要求で農民と広く結びつき、
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安倍・菅政治を見直すかのような装いでしたが、首相になったとたんにこれらの“偽装看板”は全部撤回されました。岸田政権は、国民的な批判を受けて退場した安倍・菅政治との「違い」をアピールしながら、安倍・菅政治をただ単に継承するだけでなく、より危険で反国民的な打開の方向をめざしています。国民の願いに逆らう岸田政権を包囲する国民的な運動を広げることが急務です。
補正予算では「防衛費をGDP(国内総生産)の1%以内から2%以上へ」という「防衛費倍増計画」にもとづいて、戦闘機やミサイルなどの爆買いに7738億円をつぎ込むことを早々と決め、21年の防衛費は過去最大の6兆円を突破する大盤振る舞いです。1980年には防衛費は農林水産予算の6割でしたが、いまや2・7倍です。
かわって岸田政権が打ち出しているのは、半導体・蓄電池メーカーなど国内外の大企業に、当面8000億円の補助金をつぎ込む「たかり資本主義」の強化です。これが「新しい資本主義」の正体です。
しかも“岸田農政”は単なる焼き直しにとどまりません。財務省・財政審議会は12月3日、とんでもない方向を打ち出しました。
(ア)減反を283万トンから1・5倍の415万トン(2039年)に拡大する。
(イ)基幹的農業従事者が136万人から42万人(2040年)に減るという見通しをもとに、経営規模を3倍にする、つまり農家戸数を3分の1に減らす。
(ウ)スマート農業で採算がとれる稲作の経営規模は12ヘクタール以上であり、稲作農家(平均1・9ヘクタール規模)を6分の1に減らす。
岸田首相は所信表明で「新しい資本主義の主役は地方です」「家族農業や中山間地農業を維持します」とキレイごとを並べ立てました。しかし、減反を1・5倍に拡大し、稲作農家を6分の1に減らすというのが“岸田農政”の未来像です。
これは史上最低に落ち込んだ自給率を引き上げ、“消滅”の危機にひんしている農村・地域を立て直すどころか、亡国の農業・地域つぶしの政策をいっそう推進するという宣言にほかなりません。
その中身は、日米貿易協定で約束した日本車の対米輸出関税の撤廃を反故(ほご)にするとともに、「半導体・バッテリーなどの分野における米国中心の供給網構築への協調」を迫るもので、半導体、自動車などの米国での現地生産をさらに強要し、アメリカが覇権を握る供給網の再編をねらいとしています。
“双方の譲歩にもとづく自由貿易協定はもはや時代遅れ”“アメリカの国益を守り、相手国に一方的に譲歩を迫る覇権主義的な枠組みを構築したい”――これがバイデン政権の本音です。これに全面的に協力する岸田政権のもとでは、米を含む農産物も国内製造業もさらに危機にさらされることは必至です。
◇IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、温暖化の壊滅的な被害を防ぐには、世界の気温上昇を1・5度未満に抑えること、そのためには世界全体の温室効果ガスの排出量を2050年頃には実質ゼロに、30年までに45%削減しなければならないと指摘しています。これは11月にイギリス・グラスゴーで開催したCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の合意文書にも明記され、不十分ながらも重要な一歩を踏み出しました。しかし現在の各国の削減目標では2・7度も上昇してしまいます。1・5度目標に見合うよう、いかに各国が目標を引き上げるかが、引き続き大きな課題となっています。
◇国際的に石炭火力発電を廃止することが強く要請されていますが、日本では多くの大規模石炭火力発電所の新設計画が進行しており、21年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画でも、30年に石炭火力が19%も残る計画になっています。日本政府は今こそ、計画を見直して、石炭火力発電を廃止し、再エネ・省エネを飛躍的に推進させる政策に転換すべきです。
◇安全な原子力発電は存在せず、エネルギーを原発に頼る政策は間違っています。原発延命措置を直ちにやめ全廃すべきです。福島第一原発の処理汚染水の海洋放出も言語道断であり、やめるべきです。
◇気候危機が食料需給をひっ迫させるとの警告が相次いでいます。食料輸入大国の日本では、一人でも多くの農民が農業生産を続け、条件不利な農地も含めてあらゆる農地をしっかり活用して多種多様な農林業を発展させる、さらには太陽光のみならずバイオマスや小水力など地域資源もフル活用して、真に持続可能で、地域循環型の社会へと転換していくことが求められています。
◇自然も人も収奪の対象とし、気候危機を招いてきた経済システムを今こそ根本から見直すことが求められています。
FAO(国連食糧農業機関)によると、21年11月の世界食料価格指数は134・9で、11年の世界食料危機時を上回り、過去最高に迫る勢いです。原因は、気候危機や出荷コストの上昇、コロナ禍による労働者不足、2倍にも及ぶ肥料価格の高騰で、来年以降も世界的に作物の収穫量が減少すると予測されています。日本でも各地の農協から肥料の供給不安が警告されています。
世界ではコロナで1億2千万人が新たに食料不足に陥って、人口の10%、7億7千万人が飢餓に直面し、日本でもコロナ禍のもとで「食べたくても食べられない」人たちが増えています。SDGs(持続可能な開発目標)の大目標である飢餓ゼロに向けて、食料危機を打開すること、史上最低の自給率を抜本的に向上させることが強く求められています。
この背景にあるのは、第1に、農薬・化学肥料・種子、流通・加工など既存のアグリビジネスに加えて、巨大デジタル企業が農業・食料に乗り出し、巨大企業による農業・食料支配が新しい段階に進んでいることです。
彼らがねらう方向は、巨大デジタル企業+アグリビジネスの食料システム支配を強化するために、▽農家から種子、生産技術のデータを略奪し、企業が独占する、▽独占したデータにもとづいて食料生産をハイテク化して「農民がいない農業」に変革する、▽遺伝子組み換え・編集と「合成食品」を推進することです。
第2は、国連が「家族農業の10年」「農民の権利宣言」を決議し、各国政府が食料主権、アグロエコロジーを支持するなど、世界の食料・農業政策の流れが大きく転換していることです。国連食料システムサミットは、この流れに対する多国籍企業陣営からの巻き返しです。
「変革」すべきは、飢餓を増大させ、気候危機と生態系破壊を進めてきた旧来の食料・農業システムです。地球の未来を絶滅と生態系崩壊に向かわせる国連食料システムサミットを私たちは断固として拒否します。
その裏付けとして「戦略」が掲げているのは、遺伝子組み換え技術を使ったRNA農薬やスーパー品種の開発、巨大デジタル産業を軸とする無人操舵のトラクターやコンバイン、ドローンなどを駆使した農民不在のスマート農業です。
有機農業に関する目標も、「40年までに多くの農業者がとりくむことができる技術を開発し、50年までに25%にする」というものです。
これは、農民と消費者が共同で築き上げた有機農業の技術を横に置いて「工業的スマート農業」を推進するものであり、50年まで、有機農業面積は増やさないという宣言に等しいものです。
来年度の予算案では、23年までに「8割の農地を『担い手』に集積・集約化すること」を目指して、ロボット技術やICT機器の導入を優先的に採択するとしています。
また法人化を誘導するとともに法人に対する株式会社など農外の出資比率を50%以上に引き上げることを検討しています。
いま求められているのは、担い手の選別や「工業的スマート農業」の推進ではなく、日本国内でとりくまれている有機農業の豊富な実践を検証・普及し、家族農業経営や新規就農者に手厚い支援を行うことです。そうしてこそ、有機農業の面積も、その担い手も2040年を待たずに飛躍的に広がるでしょう。
[2022年1月]
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