「農民」記事データベース20081222-858-10

農民連第18回定期大会決議(案)

「ものを作ってこそ農民」、
今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、
たたかいと組織を飛躍させよう!(4/6)

2008年12月5日 農民運動全国連合会常任委員会

関連/「ものを作ってこそ農民」、今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、たたかいと組織を飛躍させよう!(1/6)
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【4】運動方針について

(1)運動の柱について

 (1)政府に向けて食料自給率の向上と、そのための価格保障を実現する運動を巻き起こす。

 (2)地域から大増産運動を展開し、国民に安全・安心な食糧を提供する運動を前進させる。

 (3)「ものを作ってがんばる農民はみんな農民連へ」を合言葉に、会員と新聞「農民」読者の拡大に全力をあげる。

 (4)来るべき総選挙で暮らしと農業、平和を脅かしている自公政治に審判を下し、農民の要求が通る政治の実現をめざしてたたかう。

(2)食糧主権にもとづいた農政の確立を求める国民運動

 1、政府に向けた運動と地域の運動を結んで

 今、国民に安全な食糧を安定的に供給することこそ農政に課せられた責任であり、これまでの農政を食糧主権の立場に立った方向に転換し、自給率を向上させることが求められています。いまこそ、これまでの立場を超えたあらゆる農業関係団体との共同を広げ、国民世論を喚起して政府に農政の転換を迫る時です。

 (1)「自給率向上署名」(食健連)を国民的規模に広げよう
 食健連が提唱している「自給率向上署名」を、数百万の規模に広げることを大きな柱にして運動を進めます。

 (2)「つどい運動」を全国津々浦々で
 この間、農と食、環境など、多様なテーマで学習会や「つどい」、シンポジウムが取り組まれ、参加者も多様で、どこでも予想を上回る規模で成功しています。こうした取り組みは、学習の側面とともに、同じテーブルについて地域作りを真剣に考える場となり、新たな運動を広げる契機になっています。また、農民連への共感を広げ、組織づくりのきっかけにもなっています。こうした教訓に学んで、食健連とも共同し、すべての都道府県、市町村・地域で多様な形態で「つどい運動」に取り組みましょう。

 (3)食健連運動の発展を
 この間、長期にわたる開店休業を脱して活動を再開する県・地域食健連が生まれています。農と食への関心が大きく高まっている今、食健連運動を発展させる条件が広がっています。すべての県と単組に対応した地域食健連づくりを進め、加盟団体を大きく広げましょう。食健連の運動を前進させている教訓の一つは、事務局体制にあります。運動に共感する定年退職者を含め個人の力も結集しましょう。

 2、自給率を向上させる政策の実現を

 政府は食料自給率を50%に引き上げる計画を2年後につくるという「工程表」を打ち出しました。しかし、自給率を下落させた反省がないため、政策的裏付けを欠くもので、食料自給率の向上と食糧主権確立の具体的なプロセスを実現する運動の強化が必要です。

 (1)国内の生産に影響を与える輸入の規制を
 食料自給率向上のために、現在進められている財界の要求を最優先にしたEPA戦略を中止し、国内の生産に影響を与える輸入への規制を要求します。また、加工を含む輸入食品の原産国表示を徹底し、残留農薬、添加物等の安全検査を予算も人員も大幅に拡充して徹底すべきです。

 (2)価格保障制度と正当な農産物価格の実現を
 農産物の生産費を償う正当な価格の保障は、自給率の向上に不可欠です。「水田・畑作経営安定対策」(品目横断対策)を中止し、米では、過去5年間の生産費をもとにした基準価格を設定し、農家の手取り価格がこれを下回った場合にはすべての販売農家に対し、差額を全額国費負担で「不足払い」することを基本に、条件不利地域に対しては農業・農地の果たしている多面的機能を評価して直接払いを実施することを要求します。

 そして、米を突破口に、価格保障を畜産や野菜、果物の主要品目に拡大するとともに、大手流通業者の生産費を無視した買いたたきを国の制度としてきびしく規制することも要求します。大手流通業者の買いたたき規制は、中小の小売業者の切実な要求でもあり、共同して買いたたきを監視・告発する運動を進め、大手流通業者や業界団体への要請、公正取引委員会への提訴を含めて展開します。

 (3)米生産を守る
  イ、需要のないミニマムアクセス米の輸入は中止せよ
 ミニマムアクセス米はすべての農民、農業関係者の怒りの対象であり、汚染米問題を通して「米輸入をやめろ」の国民世論が高まっています。汚染米で追い込んだたたかいの到達点を生かし、引き続き、需要のない米の輸入をストップさせることが焦点です。

 汚染米の販売ルートは3万4000トンの40%程度しか解明されていません。再発防止のためにも、輸入小麦、トウモロコシを含めた全容究明は不可欠です。

 ミニマムアクセス米を「義務輸入」とした政府統一見解を撤回させ、国内需給に影響を与えないという「閣議了解」を厳格に守らせることが重要です。また、ミニマムアクセス米購入業者名の公表や、外食、米を原料とする加工品の表示を確実に実行させ、輸入しても“売れない、流通できない”状況を運動で作ることも重要です。全自治体の過半数の議会での意見書採択をめざして請願運動を積み上げましょう。

 ミニマムアクセス米の輸入を止めて、輸入米に奪われた市場を国産米に切りかえれば最低でも100万トン(面積で40万ヘクタール)の増産が必要になります。さらに飼料や米粉などの需要増大を含めれば、減反どころか米の大増産への転換が必要になることを主張して運動を広げましょう。

  ロ、「米改革」を中止して価格と流通の安定を
 「米改革」路線は、一握りの大手米卸に暴利を提供するだけで、生産者には米価下落、農協系統や中小卸・小売りには犠牲と混乱、消費者には安定供給の不安を与え、汚染米やクズ米の流通という代償をもたらしました。「米改革」を中止し、政府が価格と流通に責任をもつ制度の確立は緊急課題です。特に、需要拡大が予想される米粉や加工、飼料米などに備えて政府備蓄米の大幅な買い入れを行い、備蓄の役割を終えた古米を加工や飼料等に振り向けること、劣悪なクズ米の流通を規制することは、その気になれば可能であり、直ちに踏み出すことを要求します。

  ハ、強制減反を中止して自給率の向上へ
 米価下落の根本的原因に手をつけず、生産調整を強権的に実施しても何の解決にならず、生産現場の混乱に拍車がかかるというのが08年度に実施された生産調整の結果でした。

 国際的な食糧不足の中で、国内産米で需要をまかなうことを基本に、ゆとりある需給計画を策定し、一律な米の生産減らしを強権的に推し進めるのではなく、地域の生産条件を踏まえた多様な転作作物の生産を、価格対策を伴って誘導することこそ、多くの農民、農業関係者の願いです。

 政府は、破たんした政策を09年度も推進しようとしていますが、こうした大きな視点から農協や自治体などに働きかけ、地域の生産を守るために共同することが重要です。

 (4)抜本的な担い手確保の強化を
 頑張っているすべての農家を担い手として支援するとともに、高齢化などで農地の維持が困難になっている地域には、地域の条件と農家の意向を尊重した“助け合い”を基本にしたとりくみの支援が求められています。また、就農を希望する都市の労働者などを積極的に受け入れて担い手に育成するための対策を要求します。若い担い手を確保するため、フランスなどで実施されている農業後継青年育成対策の実現を要求します。

 (5)畜産農家の経営を守り、日本型畜産への支援を
 飼料高騰で深刻な事態にある畜産農家の経営を守るために、コストをカバーできる畜産物価格を実現することを要求します。また、安全対策として、政府の責任でBSEの全頭検査を復活させることを要求します。

 今日の畜産危機は、政府が誘導してきた輸入飼料に依存した多頭飼育のツケが生産者にしわ寄せされていることにあります。政府に自給飼料を基本にした日本の条件に合った畜産への転換と、そのための支援策の柱として国内産飼料の生産を抜本的に強めることを求めます。地域の実践として、畜産農家と耕種農家の提携によるホールクロップサイレージ、飼料稲などの生産を進めましょう。

(3)WTO、EPA・FTAとのたたかい、国際連帯

 重大な危機にあるWTOを、金融危機をバネに交渉を促進し、合意をめざす動きは侮れません。輸出不振におちいっている財界は、WTO交渉の妥結とEPA・FTAの交渉促進を要求し、現にオーストラリア、韓国、インドなどとの交渉が継続されています。政府に対し、食糧主権の立場に立った確固とした態度で交渉に臨むことを要求し、運動を強めます。

 EPA・FTA交渉のもたらす影響を告発し、妥結阻止に向けて運動を進め、ビア・カンペシーナとともに、交渉相手国の農民や民衆との連携を広げます。たたかいを前進させている韓国の農民組織との定期交流を行います。

(4)生産の拡大と流通の「もう一つの流れ」を発展させるとりくみ

 1、食糧主権、内需型経済へ、いまこそ生産の拡大を

 ビア・カンペシーナは「食糧主権は一般的原則として、地域の実体験の上に成り立っている。地域を基盤に全国に広がる主権なのである」とし、「政府だけに頼るのではなく、食糧主権を民衆運動や先住民が管理する領域や空間の底辺から構築する必要がある」としています。

 適地適作、地域の食文化に根ざした生産を広げ、地産地消、産直などを地域ぐるみで広げることこそ、自給率を向上させ、食糧主権に接近する実践です。そして、農民の最も本質的な要求である生産の拡大は、農民と農村に活力をもたらし、地域を元気にするカギです。また、生産の拡大と結んで食品加工など多様な産業を興すことは、日本経済を外需頼みから内需中心に転換し、地域循環型の地域経済をつくるうえで決定的に重要な課題となっています。

 2、地域で多様なとりくみ、ネットワークを生かして

 (1)すべての組織が地域で朝市や直売所を
 地域から生産を拡大し、地域住民や国民に供給する流れを大きくすることが求められる今、すべての組織が多様なとりくみをあげて展開しましょう。その一つは、生産、加工、地産地消の拠点として、地域の条件をいかした朝市や直売所に多様に取り組むことです。

 また農民連が、学校・保育園・病院給食、旅館や飲食店、スーパーなど、地域のあらゆる消費の場面に、地場産の農産物を提供する地域ぐるみのとりくみの拠点の役割を担いましょう。特に、地産地消と“食農教育”としての学校給食との提携を、すべての組織に共通するとりくみとして発展させましょう。

 (2)ふるさとネットワークの多様な発展を
 「準産直米」を全国ネットワークの要として、米流通に影響をあたえる規模に発展させることは、「米改革」路線を転換させる運動の側面からも、ますます重要になっています。また、地域の生産と結んで、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんや果物、多様な加工品などの販路拡大、都市の学校給食へのリレー出荷を軌道に乗せるために、ふるさとネットとブロックネット、都道府県ネットが提携してとりくみを発展させましょう。

 消費者から歓迎され、労働組合などとの提携にまで広がっている「ふるさとギフト」を、さらに全国の豊かで魅力ある農産物を紹介できるとりくみに発展させましょう。市場や卸、八百屋さんとの提携を広げ、市場へのリレー出荷の実践を積み上げましょう。

 (3)新婦人産直の発展を
 47都道府県に広がっている新婦人会員との産直は、情勢の発展を踏まえ、食の安全と食料自給率の向上、地球温暖化防止のための産直という方向を打ち出し、とりくみを前進させています。多くの消費者が、産直への要求を強めている今、新婦人との産直を発展させる好機となっています。

 新婦人会員のニーズをつかんで、より魅力ある産直品を提供する努力とともに、学習や交流、話

し合いを強め、共同の運動としてとりくみを発展させましょう。

 3、安全・安心な農産物を生産する運動

 (1)安全な生産の担い手として
 食の安全を求める国民の要求に応えて、安全・安心な農産物を生産して国民に提供することは農民の使命であり、農民連がその先頭に立つことが求められています。汚染米問題を契機に米の生産履歴が制度化されました。生産物の安全証明に不可欠な生産履歴の記帳運動に組織をあげてとりくみましょう。農薬の使用基準、表示を厳守し、安全な生産への努力を強めましょう。低コスト、環境負荷を減らす多様なとりくみを実践し、政府や自治体に対して支援策を要求しましょう。

 (2)食品分析センターを活用し、安全・安心な農産物を届けよう
 食の安全への不安が高まっている中で、食品分析センターの役割はますます重要になっています。輸入農産物の安全性のチェックはもとより、農民連加盟組織が、食品分析センターを積極的に活用して生産物の残留農薬検査を定期化し、農産物の安全性を証明できる体制を確立しましょう。また、学校給食の安全チェックなど、市民運動との提携を広げ、食品分析センターが食の安全にかかわる“相談所”としての機能を発揮できるようにすることが求められています。

 この間、食品分析センターが果たしている役割にふさわしく、社会的な存在としての法人化をめざして研究してきました。引き続き、検討を加え、しかるべき時期に法人化することめざします。

 4、事業と運動について

 生産を拡大し地域を元気にするためにも、農民連の会員と読者拡大を前進させるためにも、産直組織が先頭に立つことが求められています。

 産直事業は、産直への期待の高まりという有利な面とともに、農産物の買いたたきや国民の暮らしの困難などを反映してきびしい側面があります。

 農民連の産直運動の目的は、安全な農産物の提供にとどまらず、輸入農産物を跳ね返して国内産の農産物を食べてくれる消費者を増やし、農業・食糧を守る国民合意を広げることにあります。農と食に対する国民世論が高まっている今、こうした世論と連携した運動面の努力なしに事業を発展させることはできません。運動組織と一体になって産直運動に打って出る時です。運動の側も、産直を事業組織任せにせず、要求と課題を共有し、組織的にも乗り入れた体制を確立して一体となって取り組むことが求められます。また、産直事業にとって、大手流通資本に対抗する「もう一つの流れ」を発展させることにこそ展望があることを確認して前進しましょう。

(新聞「農民」2008.12.22付)
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2008年12月

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