「農民」記事データベース20120206-1007-06

全国委員会への報告(2/5)

2012年1月19日
農民連常任委員会 笹渡義夫

関連/全国委員会への報告(1/5)
  /全国委員会への報告(2/5)
  /全国委員会への報告(3/5)
  /全国委員会への報告(4/5)
  /全国委員会への報告(5/5)


II 1年間の運動の教訓とのたたかいの方針

 1、2012年のたたかいの柱

 “スーパーイヤー”といわれる2012年は、アメリカや韓国などで大統領選挙がたたかわれ、国内では解散・総選挙をはらんだ情勢が展開されるなど、国内外とも激動の1年になります。

 そして、グローバリズムによって助け合いや協同の思想、役割が否定されるなかで、国連が2012年を「国際協同組合年」として国際的に協同組合への啓蒙を呼びかけていることも重要です。

 こうした波乱と激動を国民のたたかいで打開する2012年の運動の柱は、(1)草の根からの共同を構築してTPPへの参加や農業破壊を許さないたたかいを広げる、(2)国民の暮らしと経済を破壊する消費税増税を阻止する、(3)原発ゼロと再生エネルギーへの転換、原発被害の全面的な賠償、被災地の復興を勝ち取るたたかいにあります。

 2、TPPへの参加を阻止するたたかい

(前号に掲載した真嶋報告をお読み下さい)

 3、命をつないだ救援活動、被災者本位の復興めざして

  (1)命の糧を生産する農民組織の真価を発揮した救援活動

 被災地では、農民連役員や多くの会員自身が地震と津波で家屋や農地を奪われ、放射能汚染でふるさとを追われた被災者です。自らの被災を乗り越えて全国と心ひとつに救援活動に奔走した仲間の奮闘は、「農民の苦難あるところ農民連あり」という農民連の存在を象徴するものであり、多くの被災者と全国の仲間を勇気づけるものでした。

 避難所や仮設住宅での継続した炊き出し、「青空ゼロ円市」などの創意ある活動、避難所で要望を聞き取り津波で流された洗濯機や車、軽トラックを提供するなど、きめ細かい救援が行われたことも特徴です。

 牧草が汚染されて使えなくなった福島県の酪農家に、北海道の仲間が全道から大型トラック20台分もの牧草や麦わらを届けるという、感動と連帯感あふれる取り組みも展開されました。こうした取り組みは、運賃補助の要求を渋ってきた政府を動かし、不十分ながら実現したことも大きな成果でした。

 救援募金は、被災した各県連やかかわりの深い被災自治体に届けるとともに、救援物資の配送や炊き出し、ボランティア活動、復興のための活動、原発事故による賠償請求運動の費用として大きな支えとなりました。

 これからも、全国組織のネットワークをいかし、被災した仲間や農家が営農を再開できるように、あらゆる援助を強めます。

  (2)惨事に便乗した大企業の横暴を許さず、被災者中心の復興をめざして

 復興をめぐる焦点は、災害を絶好の口実にした大企業のもうけのための復興策を許さず、被災者の生活の再建と生業(なりわい)を取り戻すかどうかにあります。被災を「創造的破壊」と称して農民から農地を、漁民から漁業権を奪い、住民を地域から締め出して大企業のもうけのために開発するねらいとは断固としてたたかいます。

 同時に、住宅の建て替え助成の大幅な拡大、国の全額負担による農地復旧や倉庫、用水などの農業施設、農地の除塩、漁港再建や加工・冷凍などの漁業関係施設の復旧、二重ローンの解消、生活再建支援などを実現する運動を強めます。

 4、原発事故の損害賠償と原発ゼロを要求するたたかい

  (1)全面的な賠償を要求して

   (1)東電と政府を揺り動かした賠償請求運動
 農民連は、関係県連と連携して政府に対策を要求するとともに、東京電力への損害賠償請求に全力をあげてきました。損害を引き起した原因企業である東京電力は原発事故を人災と認めず、賠償をめぐっても加害者意識のない理不尽な対応に終始しました。政府の「損害賠償紛争審査会」がまとめた指針は、賠償の対象を狭く線引きしたために、東京電力に“賠償しない口実”を与える不十分なものになっています。

 これに対して、東京電力への抗議と賠償要求、政府への対策を要求した4月26日、8月3日、12月26日などの行動は、マスコミにも注目され、東京電力を国民世論で大きく包囲する契機となりました。また、損害を受けた被災者を大いに激励しました。

 なかでも、福島県北農民連が桃とあんぽ柿の全面賠償を勝ち取ったことは画期的で、東京電力の請求書の枠にとらわれず実害を補償させた点でも大きな成果でした。こうしたたたかいと実績は、「東京電力への賠償請求は農民連で」という信頼を広げ、福島、宮城、茨城、長野などで会員拡大を前進させていることは重要な成果です。

   (2)今後の賠償請求運動
 東京電力は、損害が明らかであっても請求しなければ決して支払いません。各県の「賠償協議会」では賠償の範囲や方法が限られており、出荷制限以外は受け付けを終了するところさえあります。「たたかわずして賠償なし」、農民連の出番の情勢です。

 切実な賠償請求要求で会員拡大を飛躍させるために、「春の大運動」と結んで、損害を受けたすべての農家に「農民連に入って一緒に損害賠償を請求しよう」の大宣伝、対話を広げ、「相談会・説明会」もきめ細かく開催します。全国規模やブロックなどでの運動の交流も行います。

   (3)放射能汚染を乗り越えて生産を守る運動
 原発事故は、シイタケ原木の主産地である福島県から全国への供給を困難にし、原木価格の高騰などでシイタケ農家に重大な打撃をもたらしています。牧草などの粗飼料も同様です。こうした困難を乗り越えて生産を維持するために、賠償請求や国・自治体に対策を要求するとともに、森林組合や畜産団体とも協力して原木や粗飼料を融通しあう運動を進めます。

  (2)放射能汚染対策の運動

   (1)「放射線測定器導入5000万円募金」の取り組み
 原発事故による放射線が、食の安全や土壌、住環境、健康をおびやかしている中で、農民連食品分析センターに放射線測定器を導入することを決め、「5000万円募金」を呼びかけました。これには大きな反響が寄せられ、短期間に募金目標を達成することができました。

 募金を力に、シンチレーション測定器を8月から順次3台導入し、そのうちの1台は福島県連に配備しました。ゲルマニュウム測定器の納品は、新年早々に配備できる見通しとなっています。

 測定器の導入以来、野菜やコメ、土壌などの検査検体は数千件におよび、食の安全チェックに大きな役割を果たしています。

 導入募金運動の最大の成果は、農民連が放射能汚染に立ち向かう機能を持ったことにとどまらず、運動をともに進める広大な仲間とすそ野を切り開いたこと、農民連の社会的存在感をさらに拡大したことにあります。この成果は、今後の農民連運動を発展させる土台となるものです。

   (2)放射線測定器をいかした運動
 食品分析センターの放射線測定器が、組織内外の検査ニーズにこたえるとともに、専門家や医療機関と共同して、健康や環境、除染など多面的に活用します。こうした活動を通して、政府に原発ゼロを決断させる運動にも貢献します。

 引き続き、食品分析センターにふさわしい組織のあり方を探求します。

   (3)安全な大地と環境を取り戻し、いのちと健康を守る対策を要求して
 政府と東京電力に、あらゆる知見を結集して汚染された大地と環境を取り戻すことを要求します。汚染地域住民の無料による健康管理対策の実施を要求します。

 政府は、国民の食の安全への不安の高まりのなかで、500ベクレル(飲料水、牛乳・乳製品は200ベクレル)としてきた食品中のセシウム暫定規制値を、今後引き下げようとしています。規制値の引き下げは当然ですが、これによって作付け不能地域がさらに広がることが予想されます。こうした地域に対する万全な対策を要求します。

  (3)原発ゼロと再生エネルギーへの転換を要求して

   (1)原発ゼロを政府に迫る運動
 原発事故を契機に、原発ゼロを要求する運動が日本全国に広がり、原発依存から再生エネルギーへの転換を求める世論は8〜9割に及んでいます。しかし野田政権は、原発利益共同体の利益を優先して原発推進政策に固執しています。

 昨年12月に結成された「原発をなくす全国連絡会」を軸に多様な行動と共同を広げるとともに、草の根から「原発なくせ」の一点での国民的共同を発展させ、政府に原発推進政策を断念させるために全力をあげます。

 中央、地方で計画されている「3・11メモリアル集会」(仮称)を、復興と原発ゼロを要求する節にするために力を尽くします。

   (2)再生エネルギーへの転換で農山漁村の再生を
 再生エネルギーの先進国であるドイツでは、市民や農民が再生エネルギーの担い手となり、高い環境や自治意識が発揚され、経済的にも循環型となって潤っています。国内でも、自治体ぐるみの再生エネルギーの生産で町をおこし、自治体財政にも貢献している事例が数多く生まれています。

 原発ゼロを政府に決断させて再生エネルギーに転換させる運動は、農山漁村の再生と深く結びついた課題です。再生エネルギーの生産を大企業のもうけの場にさせず、市民や農民が共同して担う社会を展望し、そのための政府や自治体への支援策の抜本的強化を要求して運動を強めます。

(新聞「農民」2012.2.6付)
ライン

2012年2月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2012, 農民運動全国連合会