「農民」記事データベース20220131-1490-03

要求で農民と広く結びつき、
組織を飛躍させて
「家族農業の10年」の農政に
転換しよう
(1/6)

2022年1月13日
農民連全国委員会決議

関連/要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(1/6)
  /要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(2/6)
  /要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(3/6)
  /要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(4/6)
  /要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(5/6)
  /要求で農民と広く結びつき、組織を飛躍させて「家族農業の10年」の農政に転換しよう(6/6)


【1】野党統一の発展と農民連の新しい活動ステージを開拓した一年

(1)総選挙結果をどう見るか

 第24回全国大会決議は、2021年は総選挙の年、「農政を国連『家族農業の10年』の方向に転換させるチャンス!」と位置付け、自公政権打倒・政権交代を掲げました。

 農民連の組織原則は、会員の政党支持と政治活動の自由を守ることであり、それは、けっして政治的中立ではないことを「行動綱領」は明記しています。この見地を16年以来の市民と野党の共闘でも、今回の総選挙でも厳格に貫いてきました。

 これまでも農民の要求を実現するために、一致する要求で野党との協力・共同を積み上げてきましたが、今回初めて小選挙区の野党共闘候補と「政策協定」を結んで総選挙をたたかい、全国各地で新しい連帯を広げ、今後の農民連の要求実現活動に生きる新しいステージを開拓しました。

 それはまた、1989年に「特定政党支持」の農民運動から脱して、要求で団結してたたかう農民運動のナショナルセンターとして発足した農民連の役割の発揮でもあります。この点に確信を持って農業を守る政府を実現するたたかいを前進させましょう。

 また、農民連本部はすべての野党共闘候補の選挙事務所に「まやかしの15万トン特別枠」特集の新聞「農民」(21年10月25日付)や米危機を打開する資料を届けるなど、選挙の論戦に貢献し、野党共闘候補からの信頼を広げました。

 選挙結果は、野党共闘勢力が自公勢力を前回比20議席減に追い詰めましたが、政権交代には至りませんでした。

 しかし、候補者を一本化した207小選挙区のうち59カ所で勝利し、惜敗率80%以上の小選挙区は53にのぼりました。さらに、289小選挙区の半数近くで激戦を展開し、文字通り、政権選択の選挙が展開されました。

 いま、野党共闘の結果の評価をめぐって、右派メディアは「野党共闘惨敗」と攻撃しています。しかし、現在の選挙制度の下で政治を変える道は野党共闘しかありません。攻撃は野党共闘を恐れる権力の本音を表したもので、これへの反撃は野党共闘の力を草の根からさらに大きくすることです。

 農民連が野党統一候補と結んだ政策協定は、(1)米の市場隔離、(2)困窮者への食料支援制度、(3)戸別所得補償、(4)消費税5%減税とインボイス中止の4項目です。

 選挙後、農民連は、政策協定を結んで当選した衆議院議員を中心に今後の農民連運動への協力・共同の申し入れ、新聞「農民」購読や「11・25米集会」への参加要請を行い、11・25集会には12名の野党議員が参加しています。政策協定を選挙時だけのものにせず、総選挙で切り開いた成果を生かし、さらに運動を強めましょう。

(2)岸田政権を追い込んだ米を守るたたかいと9・24集会

 全国で燃え広がった米を守るたたかいを総結集した9・24米危機打開中央集会には、5野党(立憲、共産、国民、社民、れいわ)の代表がそろい踏みし、政府買い入れによる「市場隔離」と生活困難者への「食料支援制度」を共通要求として主張しました。

 農民連の集会に5野党が参加して米政策で一致したことは画期的でした。参加した野党代表の多くは16年参議院選挙で「東北の乱」(5県で野党統一候補が勝利)で当選した議員であり、新聞「農民」の読者です。16年以来、農民連も協力してきた市民と野党の共闘の財産が米を守るたたかいで大きく発揮されました。

 9・24集会の成功は、かたくなに市場隔離を拒否する自公政権か、米価対策に踏み出す野党共闘かという対決構図を明確にし、米価問題を総選挙の争点に押し上げる大きな契機になりました。集会はNHK、日本農業新聞、農業協同組合新聞などが報道し、参加した日本共産党の志位和夫委員長の動画には当日1万3千人以上がアクセスしました。

 高まる世論に追い詰められた岸田政権は、選挙目当てのまやかしの「15万トン特別枠」を打ち出し、米価暴落に対する農民の怒りを必死の巻き返しで抑え込もうとしました。

 農民連は、このまやかしを新聞「農民」で暴露し、「野党連合政権で米危機打開を」と運動しました。

(3)政治を動かしたのは全国の運動の力

 (1)運動を進める力になった2200人余の会員拡大

 一昨年から21年3月まで持続化給付金のとりくみを全国で展開し、2200人を超える会員と新聞「農民」読者を拡大し、会員拡大で結成以来30年ぶりの大きな成果を作り出しました。21年11月の会員現勢で前年比846人増、新聞「農民」読者では917人増と、2年連続で増勢を勝ち取ったことは大きな前進でした。

 一定数の現勢を持った組織が全国の拡大運動をけん引しただけでなく、小さな県連でも組織倍加や3ケタ回復など、農民の要求に真正面から向き合い、その実現を通じて仲間を増やすことを多くの組織が体験したことは今後の運動にとって貴重な財産です。

 会員と読者拡大を前進させてきたことが、要求実現や米を守るたたかい、総選挙などでも大きな力になりました。

 (2)20年春からの米を守る運動

 農民連は、20年産米の田植え前の3月以来、米価対策を要求し、「全国いっせいの統一した運動」の力を発揮してきました。

 「米危機」とは、3年連続の米価暴落により、赤字でも米生産を続けてきた自給的農家、離農した農家の農地を引き受けてきた認定農家や集落営農・農業法人が経営難により米作りから撤退・縮小する事態が広範に発生し、米の生産基盤そのものが破壊されることを意味します。その結果、地域の農地は荒れ、コミュニティーは消え、農村の伝統文化の継承も途絶えてしまうことになりかねません。

 現在の米「過剰」の基底には、新自由主義政策による貧困と格差の拡大があり、コロナ禍で一挙に顕在化しました。農民連は、過剰で米価暴落に苦しむ農民がいる一方で、コロナ禍による失業などで「食べたくても食べられない」市民・学生がいることを明らかにし、政治の責任としての食料支援制度創設を要求として打ち出しました。

 「政府の責任による市場隔離」と「食料支援制度」を結んだ提案は、広範な階層、団体に共感を広げ、国民的課題として総選挙の争点に押し上げる力になりました。

 欧米では当たり前の生産費と市場価格との差を補てんする制度や、農民から農産物を買い上げて食料支援する制度を日本で実現する、新たな国民合意を作り出すとりくみが始まったといえます。

 (3)農民連食品分析センターの活躍

 農民連食品分析センターが、グリホサートやネオニコチノイド系農薬の情報発信で注目を集め、農民連全体への信頼を高めています。家族農林漁業プラットフォームやアグロエコロジーへの挑戦は、農民連の仲間だけでなく後継者や新規就農者から強い関心が寄せられ、気候危機・脱炭素社会をめざす社会的実践として期待が寄せられています。

 (4)光を放ったRCEP国会批准阻止のたたかい

 総自由化とのたたかいで、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の国会批准阻止に向け、連日国会前座り込みや議員要請などにとりくみました。

 政府はRCEPについて「重要品目は除外しているので国内農業に影響はない」「影響試算もしない」との立場でした。しかし、農民連は新規就農者のとりくむ主力作物や各県が推進する高収益作物がすべて自由化の対象になることを現場から告発し、東京大学の鈴木宣弘教授の「影響試算」とともに、運動で大きな役割を果たしました。RCEPへの幻想や自由化一辺倒の考え方は日本共産党以外の野党の中にも浸透しており、これを克服するたたかいが求められます。

(4)参院選勝利に向けて――農民の苦悩あるところ農民連あり

 昨年11月19日、農水省は21〜26万トン、4〜5万ヘクタールの新たな減反を打ち出しました。農民連は直ちに反撃するために11・25院内集会・官邸前行動を行いました。総選挙での変化が反映して、交渉で農水省は15万トンが事実上の「市場隔離」であること、本来一年限りの米穀周年供給・需要拡大支援事業が「複数年」にわたることを認めました。

 しかし、現在の新食糧法の下でも、07年の米価暴落時、当時の福田内閣は34万トンを市場隔離し、全農持ち分10万トンを飼料用に処理しました。安倍・菅政治の9年こそ異常なのです。「農業の成長産業化路線」とTPP(環太平洋連携協定)推進の結果、戦後農政の基盤をズダズタにし、18年から主食の供給に国が責任を持たず、生産調整から手を引くという新食糧法違反の状態を放置しています。

 農民連は引き続き、(1)市場隔離の規模の拡大、(2)ミニマム・アクセス(MA)米輸入の削減・廃止、(3)生産費と販売価格の差額補てん、(4)食料支援のための買い上げ・支援制度を求めます。

 備蓄米は「需給操作のために運用することは制度の趣旨に沿わない」とか、自らの経営判断による「需要に応じた生産・販売」という自公政権による自己責任論の押し付けを跳ね返すたたかいをさらに広げなければなりません。

 たたかいを通じて野党共闘をさらに発展させ、参院選での勝利を実現しましょう。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2022.1.31付)
ライン

2022年1月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2022, 農民運動全国連合会