農民連第22回定期大会決議(案)
安倍暴走政治とTPP農政ストップ
農業と農村の復権へ、生産、共同、
仲間づくりを広げよう!
(3/10)
2016年12月15日
農民運動全国連合会常任委員会
(3)TPPからの離脱・日米FTAを拒否する運動を広げよう
たたかいは新たな段階に入りました。農民連は、この6年間のたたかいで築き上げてきた幅広い共同の輪をさらに広げ、TPPからの離脱を要求し、日米FTAを断固として拒否するたたかいに全力をあげます。
「TPP抜きのTPP対策」「日米版TPP対策」というべきアベノミクス農政のもとで、攻撃はますます凶暴の度を加えることは必至ですが、農民と国民の要求はいよいよ切実になり、矛盾が噴き出して、暴政が行き詰まることは不可避です。農民連は、農民と農業・農協関係者の不安と不満を共有し、無数の要求を掲げてたたかいます。
(1)TPPからの離脱・日米FTA拒否を求める運動の意義
農民連は安倍政権と国会に対し、TPP協定の国会承認を取り消し、TPPからの離脱と日米FTA拒否を宣言することを要求してたたかいます。
それは、国会決議に反して約束させられた農林水産物の市場開放や食の安全、医薬品・薬価、ISDSなどなど、広範な国民の生活を直撃するTPPの亡国的規定を無効化し、今後、理不尽な市場開放・規制撤廃要求を拒む足場になります。
同時に、安倍政権に対し、「TPPの世界化」を狙う大型FTA促進の策動を中止することを要求してたたかいます。
いま、世界に必要なのは、平等・互恵の精神に立ち、経済主権と食糧主権を尊重して、食の自給と安全、国民の命と健康、環境と国土を守る公正な国際経済環境を作ることであって、これらを多国籍企業の利潤追求や「アメリカ第一主義」の餌食にするTPP型グローバル協定では断じてありません。
(2)これまでの幅広い共同の成果をいかし、運動のネットワークを広げる
(ア)「TPPを批准させない!全国共同行動」、食健連などとの共同・協力をさらに強め、これまでの幅広い共同の成果をいかし、運動のネットワークを広げます。
(イ)TPP反対の運動を上回る学習・宣伝・集会・シンポジウムなどにとりくみます。
(ウ)TPPの息の根を絶つための運動やRCEPやFTAAP、日・EU間FTA、日中韓FTAなどの大型FTA、さらにWTOに対抗する運動など、たたかいの舞台は世界に広がります。国際農民組織ビア・カンペシーナとの連携を強め、国際連帯の運動を発展させます。
(3)国民と野党の共同を発展させる先頭に立つ
私たちの願いと安倍政権の暴走が両立しえないことは明白です。農民連は、平和と立憲政治の回復、脱原発、個人の尊厳を求める運動に合流し、安倍政権打倒、TPPからの離脱・日米FTA拒否を求めるネットワークを広げ、国民と野党の共同を発展させて、衆院選挙で自公とその補完勢力を少数派に追い込むために全力をあげます。
5 TPP・経済政策の破たんをとりつくろうアベノミクス農政の暴走とのたたかい
アベノミクスは、1の矢(金融緩和)、2の矢(財政出動)を撃ち尽くし、崩壊が明らかなTPP発効をテコにした3の矢(成長戦略)にしがみつくしかない末期症状の様相を呈しています。
TPPを外圧にして戦後農政の枠組みを解体する狙いでスタートしたアベノミクス農政は、全農(全国農協連合会)攻撃に代表される農協解体攻撃や価格保障制度解体など、ブレーキのない暴走状態に突入しています。この暴走は、TPPの破たんのもとで、片肺飛行で究極の農業・農協・地域つぶしを凶暴で反民主主義的なやり方で強行せざるをえないところに特徴があります。
その切り口は“農業生産資材を1円でも安く、農家手取りを1円でも多く”の美名で、農協・価格保障制度・農地制度の解体を狙うものです。
(1)農協解体を狙う集中攻撃
資材高と価格暴落の全責任を農協、とくに全農に押しつけ、結局は“資材は限りなく高く、手取りは限りなく低い”状態にすることと、信用・共済の140兆円農協マネーの奪取と農協つぶしを狙っています。農協解体は、農業・農協・地域つぶしにかかわる大問題です。
(以下、「最初の要求」は、規制改革推進会議農業ワーキンググループ〔農業WG〕の11月11日の提言、「最終」は自民・公明党「農業競争力強化プログラム」〔11月25日〕を指します)。
(1)生産資材共同購入からの撤退を要求
(ア)生産資材の共同購入を「生産資材メーカーの販売代理行為」と決めつけ、全農に資材共同購入事業から「1年以内」に撤退という極論をぶつけ、最終的には2年半以内に「妥協」したように見せかけています。
(イ)営農指導と結びついた農協系統の共同購入は肥料で74%、農薬で60%、農機で50%のシェアを占めています。こういう共同の力が価格交渉力の源ですが、提言はこれを無にしろと要求しています。農家や単位農協がバラバラに交渉したら、高い資材が押しつけられることは必至です。
(ウ)資材価格が高いのは独占価格が基本的な原因です。“資材を1円でも安く”というなら、農機・肥料・農薬の独占企業のコントロールこそ必要です。韓国の2〜3倍という肥料・農薬価格は全農の手数料が原因ではありません。
(エ)全農の資材製造・購買部門を譲渡・解体し、「少数精鋭」の新部門に移行しろと強要するのは、アグリビジネスへの事業売り渡し、農協労働者のリストラを狙うとともに、近い将来、全農を株式会社化させ、内外のアグリビジネス(穀物・肥料・農薬・種子メジャー)が乗っ取ることをねらったものです。
(オ)自民・公明両党の提案も規制改革推進会議も「地方公共団体中心の主要農作物種子法を廃止し、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する」ことを要求しています。現在、道県立試験場が地域の条件に合った米や小麦などの新品種開発を旺盛に行っていますが、提案は、日本の種子市場をモンサントやデュポンなどのアグリビジネスや国内大企業の支配にゆだねようとするものです。
(2)農産物共販の転換
(ア)農業ワーキンググループの金丸座長は「全農は、中間流通(卸売市場、米卸業者など)中心の販売体制を改め、消費者や需要家に直接販売できるよう販売力を強化するとともに、強力な自前の販売網を構築すべき。このため、全農自らがリスクを取り、委託販売から全量買取販売へ1年以内に事業転換すべき」と要求していました(農業WG、11月11日議事録)。
(イ)「全量買取」「1年以内」は削除されたものの、買取販売への移行が明記されました。全農が持てあまして価格暴落の引き金になるか、リスクを避けるために農家から買いたたくか、いずれにしても「1円でも安く」を求める大手流通資本の餌食になることは必至です。価格保障制度を解体しながら、農産物価格暴落の全責任を農協系統に押しつける狙いは明らかです。
(ウ)自民・公明両党の提案は、米卸業界などの「抜本的な合理化」「卸売市場法の抜本的な見直し」を要求する一方、買いたたきを行っている大手量販店には「配慮」を求めるにとどめています。農協解体攻撃にとどまらず、中小流通業者に対する攻撃として重大です。
(3)狙いは信用・共済の140兆円農協マネーと地域農協つぶし
(ア)「最初の要求」は農協の信用(金融)事業つぶしをねらい、「信用事業を営む農協を、3年後を目途に半減させる」こと、北海道の組合員勘定(クミカン)制度の廃止を要求していました。
(イ)しかし、単位農協の平均的な部門別損益は、信用・共済が5・7億円の利益を生んでいる一方、営農指導を含む経済事業は2億円の損失になっており、信用・共済事業の利益で「総合農協」が維持されているのが実態です。
(ウ)最終的に「3年後半減」も「クミカン廃止」も消えましたが、安倍首相は、11月28日の規制改革推進会議で、全農改革の他に「農協には多くの課題がある。規制改革推進会議としても改革の進捗をしっかりフォローアップしていただきたい」と指示し、内閣府も「信用事業、クミカンについてはフォローアップの中で取り扱う」と説明しており、火種は残っています。狙いは140兆円の農協マネーと、地域農協つぶしです。
(新聞「農民」2016.12.26付)
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