「農民」記事データベース20220131-1490-06

要求で農民と広く結びつき、
組織を飛躍させて
「家族農業の10年」の農政に
転換しよう
(4/6)

2022年1月13日
農民連全国委員会決議

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(2)市民・消費者と共同して生産点での運動を

 (1)安全・安心の国産農産物を提供する責任

 安全・安心な農畜産物の生産が各地で展開され、高齢者や女性の力が生かされる直売所やインショップ、学校給食への納入など地産地消、産直運動が地域での生産の維持と活性化に貢献しています。地域の食品加工・醸造業者との提携も各地で広がっています。「ものを作ってこそ農民」の原点に立ったとりくみを強化しましょう。

 安全性・品質・収量など栽培に関する先進的な技術の継承・発展も喫緊の課題です。全国各地で実践されているモノづくり講習会や情報交換、先進技術の調査・研究などにとりくみましょう。

 農薬・化学肥料の低減技術、有機農業など、安全で環境負荷の少ない農業技術、自給率の低い麦・大豆・飼料用作物の効率的な栽培技術など新技術研究と交流を行います。

 多様な生産と新たな販路の確保による経営の安定につなげるため、農民連の農産物を取り扱う業者を増やすとりくみも大いに進めていきます。

 (2)世界で広がる有機農業と参加型認証

 世界では有機農産物の生産が広がっていますが、「参加型認証」の普及が後押ししていると言われています。日本の有機認証は、年間20万円前後の経費と審査のための作業が負担となっています。

 農家相互、消費者や流通業者などが関わることで個々の農家の負担を減らしつつ、多数の目でチェックして、より信頼できる認証をするというのが参加型認証です。日本での最初の参加型認証団体となったのがオーガニック雫石で、年間7000円余の負担で有機認証が可能といわれています。

 新日本婦人の会などとの産直、生協産直、準産直米でのこだわりのお米など、農民連の産直でもとりくめる可能性があります。安全・安心の農畜産物の生産と販売拡大につながるよう、実践者や研究者の協力を得て「参加型認証」の研究を進めます。

 (3)ネオニコとグリホサート――農薬問題に正面から挑戦しよう

 EUやアメリカではネオニコ系農薬の禁止・規制が進んでいます。これに逆行して、日本では農薬の新規登録も続いています。農薬暴露の最大の被害者は農民です。近年、慢性毒性や複合農薬暴露影響、浸透性・残効性の高いネオニコでは胎児への影響も明らかにされています。

 発がん性が指摘されているグリホサートが社会的問題になっていますが、政府は規制に動こうとしていません。

 農民連ふるさとネットワークは農民連食品分析センターと協力し、20年産米から学校給食や日米連会員向けこだわり米などで「ネオニコフリー米」の販売に乗り出しています。

 食の選択を真剣に考える消費者へ自信をもって提供できる農産物づくりに向けて、ネオニコ系農薬やグリホサートを使用しない生産に踏み出しましょう。各地でとりくまれている技術の情報交換と資材の利活用を一層進めましょう。

 (4)安心の地場産農産物で、 安全で豊かな学校給食めざす運動

 学校給食の無償化、有機農産物・地場産農産物の利用が各地で広がっています。新婦人との共同で行政を動かし、地場産や有機の小麦を学校給食に導入させる実践が各地で進んでいます。

 地場産農産物を使った安全で豊かな学校給食の実現を全国共通課題に位置づけて運動を広げ、行政・学校関係者、保護者、JAなど関係者・学校との懇談、学習会やシンポジウムなど、住民ぐるみの運動をさらに広げましょう。

(3)新婦人産直の原点に返り、 「4つの共同目標」 に向かって

 (1)持続可能な食と農を実現し、 家族農業の運動を

 新日本婦人の会は、食と農を守る運動を共同で進めるパートナーであり、新婦人と農民連の産直運動は、SDGs・家族農業の10年、食料自給率向上、食料主権の実践の具体化でもあります。

 コロナ禍で食と農のあり方が問われているいま、持続可能な農業・食料システムを実現し、「家族農業の10年」の運動を地域で広げていく上で、新婦人との産直運動をさらに発展させることが求められます。

 (2)教訓を共有し運動の発展を目指す

 しかし、こうした位置付けに反する食品事故や契約違反の事例があり、信頼を深く傷つけ、産直運動の後退を招く大問題となっています。

 「新婦人と農民連の産直運動4つの共同目標」から逸脱した問題の教訓を全国的に共有し「4つの共同目標」実現のために、農民連組織をあげた議論と学習を行い、信頼回復と運動のさらなる発展をめざします。

 「新婦人と農民連の産直運動4つの共同目標」は次の通りです。

 1. 私たちは、安全でおいしい国産の農畜水産物を作って食べて、日本の食料自給率を向上させ、家族の健康を守り、食文化を次世代へ継承します。

 2.私たちは、お互いの顔と暮らしが見える交流を活発にして、持続可能な地域社会と農業の担い手づくりをめざします。

 3.私たちは、気候危機を乗り越え、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に大きな役割を果たす家族農業が大切にされる社会への転換を求め、食料主権の確立をめざします。

 4.私たちは、お互いの組織の発展に貢献する産直運動をめざし、定期的な協議をおこないます。

(4)多様な要求運動が地域農業を守る

 いま、全ての農民の利益を守る立場に立って悪政とたたかい、広範な国民諸階層と連帯して家族農業を中心に農業を守り発展させる政府をつくるたたかいとあわせ、農民の多様な要求で結びつきを強め、力を合わせて要求を実現する運動の発展が求められています。

 (1)地域の担い手づくり、 就農支援の充実を

 多様な担い手づくりは、地域農業の維持にとって最重要課題です。親元就農者、定年退職者や他産業からの就農支援、とりわけ新規就農者の確保・定着を支援するとりくみを求めて運動を強めます。消費者や地域住民と力を合わせて農地と生産を維持するとりくみ、都市の青年を農村にいざなう紹介運動を行います。

 22年度予算概算要求で「新規就農者育成総合対策」として、経営開始型の支援に1000万円の無利子融資が新設されるなどの見直しが盛り込まれました。しかし、これまで国費100%で実施されていた資金交付事業予算の2分の1が自治体負担となり、自治体負担がなければ就農希望者が支援を受けられない事態が想定され、全国知事会が全額国費負担の復活を政府に強く要望していました。

 農民連も21年12月17日に全国食健連とともに農水省要請を行うなど、全国からも見直しを求める声が広がり、予算案では全額国費による資金交付事業が継続することとなりました。

 また、経営開始時の支援補助の自治体負担分を地方交付税の対象とする方向になっています。自治体の独自支援策が効果的に発揮され、現場で就農希望者が利用しやすく、担い手確保に役立つ制度になるようさらに要求運動を強めましょう。

 (2)災害対策を求める運動

 災害が頻発しているなかで、国や行政に対策を要求する運動を強めましょう。気候危機に対応した災害対策を充実させ、“担い手偏重”の支援策を「被害を受けた全農家」に是正させること、災害対策の窓口となる自治体の体制強化と柔軟な対応を求めます。

 (3)畜産を守る運動

 高騰する飼料価格から畜産経営を守るために飼料価格安定基金を積み増しさせるなどのとりくみを強めます。

 コロナ禍で制度危機に陥っている牛マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)を生産者負担の軽減を基本に制度改善を求めます。コストに見合う乳価をはじめとした畜産価格の実現を要求します。

 輸入飼料への依存を減らすため、国内自給飼料を増産する対策の強化を求めます。

 散発状態にある豚熱、鳥インフルエンザを再発生させないために、政府、自治体、生産者が力を合わせることが求められます。ワクチン接種料金や防護柵、衛生費などの農家負担の軽減を求めます。

 (4)資材高騰対策を求める運動

 肥・飼料、農薬、農業資材価格、燃油の高騰が農業経営を直撃しています。政府に緊急対策を要求します。

 輸入肥料・農薬に依存する農業から循環型の農業への転換、燃油に依存している施設園芸等については、農家が再エネに転換することを支援する制度の確立を要求します。

 (5)中山間地域を守る運動、 鳥獣害対策を求める運動

 気候危機による災害、コロナ禍による米価や農産物価格の暴落などが中山間地の困難を助長しています。持続可能な農業を担う潜在力を引き出すために、地域住民と共同して中山間地農業を支えるとともに、中山間地直接支払制度を農家の使い勝手の良いものに抜本的に改善することを要求します。

 コロナ危機は、都市の過密を解消することを求めています。「田園回帰」を本格的な軌道に乗せるために多様な就農支援を国の制度として確立し、地域の農業とコミュニティーを存続させることを要求します。

 深刻な有害鳥獣被害を軽減するため、国と地方自治体、住民が連携したとりくみへの支援強化を求めます。

 (6)都市農業を守る運動

 農民連は、都市農地が持つ多面的機能を生かすための特定生産緑地制度の申請運動を、農業委員会やJAとも協力して進めてきました。国土交通省は21年9月末、面積ベース(9508ヘクタール、199都市)で「80%を超える7657ヘクタールが指定済み及び指定が見込める」と発表しました。引き続き30年の期限が迫る生産緑地の申請運動を進めましょう。

 あわせて、都市農地を守る様々な制度を生かした大阪農民連の経験にも学び、新規就農への農地の紹介や、各地に広がる体験農園のとりくみなど、生産緑地を地域で守るとりくみを探求しましょう。

 (7)漁業、 林業を守る運動

 20年12月から施行された「改正漁業法」は、漁民の漁業権を侵害して大手資本に浜を明け渡すもので、資源管理の名による一律な漁獲規制は沿岸漁業と漁村経済に重大な影響をもたらします。1万数千人の組織に発展した全国沿岸漁民連と連帯して漁民要求を実現する運動を広げます。

 全国に広がる自伐型林業を、持続型の農山村づくりのとりくみとして発展させましょう。

(新聞「農民」2022.1.31付)
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2022年1月

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