要求で農民と広く結びつき、
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食料主権に基づく政策に転換し、食と農が本来持っている力を取り戻すことで、危機を打開し、持続可能な環境と社会をつくることができます。そのために家族農業・農民の支援を抜本的に強めようという動きがすでに始まっています。
国連は家族農業を「持続可能で包摂的な食料システムを創出・維持する主体であり、SDGsの実現に貢献する」と位置づけ、2019〜28年を「家族農業の10年」とし、18年には「農民の権利宣言」を採択しました。両方を一体的に日本で追求する枠組みとして「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」が設立され、政策提言や学習交流活動を行ってきました。
国際社会はすでにアグロエコロジー重視で動きだしています。国連は10要件、13原則を発表するなど、推進のためのルール作りや情報発信に力を入れています。フランスは14年の「農業・食料・森林の未来法」でアグロエコロジー推進を打ち出し、EU(欧州連合)全体でもアグロエコロジーと家族農業重視の政策が進んでいます。同じ動きは中南米やアフリカ、アメリカでも広がっています。
しかし政府は、市場隔離を拒否しました。20年10月16日に開催した食料・農業・農村政策審議会食糧部会で、前年度の需要減少分20万トンのうち、10万トン程度はコロナによる減少と試算しながら、市場隔離を拒否し、新たに6・8万ヘクタール、30万トンの「減反」を生産者に押し付けることを決めました。この結果、21年産米の生産目標は「平成の大不作」となった1993年の生産量をも下回る693万トンに削減されました。
しかし減反拡大目標は基本的に達成されたものの、政府の無策によって、21年産米の概算金が大暴落し、特に業務用に向けられる産地銘柄では前年比1俵(60キロ)3000円〜4000円も下落、7000円台まで暴落した銘柄もあり、全国の米農家の経営に大打撃をもたらしました。
9000円米価では、物財費すらまかなえず、農水省が推進してきた大規模法人でも経営が維持できない水準であり、稲作が根底から突き崩される事態です。
安倍内閣による「米戸別所得補償」の廃止と政府の米需給調整からの全面撤退、「需要に応じた米生産」という農民に自己責任を押し付ける米政策が大破たんし、そのしわ寄せが生産者にかつてない打撃をもたらしています。無責任な農政を転換することは喫緊の課題です。
「米危機打開11・25中央行動」での農民連の過剰米の市場隔離要求に対し、農水省は、隔離効果のある「15万トン特別枠」は保管2年目以降も市場に出回らせず、複数年にわたって隔離効果が続くことを明言しました。これまで、市場隔離要求を拒否し続けていた政府が政策転換し、事実上の「民間備蓄」の実施を言明したものであり、農民連のたたかいの成果です。
しかし、米価問題は何ら解決していません。市場隔離と食料支援の実施、市場任せの米政策の転換を求めて運動を広げましょう。
もともとは「米の生産ができない農地、米以外の生産が定着している農地を交付対象から除外すべき」との財務省の不当な圧力を背景にしたものですが、これが実施されれば、転作割合の高い北海道をはじめ、農家への打撃は計りしれず、米危機にいっそう拍車がかかることは必至です。
水田活用交付金は、麦・大豆・多年生牧草は10アール3・5万円、そば・ナタネは2万円ですが、5年間米を作付けしない場合、これがすべてなくなります。長年、政府の方針に従って転作に協力してきた農家を交付金の対象から排除し、経営の存続さえ危うくするのは重大な裏切りです。
まともな米価暴落対策をとらず、史上最大の減反を押しつけたうえに、水田・転作経営に不可欠な交付金を奪い取る岸田政権の暴政を絶対に許さず、全国で水田活用交付金改悪反対の大きな運動を発展させましょう。
生産調整は農家自らが行うものとし、消費量減少の責任を農家に押し付けながら、毎年77万トンもの外米を輸入し、国産米の需要を奪い続けています。
毎年、1トン当たり10万円もするアメリカ産米がMA輸入量の約半分を占めており、対米「密約」が指摘されています。最近は毎年60万トンが1トン当たり2万円で飼料用に販売され、外米処理だけで毎年300億円の赤字を発生させています。
世界の米の貿易量は生産量のわずか9%程度で、米は穀物の中でも自給が基本の作物です。世界的な新型コロナ感染拡大や気候危機が飢餓人口を増加させているもとで、輸入に頼る日本の食料政策の転換は待ったなしです。広くMA米の害悪を知らせ、輸入量を削減・廃止させる運動が求められます。
農民連全国委員会で開会あいさつする長谷川敏郎会長(左から2人目)=1月13日 |
米危機打開は大同団結できる要求です。地域から米穀流通業者や消費者との共同を広げ、JAや自治体との懇談、政党への政策的な働きかけを強めましょう。
各地で「農業を考えるつどい」を積極的に開催するなど、米を守り、農業と地域を守るとりくみを強化しましょう。
無策な政府に対して、暴落補てんや来年の作付け対策など、独自の対策を実施する自治体が全国に大きく広がっています。富山県や群馬県館林市などでは、ひとり親世帯などに食料支援のために「おこめ券」が配布されています。
各地で「農業を考えるつどい」を積極的に開催するなど、米を守り、農業と地域を守るとりくみを強化しましょう。
日本の米作りを持続可能なものにするために農民連は次の7項目を要求します。
1.生産者に責任を押し付けるだけの生産調整方式を改め、国が米の価格と需給に責任をもつこと。
2.あらゆる用途の米を国がコントロールし、ゆとりある備蓄米制度を確立するとともに、備蓄米を機動的に需給調整に活用して米価の安定をはかること。
3.生産費を基礎にした価格保障制度を実現すること。当面、廃止された戸別所得補償・米価変動補てん交付金を復活させること。
4.多面的機能・環境保全型・中山間地対策など、直接支払い制度の利用拡大と支払額の増額を行うこと。
5.国内消費に必要のない外国産米(MA米)の輸入は中止し、少なくとも国内の需給状況に応じた輸入抑制を直ちに実行すること。
6.主食用米から飼料用米等への転換にあたっては、産地交付金などを増額し、主食用米並みの所得を生産者に補償し、稲作経営の安定をめざすこと。長年「減反」に協力してきた農家の苦労をないがしろにし、大幅な減収をもたらす水田活用交付金の廃止・削減は行わないこと。
7.国産農産物の需要拡大にもつながるアメリカの補助的栄養支援プログラム(SNAP)のような食料支援制度を創設すること。
[2022年1月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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