農民連第22回定期大会決議(案)
安倍暴走政治とTPP農政ストップ
農業と農村の復権へ、生産、共同、
仲間づくりを広げよう!
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2016年12月15日
農民運動全国連合会常任委員会
U 各分野のとりくみと今後の方針
1 産直運動のさらなる発展をめざして
アベノミクス農政改革の攻撃に立ち向かうとともに、生産の支え合い、共同の力をいかした販路の確保など、これまで農民連が果たしてきた役割をさらに発展させることが求められています。特に、消費者と共同して生産を守る運動、生産した作物を多面的に消費者に届ける運動、地場の中小流通業者と提携した運動など、産直運動をいっそう発展させることが求められています。
(1)生産と結んだ多様な産直運動の発展
安全・安心な農畜産物の生産が各地で展開され、高齢者や女性の力が生かされる直売所やインショップ、学校給食への納入など地産地消や産直が地域での生産の維持と活性化に貢献しています。地域の食品加工・醸造など業者と提携したとりくみも各地で広がっています。「ものを作ってこそ農民」の原点に立ったとりくみを強化しましょう。
安全性・品質・収量など栽培に関する先進的な技術の継承・発展も喫緊の課題です。全国各地で実践されているモノづくり講習会や情報交換、先進技術の調査などにとりくみます。
世界の大豆は75%以上が遺伝子組み換え大豆ですが、国産はすべてが非遺伝子組み換えです。国産大豆の生産拡大、大豆トラストのとりくみ、飼料用トウモロコシ(イアコーン)など、多様な生産と新たな販路の確保による経営の安定につなげるためのとりくみを大いに進めましょう。
(2)新婦人と農民連の「産直運動の新たな共同目標」の実践を
農民連と新婦人の20数年の産直運動の積み重ねを生かし、今日の食と農をめぐる情勢や震災・原発事故による様々な困難を乗り越えるために「産直運動の新たな共同目標」が合意されています。
15年から農民連とふるさとネットワークが共同し、新婦人本部との定期協議が再開され、「産直わくわくニュース」の発行、毎月の産直企画提案が行われています。産直組織が共有し、とりくみを前進させるための話し合いや学習・交流を強めましょう。田植え・稲刈り交流以外にも工夫をこらした畑や里山での交流企画など多様な企画にとりくんでいる都道府県連、産直組織の実践に学び、運動を強化します。
(3)地産地消による学校給食無償化を求める運動
地域の安全な食材を使った生産者の顔の見える学校給食こそが本来の姿です。地場産農産物を使った学校給食の実現を全国共通課題に位置づけて運動を広げ、関係者・学校との懇談、学習会やシンポジウムなど、住民ぐるみの運動に発展させましょう。
(4)在来種を守り、引き継ぐ運動
多国籍企業による遺伝子資源や種子の独占など、世界規模で生物多様性の破壊が進んでいます。国際連帯で国際的な規制強化を求めるとともに、生産現場で生物多様性に配慮した生産の努力を強めましょう。在来種は、地域資源であり、活用方法によっては地域活性化につながります。在来種を守り、販路や加工品をつくる運動を強めましょう。
(5)市場を守る運動
生鮮食品の流通の要を担う卸売市場は、流通の大型化、直接取引の拡大、規制緩和等で、市場経由率、取扱金額ともに年々低下し、関連業者の経営にも影響を与えています。こうしたなかでも水産物の5割強、青果の6割(国産青果物では9割)が市場を経由しており、セリ原則による公平・公正な価格形成機能を維持しています。
アベノミクス農政の市場法見直し・規制緩和は、卸売市場法によって守られて来た公平・公正な価格形成機能を奪い、差別的取引禁止・受託拒否の原則を投げ捨てて出荷者の選別を可能にし、契約取引による大手量販店の系列化と、公設市場の配送センター化を狙っています。全農の委託販売への攻撃は、全農を大企業に系列化させるものです。
現在、各地で農水大臣認可の「中央卸売市場」から、地域の実情に応じて自由に運営できる知事許可の「地方卸売市場」への転換が進んでいます。こうした市場では、地元農産物の集荷に寄与でき、直売所の品ぞろえが豊かになることなどから、JAの直売所との提携が進み、地元農産物の集荷に様々な模索も始まっています。地産地消を発展させる観点から、こうした卸売業者と積極的な交流・懇談を進めましょう。
2 原発ゼロへ 再稼働阻止、完全賠償を求め、農村を再生可能エネルギーの拠点に
(1)原発推進・復活政策の行き詰まりと損害賠償のたたかい
(1)原発再稼働は、政府・電力事業者の思うように進んでいない
原発再稼働反対は、どの世論調査でも5割を超え、揺るぎない国民世論になっています。こうした国民の声を無視して安倍政権は鹿児島県・川内、愛媛県・伊方を再稼働させたものの、福井県の大飯3・4号機、高浜3・4号機は「運転差止判決」によって再稼働できない状況のままです。
「11・13福島集会」で浪江町の馬場有町長は「福島原発事故の究明、検証がなされないままの再稼働などありえない」と力説し、鹿児島・新潟県知事選で原発再稼働に慎重な知事が誕生したことも再稼働を許さない大きな力になっています。
政府は、2014年エネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」とし、その割合を20〜22%としていますが、その基礎になる原発の稼働予定リストが作れない状態であり、原子力発電依存計画は破たんしています。
(2)原発事故の損害賠償を求める運動
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」――福島原発訴訟では、国・東電の責任の明確化を求めています。原子力損害賠償法は、事故が起きたら責任の有無を問わずに賠償する「無過失責任」に依拠していますが、東電は今回の事故は「想定を超える津波」が原因という立場を崩さず、賠償責任を逃れようとしています。
国・東電は5年で賠償を終了する想定から、次々に賠償打ち切り政策を出してきました。しかし、事故から6年近くが経過しても「収束」にはほど遠く、8万6千人もの人々が避難生活を強いられています。避難指示解除と賠償の打ち切りは、被害者に新たな苦しみを押し付けて、福島を切り捨てることにほかなりません。
9月21日に東京電力は、17年1月以降の農林業の営業損害を「2倍相当額」で終わりとする賠償の素案を提示しました。避難区域での農業の再開が遅々として進まない中での素案の提示は、事故の加害者としての責任を微塵(みじん)も感じていないことを示す許しがたいものです。
素案は、原発事故賠償の最後の砦を突き崩し、福島県の復興に大きなダメージを与えるものです。これに対して、会津地方全自治体の首長・議長でつくる会津総合開発協議会が国、東電に素案反対の要望を突き付け、JAグループや福島県損害対策協議会も見直しを申し入れるなど、県民ぐるみで撤回させる運動が広がっています。
(2)農村でエネルギー自立をめざす
現在、福島県農民連が関わる太陽光発電の設備容量は6000キロワットを超え、茨城県農民連や長野県農民連など全国各地で太陽光発電設置に挑んでいます。買取価格が下がったとしても、設置コストが下がっており、事業としての採算は十分確保できます。バイオマス発電や風力、小水力発電の可能性も農村にこそあります。農民連組織が自治体や市民団体との協同をはかりながら事業推進の要の役割を果たすことが求められています。
ヨーロッパの再生可能エネルギーの半分は「森林」です。日本は世界有数の森林大国ですが、薪の生産量はフィンランドの千分の1にすぎません。日本が森林資源を活用できれば、エネルギー分野でも化石燃料を大幅に減らすことができます。農村は食料、エネルギー生産基地であり、食料、エネルギー自立地域への転換の鍵は森林資源の活用にかかっています。
「エネルギー自立地域」をつくっていくうえで求められるのは、自然の手入れ、自然の恵みを無駄にしないための国土の保全です。多面的機能支払制度や中山間地直接支払制度などを積極的に活用し、制度の充実を求めていくことが求められます。
(新聞「農民」2016.12.26付)
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