「農民」記事データベース20120206-1007-05

全国委員会への報告(1/5)

2012年1月19日
農民連常任委員会 笹渡義夫

関連/全国委員会への報告(1/5)
  /全国委員会への報告(2/5)
  /全国委員会への報告(3/5)
  /全国委員会への報告(4/5)
  /全国委員会への報告(5/5)

 農民連・全国委員会(1月19〜20日)で、笹渡義夫事務局長が常任委員会の報告を行い、全員一致で採択しました。その大要を掲載します。


はじめに

画像 農民連は、昨年1月に開催した第19回定期大会を皮切りに、2011年の運動をスタートさせました。3月11日に発生した東日本大震災と原発事故によって、大会決定の枠を超えた奮闘が求められ、この10カ月の間、TPP参加阻止に加えて、被災地の救援・復興、原発事故の損害賠償、原発ゼロを要求する運動などに全力をあげてきました。

 全国委員会の任務は、正念場となっているTPPへの参加を許さないたたかいや原発事故の全面賠償、多様な要求運動、たたかいの核となる組織作りなどについて議論し、第19回大会決定を補強することにあります。

I 今日の情勢と農民連の役割

 1、いま、世界は――世界的な“危機”に立ち向かう“希望ある流れ”

  (1)世界をおおう食糧・経済・環境の危機

 FAO(国連食糧農業機関)の調べによると、世界の食糧価格は、依然として食糧危機による暴動が世界で相次いだ2008年の水準を上回ったままです。食糧援助を担当する国連機関「世界食糧計画」の事務局長が、「世界は食糧不安と供給崩壊の時代に入りつつある。もし人々が十分な食事が得られないなら、選択肢は三つしかない。それは暴動を起こすか、移民するか、死ぬかだ」と警告した状態から脱していません。TPP参加をあくまで強行しようとしている野田政権のやり方は、食糧危機打開に逆行するものです。

 2008年のリーマン・ショックから始まった世界的な金融・経済危機は、現在、ヨーロッパ諸国を危機的状況に追い込み、世界規模で貧困と格差が広がっています。これは、“カジノ資本主義”や サブプライム・ローンに代表されるバブル経済に伴う金融危機と、アメリカ・ヨーロッパ・日本の多国籍企業のもうけ本位の過剰生産がもたらした恐慌が結びついた資本主義体制の危機というべき段階です。

  (2)危機の中から希望ある流れが

 しかし、樹木が厳冬の中で花芽を育て、やがて蕾(つぼみ)になって開花するように、危機の中で希望ある流れが着実に広がっています。ニューヨーク・ウォール街から始まった“1%対99%”の運動の世界的な広がりは、その一つです。

 そして、昨年12月に開かれたCOP17(国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議)は、これまでの深刻な対立を乗り越え、すべての国が参加する新たな枠組みづくりに向けた道筋を示すとともに、新枠組みの発効まで「空白」を生まないよう、京都議定書を継続することも決めました。「われわれは消滅するために会議に参加しているのではない」と叫んだ発展途上国代表の声に応えた一歩前進です。同時に、世界の流れに背を向けて京都議定書への不参加を表明した野田政権の姿勢はきびしく批判されなければなりません。

 また、国連総会は12月19日、「食糧主権の検討」を求める決議を採択し、食糧主権が世界の流れになっていることを浮き彫りにしました。

 その反面で、12月中旬に開かれたWTO(世界貿易機関)第8回閣僚会議は「ドーハ・ラウンドは袋小路に入っており、近い将来に合意することは不可能になった」として、事実上、新たな自由化交渉ができなくなったことを宣言しました。

 WTOが成立した時、自由化とグローバリズムが“世界の大勢”と叫ばれました。私たちは歯をくいしばってこの潮流に対抗し、国内外の連帯を強めて運動してきましたが、いま、自由貿易原理主義は大きく崩れつつあります。

 2、大震災と原発事故から汲み取るものは

  (1)原発ゼロと再生エネルギーへの転換を

 私たちは、いったん事故にいたればコントロール不能に陥り、時間と空間を超えて取り返しのつかない被害をまき散らす原発事故の恐怖を体験しました。そして原発は、人類の持続性に重大な影響を及ぼし、命の糧を生み出す農業とは絶対に共存できないものであることを改めて思い知らされました。今、一日も早くすべての原発を廃炉にし、再生エネルギーに転換することこそが国民多数の願いです。

 しかし原発利益共同体の利益を最優先する民主党政権は、福島第一原発事故の原因究明もできていないのに、休止に追い込まれている各地の原発を再稼動させ、外国に原発を輸出しようとしています。さらに重大なのは、根拠もなく原発事故の「収束」を打ち出したことです。

  (2)災害に弱い社会を作った 「規制緩和」「構造改革路線」

 アメリカいいなりで大企業の利益を最優先する規制緩和・構造改革路線が、災害に弱い社会を作り、被災者の不幸を広げたことをきびしく指摘しなければなりません。

  (3)食糧を生産し、自給できる社会の重要性が浮き彫りに

 震災直後からの農民連の組織をあげた救援活動は、食糧と生存権を奪われた被災者の命をつなぐ役割を果たしてきました。流通インフラが寸断され、燃料の供給がままならないなかでの救援活動は、“農の心”をもった農民が担う農業の重要性を明らかにしました。

 同時に、仮にTPPへの参加によって“農業のない日本”にされたもとでの大震災だったらどうなったか。大震災は、日本がTPPに参加することの無謀さと、これを推進する勢力の亡国的な本質を浮き彫りにしました。

 3、アメリカと財界の使い走りの野田内閣

 こうした大震災と原発事故という「国難」という事態の中で、民主党政権は不十分な対策に終始するとともに、政権交代を実現した総選挙のマニフェストを完全に投げ捨て、古い自公政治に逆戻りする政治に突き進んでいます。

 「復興財源の確保」と称して、国民に増税を押し付ける一方で、大企業にはそれ以上に減税して復興財源は1円も生み出さないという詐欺的な法案を自民、公明とともに強行し、さらには消費税増税法案を通常国会に提出しようとしています。そして、復興の足かせになることも省みずに、TPPへの参加に踏み出しています。

 4、ますます高まる農民連の役割

 TPPに反対する全国で最初の集会は、農民連・食健連が呼びかけた2010年10月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)農相会合を迎え撃つ「新潟行動」でした。これを皮切りにTPPへの参加に反対する運動が大きく発展してきました。東日本大震災の被災者救援運動や原発事故の損害賠償運動などでも、農民連の果たした役割は大きいものがあり、共感と存在感を大きく広げてきました。

 今年は、こうした成果を生かしてTPP参加阻止、全面賠償と原発ゼロ、消費税増税阻止の課題で国民共同をつくりあげる核となって奮闘することが求められています。

 こうしたたたかいのなかで、(1)一致する課題で1次産業関係団体との共同と、広範な国民・消費者とのネットワークを広げ、農業・食料を守る広大な戦線を展望する、(2)農業生産と再生エネルギー、地域づくりの核となって奮闘する、(3)すべての農家に働きかけられる数倍の組織をめざした組織づくりに挑戦することです。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2012.2.6付)
ライン

2012年2月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2012, 農民運動全国連合会