「農民」記事データベース20221219-1534-02

農業・食料・気候危機打開と
アグロエコロジー、「家族農業の10年」を
進める農政へ、要求で広く農民と結びつく
農民連づくりを
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農民連第25回定期大会決議案
2022年12月7日
農民運動全国連合会常任委員会

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はじめに

 こんなに農民が苦悩し、国民が生活に苦しみ、食べたくても食べられない人々が増えたことがあったでしょうか。

 生産費が農畜産物の販売価格を大幅に上回って経営の基盤が壊されています。これでは経営は続けられません。国民は物価が上昇しているのに実質所得が下がり、年金も減らされ続けています。

 国民が塗炭の苦しみのなかにあるのに、政府はまともな対策をとらないばかりか、軍事費を倍増させるために大増税を検討し、敵国に先制攻撃する政治を突き進んでいます。こんな政治を続けさせたら農業・食料も、国民の生活も平和も維持できません。

 “ものを作ってこそ農民”です。食料を生産し、地域を守っている農民が頑張らなければ国民の食と暮らしを守ることはできません。

 農民の苦悩に寄り添い、家族農業を基本にした農政への転換を求める農民連がさらに大きくなることは、揺らぐ食と農を憂い、国民本位の打開を願うすべての人々に対する責任です。大きな農民連を建設して国民とともに豊かで平和な社会の実現をめざして前進しましょう。

 農民連第25回定期大会は、(1)生産と食料の危機を打開する国民的な運動で食料自給率を向上させる農政を実現し、憲法と平和を守る政治を実現する方針を確立すること、(2)農民の要求を実現する運動を広げ、全国で農民連会員と新聞「農民」読者を増やす方針を確立すること、(3)その先頭にたつ常任委員を選出すること――を目的に開催します。

【1】要求実現、市民と野党の共闘で農政の転換をめざした2年間の運動

 農民連は「市民と野党の共闘」の発展こそ、自民党農政を国連『家族農業の10年』の方向に転換させる大道ととらえ、農民連の新しい活動ステージを開拓してきました。

(1)米価暴落対策の運動を国民運動へ発展させた

 政府は、米価対策を棚上げしたまま、史上最大の生産調整(新たに36万トン)を生産者に押し付け、ミニマム・アクセス(MA)米の輸入は聖域扱いにしてきました。その結果、21年産の生産者米価は60キロ8000円〜9000円に暴落するという事態になりました。「9000円米価」は、物財費に食い込む再生産を不可能とする価格であり、米の生産基盤に重大な打撃を与えました。

 こうした中での21年春の「3・19米危機緊急中央行動」は、米価暴落・米「過剰」の最大の原因は新自由主義による貧困と格差の拡大にあることを解明し、国による緊急買い入れと食料支援制度創設を提起しました。同時に、農民連は全国で「女性相談会」や「大人食堂」、民青同盟の青年・学生への食料支援のとりくみに米や野菜などを提供して支援してきました。

 農民連の米危機打開と食料支援制度創設を求める国民的運動の提案は、「米危機打開」を立憲野党の共通政策にする第一歩となり、運動を広げる画期となりました。

(2)光放ったRCEP国会批准阻止のたたかい

 21年4月、ASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)10カ国に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加するRCEP(アールセップ)(地域的な包括的経済連携協定)の国会批准を阻止するために、連日国会前座り込みや議員要請にとりくみました。

 「重要品目は除外しているので国内農業に影響はない」という政府に対し、新規就農者のとりくむ主力作物や各都道府県が推進する高収益作物がすべて自由化の対象になることを現場から告発し、東京大学の鈴木宣弘教授の「影響試算」とともに、大きな役割を果たしました。

(3)市民と野党の共闘の力で、米危機打開に挑戦した 「9・24集会」

 米価暴落対策を総選挙の争点に押し上げて突破するための「米危機打開全国一斉行動」を呼びかけ、のぼりや「農民」号外の大量宣伝、軽トラパレード、議会請願、JA・自治体訪問などに全力をあげました。「政府の責任による市場隔離」と「食料支援」をセットで提起したことにより、農民連の運動への共感が広がりました。

 「9・24集会」には、反貧困ネットワークや主婦連合会など市民団体・消費者団体が参加し、国民的課題として総選挙の争点に押し上げました。

 欧米では当たり前の生産費と市場価格との差を補てんする制度や、農民から農産物を買い上げて食料支援に回して農産物価格を支える制度の実現に向けた新たな国民合意を作り出すとりくみが始まったといえます。

 総選挙で農民連は結成以来、初めて全国で野党統一の小選挙区候補と政策協定を結んでたたかいました。その結果、20名近くが当選し、農民連と協力・共同する議員が増え、市民と野党の共同の発展と農民連の新しい活動ステージを開拓しました。

 選挙結果は、自公勢力を前回比20議席減に追い詰めました。政権交代には届かなかったものの、候補者を一本化した214小選挙区のうち59小選挙区で勝利し、惜敗率80%以上は53小選挙区にのぼりました。

 市民と野党の共闘は、2015年安保法制反対運動の中で始まり、4回の国政選挙を経験し、野党が候補者を一本化すれば勝てることを示した重要な成果であり、政権交代の展望を開きました。

 この結果に危機感を持った支配勢力は、選挙直後から猛烈な野党共闘攻撃を繰り広げました。

 総選挙の結果、不十分とはいえ「市場効果のある15万トン特別枠」という事実上の市場隔離を実現しました。

(4)ウクライナ戦争で世界は食料危機に――増産を呼びかけた農民連

 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略に対して、農民連は直ちに抗議声明を出すとともに、コロナ禍とウクライナ危機の中で「世界と日本で、すでに食料危機は始まっている、増産へ大きく転換を」と呼びかけました。

 世界の食料価格が高騰し、国連は「第二次世界大戦後最大の食料危機」と警鐘を鳴らし、飢餓人口は急激に増加しています。

 もともと、食料自給率38%の日本は、食料の輸入だけでなく、タネ、飼料、肥料、資材のほとんどを海外に依存してきたうえ、異常な円安も加わり、農業経営の危機と食料生産のぜい弱性が浮き彫りになりました。

 38%の食料自給率の現実と世界の食料危機の実態を知らせ、食料を増産する農政への大転換を呼びかけ、各地で「ウクライナ危機と食料危機」の学習会を開催し、中でも新日本婦人の会東京都本部と東京産直関係会員の4・15オンライン学習会は大きく成功しました。

(5)農業危機・食料危機に逆行する水田活用交付金見直し

 水田活用交付金見直しは、転作で麦や大豆・ソバ・飼料を作り、食料自給率の向上に努力してきた農家から、5年に一度水張りして米を作らなければ補助金を引きはがすとんでもない政策です。

 地域から自治体あげての反対運動が広がり、水田活用交付金の「見直しは絶対につぶす」と発言した秋田県知事を激励する県庁訪問や、町と議会が挙げて反対運動を進める青森県七戸町訪問など、農民連は、自治体・農協にも呼びかけて反対運動を起こし、流れを変えてきました。

 4月27日、金子農水大臣(当時)に直接会い、水田活用交付金の見直し撤回と食料の増産・経営支援を要請しました。大臣は「農水省だけでは決められない」と繰り返し、岸田政権の無責任ぶりが明らかになりました。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2022.12.19付)
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2022年12月

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