農民連第22回定期大会決議(案)
安倍暴走政治とTPP農政ストップ
農業と農村の復権へ、生産、共同、
仲間づくりを広げよう!
(2/10)
2016年12月15日
農民運動全国連合会常任委員会
3 たたかいの重点と展望
(1)国民と野党の共闘で安倍政治を終わらせる展望を切り開こう
今期のたたかいの大きな柱は、国民と野党の共闘をさらに発展させ、自公とその補完勢力を少数派に追い込み、安倍政治を終わらせることです。これは、暴走政治をストップするにとどまらず、自民党政治そのものを終わらせ、新しい日本に踏み出す大きな一歩となり、農民の要求実現と農業の展望を開くたたかいです。
(2)「アベノミクス農政」から食糧主権へ
家族経営を否定する「アベノミクス農政」は、日本農業を根底から破壊する戦後最悪の農業破壊攻撃です。安倍政権打倒とアベノミクス農政を転換するたたかいを一体化して広げ、家族経営を基本に、食糧主権に立脚した農政を実現する国民的たたかいを発展させましょう。
(3)生産と地域を守る運動
TPPを前提に、農民に生産からの撤退を迫るアベノミクス農政改革に対し、地域の仲間と力を合わせて生産を守ることは、何よりの反撃です。また、生産を守ることは、地域の活性化と循環型の地域作りの最も重要な課題です。「ものを作ってこそ農民」の真価を発揮し、多様なとりくみをさらに前進させます。
農村は豊富な自然資源など、可能性を秘めています。埋もれた資源を掘り起こし、再生可能エネルギーの生産などに挑戦し、農山村のコミュニティーを守り再生する先頭に立ちましょう。
(4)農村での多数派をめざした組織の発展
いま、多くの農民が営農を守る要求とともに、庶民への増税・社会保障の削減など、暮らしと平和を守る要求を高めています。生産と流通、税金や社会保障など農民のあらゆる要求に応えられる組織への発展をめざし、農村での多数派をめざしましょう。
国民と野党の共闘を発展させた衆院小選挙区でのたたたかいは、単組・支部が担うことになります。単組・支部・班が農民要求の実現と地域の共闘を担えるような、自転できる組織をめざしましょう。「農業でがんばる人はみな農民連へ」を合言葉に、大きな構えで全農家に働きかけ、あらゆる運動に組織づくりを貫いて会員と新聞「農民」読者拡大を大飛躍させましょう。
4 TPP問題の現局面とたたかいの展望
(1)トランプ次期大統領の「脱退」表明で発効不能になったTPP
トランプ米次期大統領は11月21日、就任初日に着手する優先政策6項目の最優先項目として「TPPからの脱退」をあげました。トランプ氏の方針はきわめて明快で、安倍首相が期待する「変心」の余地はまったくありません。
TPPは、GDP(国内総生産)比率が85%を占める6カ国が承認しないかぎり発効しないこと、アメリカのGDP比率が60%であることは厳然たる事実であり、TPPは、その規定によって産声をあげる前に死につつあります。今後、紆余曲折も予想されますが、TPPを破たんに追い込んだ力は、アメリカ・日本を含む世界の民衆の力であることはまぎれもない事実です。
また万万が一、トランプ氏が「変心」し、公約を裏切ってTPP推進に転ずるとすれば、それは再交渉を通じてTPPをはるかに上回る大幅な対米譲歩を迫るものにならざるをえません。
TPPの延命をはかる安倍政権の画策をやめさせること、そして何よりも安倍政権そのものの命脈を絶つたたかいが求められています。
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「TPP批准は許さない!」とトラクターでデモ=11月15日、都内 |
(2)死に体のTPPにしがみつき、 危険で無責任な暴走にのめり込む安倍政権
安倍政権がこれほどまでにTPPにしがみつく背景にあるのは、何でしょうか?
(1)アベノミクスの行き詰まりを崩壊目前のTPPにしがみついて打開する以外に術がない
第1に、TPP促進は破たんしつつあるアベノミクスの看板政策であり、TPPにしがみつく以外に「成長戦略」を進める術がないからです。暴走は、この政権の「強さ」を表すものではなく、「安倍政治の行き詰まり」、国民との矛盾の深刻さを示しているものにほかなりません。
(2)財界・多国籍企業奉仕の反歴史的な暴走
第2に、「トランプ現象」やイギリスのEU離脱の底流にあるのは、格差と貧困の拡大、国内産業の空洞化などグローバル資本主義の深刻な矛盾です。ところが安倍首相は、11月のTPPとAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で「保護主義とのたたかい」を呼びかけ、「自由貿易の旗手」を気取って、「TPPの世界化」――TPPをモデルにしたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)やFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)、日・EU間FTA、日中韓FTAなどの大型FTA促進を狙っています。
さらに安倍政権は、日本にチーズなど乳製品や豚肉、パスタ、チョコレートなどでTPPを上回る自由化を迫っているEUとの間でFTAの年内「基本合意」をめざして暴走にのめりこんでいます。
こういう安倍政権の暴走は、財界・多国籍企業奉仕の政治そのものであり、世界の流れに逆行するものです。それは、WTOや国際投資協定など、グローバル化を推進する国際交渉・協定がTPPで5連敗目を迎えている世界史的文脈を見ることができない反歴史的な暴走です。
(3)日米FTA――「アメリカ第一主義」の餌食に
トランプ次期大統領の要求は「TPPを離脱し、2国間FTAをめざす」であり、「日本の負担を増やせ」です。「アメリカ第一主義」のトランプ流FTAは、TPPをさらに上回る危険なものになることは必至です。
(ア)TPPが発効しなければ、牛肉関税は日豪FTAで19%に下がるのに対し日米間は38%のまま、TPP版SBS(売買同時入札)米の特別枠はゼロになるなど、アメリカは「不利」の状態に陥ります。日米FTA交渉に入れば、アメリカは、この是正を迫るだけでなく、12カ国間交渉のもとで、乳製品や牛肉などの対米輸出国の手前、アメリカが「遠慮」せざるをえなかった農産物の市場開放を、日本に強引に迫ることは必至です。
(イ)ISD(投資家対国家紛争解決)条項とアメリカ企業の追加要求受け入れのための「調整機関」の設置条項を明確に盛り込むよう要求される危険があります。
(ウ)遺伝子組み換え食品の表示義務廃止を含む食の安全、医療・医薬品・保険などに対する規制の撤廃・緩和が公然と迫られることは必至です。
トランプ流「2国間FTA戦略」は日本を最大のターゲットとし、TPPを出発点に、従来の日米構造協議やTPP交渉参加前後の二国間協議などを通じた対日要求の総決算を求める“日米版TPP”の様相を呈するものになることは明らかです。安倍首相は、日米FTA交渉を明確に否定するよう求めた与党議員の質問に対し、拒否を明言するのを避けたうえでTPP可決を強行しましたが、これはアメリカの思う壺(つぼ)にはまる危険で無責任な暴走といわなければなりません。
(新聞「農民」2016.12.26付)
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