農民連第22回定期大会決議(案)
安倍暴走政治とTPP農政ストップ
農業と農村の復権へ、生産、共同、
仲間づくりを広げよう!
(8/10)
2016年12月15日
農民運動全国連合会常任委員会
(2)ますます重要になる食品分析センターの役割
農民連食品分析センターは2016年春、「分析センター機能強化3000万円募金」を呼びかけました。その目的は、次の点にあります。
(ア)日本の「遺伝子組み換え作物不使用」の表示は混入率5%まで容認されており、EUの0・9%、中国・韓国の1%に比べてあまりにも緩い基準です。混入率をEU水準に引き上げさせるためにも「不使用」とされているものの混入率検査を行うことが求められていました。募金によって、6月に遺伝子組み換え作物の混入割合を検査できる機器を導入し、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」や「家庭栄養研究会」と共同で大豆製品の混入割合の分析を開始しています。
(イ)農水省は16年7月、「蜜蜂被害事例調査」の結果について「水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤(ネオニコチノイド系農薬)が原因である可能性が高い」と発表しました。また、遺伝子組み換え大豆に使用される除草剤グリホサート(ラウンドアップ)の安全性が国際的に問題になり、WHO(世界保健機関)の外部研究機関は15年に「がん発症の疑いがある」と発表しました。
しかし残念ながら、分析センターにはネオニコチノイド系農薬やグリホサートなどの水溶性農薬、ホルモン系の農薬が分析できる機器がなかったために募金を呼びかけ、11月に導入にこぎつけました。準備・調整を経て年明けから稼働する予定です。
(ウ)ただし、募金目標を達成していないため、一部を借入に頼らざるをえませんでした。引き続き、募金目標の達成に向けた努力を訴えます。
(3)増大する輸入食品に対抗し、国民共同の検査運動を発展させよう
政府は15年5月、ネオニコチノイド系農薬の残留基準を国際基準よりも大幅に緩和しました。大豆のグリホサートの残留基準も含め、世界的に使用禁止や基準強化が進んでいるなかで基準緩和を進めれば、日本が危険な農産物の「ゴミ捨て場」になるという懸念の声が上がっています。特に、アメリカでは、牛や豚の餌として大量に使用されている大豆に、成長を促進する抗生物質をたっぷり混ぜて給与しており、牛や豚の肉の残留農薬分析は不可欠です。
農民連食品分析センターは、こうした動きに対抗するため新たな分析機器を活用した「輸入食品の分析運動」を呼びかけます。あわせて、農民連会員の皆さんに、自ら生産した農産物の残留数値を明らかにし、国産の優位性・安全性をアピールするための分析運動への協力を呼びかけます。
7 安倍暴走政治とのたたかい
憲法9条を乱暴に破壊し、戦争できる国家への暴走、格差と貧困を広げ、年金・福祉を削減する暴走、農業破壊の暴走など、安倍政権の暴走が極まっています。これは安倍政権の強さの表れではなく、反国民的悪政が国民に包囲されて追い詰められ、強権政治をもってしか維持できなくなっている表れです。同時に異常な対米従属と大企業中心の政治の破たんでもあります。
今期の最重点課題の一つは、総選挙で国民と野党の共同を発展させて安倍政権を打倒することです。そのために、安倍政権がたくらむ悪政の一つひとつに、国民的たたかいを組織し、合流させることが求められています。
安倍首相が任期中の改憲を狙っている中で、政府与党は、国会の憲法審査会を再開するなど、改憲のたくらみをいよいよ強めています。彼らがねらう憲法は、「自民党改憲案」に示された立憲主義を否定し、基本的人権の制限を狙う“暗黒憲法”です。改憲を阻止するために、「憲法共同センター」「戦争させない9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に結集して圧倒的な世論と行動で安倍内閣を包囲するために力をつくしましょう。「農林9条の会」の運動に連帯し、全ての都道府県と地域に「会」を発足させましょう。
普天間基地の名護市辺野古への移転や、東村でのオスプレイ配備ヘリパッド建設に反対し、オール沖縄と連帯してたたかいます。
国連が核兵器禁止条約締結交渉開始決議を採択し、核兵器のない社会への歩みを大きく開始したことは、唯一の被爆国である日本の国民にとって大きな前進であり希望です。一方、この決議案に日本政府がアメリカなど、核保有国とともに反対したことは断じて許されません。核兵器廃絶を実現するためには日本国内での世論と行動が決定的に重要です。「被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」を大きく広げましょう。
農民の要求を実現するためには、アメリカいいなり政治のもとになっている日米安保条約を廃棄し、大企業の利益を最優先にする政治の転換が不可欠です。政治革新のための3つの共同目標を掲げる革新懇運動の発展をめざし、全国でも地方でも奮闘します。
要求を実現し政治を変えるうえで首長選挙が重要です。要求と政策の一致を前提に野党共闘の枠組みを生かして候補者を擁立し、地方から政治を変える流れを作りましょう。
17年夏の東京都議選は国政に重大な影響をあたえます。また、各地で中間地方選挙がたたかわれ、野党共闘による議員選挙になる地域も想定されます。農民連として、大衆組織の原則を堅持するとともに、要求と政策の一致を基本に、積極的に野党共闘を発展させる立場で対応しましょう。
V 農村で多数をめざす組織づくり
1 多様な要求実現と結んだ組織拡大のとりくみ
(1)会員拡大について
重税から暮らしと経営を守る運動、高すぎる国保税や後期高齢者の保険料、固定資産税の軽減、農業労災、新規就農者支援、地域の条件を生かしたものづくりや加工、学校給食、多様な販路の拡大、直売所などのとりくみが全国で展開されています。
こうした要求運動と結んだ拡大運動では、前大会以降の2年間で世帯、女性・青年会員、団体加入を含めて新たに会員を迎えました。新たに迎えた仲間のすべてが切実な要求実現の運動を通してのもので貴重な成果です。同時に、本部への世帯会員の登録は、2015年度、16年度ともに数百名減少し、そのほとんどが死亡や離農、世代交代による退会です。
2015年度に前年より組織登録を前進させたのは、福島、茨城、埼玉、兵庫、奈良、島根、広島、徳島、香川、佐賀、熊本、鹿児島の12県連、2016年度は福井、岐阜、三重、奈良、島根、岡山、徳島、香川、宮崎の9県連です。2年連続で前進したのは奈良、島根、徳島、香川の4県連です。
前回の大会で前進する組織の共通する4つの教訓――(1)要求を鮮明にしての大量宣伝、(2)会員・組合員に依拠した紹介活動、(3)要求実現に強い役員・専従者の育成、(4)中心的な幹部の熱意と決意――を明らかにしました。
この4つの教訓に基づいて奮闘した県連では、専従者会議の毎月開催を基本に据えて、専従者のやる気を引き出し、税金対策部員養成講座には民主的な地方議員にも参加してもらい、農民連の税金運動のイメージを持ってもらって対象者を紹介してもらいました。そして春の運動では、全戸ビラを配布して「なんでも相談会」も小まめに設定して仲間を迎えています。端緒的なとりくみですが、学習を基礎に要求実現の力量を高め、まわりに打って出ています。
(2)読者拡大について
めまぐるしい情勢のなかで新聞「農民」の報道は、日々の運動や悪政とのたたかいを進める重要な役割を果たしてきました。米価暴落の現場の声や実態を伝え、TPPに反対する草の根の運動を伝える報道は、全国の農民を励まし、運動を広げる大きな力になりました。TPP協定の批准ストップ、農業・農協「改革」問題や戦争法廃止、原発ゼロなどでも新聞「農民」の果たした役割は大きいものがありました。
この間の教訓は、農協や農業委員、農業関係団体・消費者団体に一定の読者を持っていることが運動を前進させる大きな力になっていることです。読者は会員に次いで農民連運動を支え、広げる大切なパートナーです。
しかし、新聞「農民」の本部への申請は、大幅に後退しています。
新聞「農民」は、農民連の財政を支える大きな役割をもつとともに、その後退は農民連の影響力の後退を意味します。
拡大の担い手を役員だけでなく会員にも広げ、会員が1部、2部と読者を増やしましょう。農協の役職員、農業委員など農業関係者に購読を広げましょう。TPPなどの運動で結びついた方々に「運動を進める必読の新聞」として購読を呼びかけましょう。「全員購読が原則」の立場から未購読会員をなくすための具体的な手立てをとりましょう。
(新聞「農民」2016.12.26付)
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