と産直組織で4つの共同目標を進めるための学習や課題について話し合いが始まっています。
(11)注目される農民連食品分析センター
輸入小麦で製造したパンなどからグリホサートが検出されたことを食品分析センターが発表して以降、国産小麦で学校給食パンを供給してほしいという運動が広がっています。ネオニコチノイドフリーのお米や農産物の供給や、アグロエコロジーを推進するためにも、分析センターを利用し、安全・安心な生産と産直を進めていきましょう。
(12)全国各地の運動と2年連続の会員拡大が運動を進める力
20年から21年3月まで持続化給付金申請のとりくみを全国で展開して2200名を超える会員と新聞「農民」読者を拡大し、会員拡大で結成以来30年ぶりの大きな成果を作り出しました。2年連続で会員と新聞「農民」の増勢を勝ち取ったことが、あらゆる運動を前進させる基礎となりました。一定数の現勢を持った組織が全国の拡大運動をけん引しただけでなく、小さな県連でも組織倍加や3ケタ回復など、農民の要求に真正面から向き合い、その実現を通じて仲間を増やすことを多くの組織が体験したことは今後の運動にとって貴重な財産です。
【2】戦争する国づくりへの危険な暴走
ロシアによるウクライナ侵略は、世界に食料危機をもたらしました。平和こそが食料の安定供給の保障です。同時に軍事同盟こそ紛争の火種であることが明らかになりました。
ところが岸田政権は、ウクライナ危機を口実に「軍事対軍事」の対応に突き進み、日米軍事同盟強化の大軍拡を進め、11月28日には、今後5年間で軍事費をGDP(国内総生産)比2%に倍加するように指示しました。しかも、軍拡の財源として戦時国債の発行や大増税をねらっています。
年末には、敵基地攻撃を掲げた防衛3文書(「国家安全保障戦略」「防衛大綱」「中期防衛力整備計画」)の改定を強行しようとしています。
戦後の平和の枠組みをかなぐり捨ててアメリカと肩を並べて戦争する国に作り替える暴挙を断固阻止します。国民生活と国家財政を破壊する大増税も改憲も許しません。草の根からの世論を喚起し、改憲阻止の署名を広げます。戦争する武力対応を激化させる米軍・自衛隊の基地増強に反対します。
【3】戦後最悪の食料危機と気候危機の打開、世界の流れに逆行する岸田政権に対する農民連の提案
(1)世界は戦後最悪の食料危機
気候危機、コロナ危機とウクライナ危機で、世界は戦後最悪の食料危機に陥っています。丸1日以上食事が全くとれない「急性食料不安」(飢饉)人口は、コロナ拡大前の1億3500万人から、コロナ後は2億7600万人に倍増し、ロシアのウクライナ侵略後は3億2300万人に増えました。国連は2030年までに飢餓をゼロにするSDGs(持続可能な開発目標)を掲げていますが、15年に5・9億人だった飢餓人口は21年には7・7億人に達しました。
WFP(国連世界食糧計画)のビーズリー事務局長は7月、「今年は食品価格の高騰が貧困層を直撃したが、来年は干ばつや肥料の不足によって食料がそもそも生産できずに、手に入らない問題が発生するだろう」と警告しています。
日本でも、食品値上げが相次ぎ、食べたくても食べられない人が激増しました。22年10月の「シングルマザーサポート団体全国協議会」の調査では、「米や野菜が買えなかった人」はそれぞれ56%、74%にのぼりました。帝国データバンクの調査では、22年の値上げ品目は2万を超え、23年の値上げ予定品目はすでに4000を超えています。
気候危機の進行によって、食料・農業危機は一過性のものにとどまりません。国連研究チームが10月25日に発表した論文によると、気候変動によって高温や異常気象が引き起こされ、不作による食料不足が悪化します。
(2)国連食料システムサミットによる巻き返し
危機が広がった原因は、巨大アグリビジネスが主導してきた「食・農支配戦略」のもとで、食と農の基盤がぜい弱化したことにあります。アグリビジネスは、環境破壊と飢餓・貧困の拡大を一切気にせず、農産物を安く大量に生産し、世界中で売りまくってもうけを最大化してきました。国際援助団体のオックスファムが5月23日に出した報告「痛みから利益を得る」によると、アグリビジネスは食料危機に便乗して過去2年間に資産を45%(53兆円)増やしました。
さらに、食料危機を逆手にとって、支配の強化を狙う巻き返しが強まっています。「国連食料システムサミット」(21年9月)では、アグリビジネスが、巨大デジタル企業と結び、(1)農家から種子、生産技術データを略奪する、(2)食料生産をハイテク化して農民を追い出し、土地を収奪する、(3)遺伝子組み換えと「合成食品」を推進する――ことを通じて、食と農の支配強化を企てていることが浮き彫りになりました。
多国籍企業の食農システムを土台で支えるのが自由貿易網です。RCEPが今年に入って発効し、総自由化に向けた流れが続いています。
(新聞「農民」2022.12.19付)
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