「農民」記事データベース20081222-858-07

農民連第18回定期大会決議(案)

「ものを作ってこそ農民」、
今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、
たたかいと組織を飛躍させよう!(1/6)

2008年12月5日 農民運動全国連合会常任委員会

関連/「ものを作ってこそ農民」、今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、たたかいと組織を飛躍させよう!(1/6)
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【1】はじめに

 今大会は、農民連結成20周年を記念する大会です。農民の苦難はますます深まり、国民は、食糧の安定供給と安全、将来への不安を募らせ、「政治を変えたい」という願いを強めています。

 ビア・カンペシーナ第5回国際総会は、「新自由主義モデルは『危機』と『死』しか生み出さない。食糧主権は農村住民と消費者に『希望』と『命』を生み出す」と強調しました。農民連は国の内外で、自由化と市場原理を中心とする新自由主義経済に真っ向から立ち向かってきました。そして、食糧危機の克服や日本経済の立て直し、気候変動への対処からも、農政を食料自給率の向上と農山村を再生する方向に転換することがさしせまった課題になっています。

 今、農民連が多くの人々とともに20年間にわたって主張し、たたかい続けてきた方向に世界は動き始め、日本でもあらゆる分野のたたかいが政治を揺り動かしています。

 こうしたなかで開催される第18回大会の目的は、ビア・カンペシーナ第5回総会の呼びかけにも応え、20年の運動の蓄積を生かし、農民の切実な要求を基礎に食糧主権の立場に立った農政に転換させるたたかいをさらに発展させることにあります。また、地域から生産、流通、消費にいたる広範な共同と、食料自給率を向上させるための草の根からの運動を強化すること、農民連組織を拡大・強化する方針を確立することです。

【2】農民連結成20年を振りかえって

(1)行動綱領を指針に苦難を乗り越えて重要な地歩を築いた20年

 「農民連行動綱領」は、1950年代後半から農業破壊の政治が続けられたもとで、「日本の農民運動にとって不幸だったのは、組合員の政党支持・政治活動の自由を守り、思想・信条のいかんにかかわらず、共通の要求を実現するために団結するという、民主的な大衆組織の原則に立った真の全国センターがなかったことである」と指摘しました。そして、農業が危機的事態にあるなかで農民運動に求められる視点として、(1)「戦前・戦後を通じた不屈の農民運動の伝統を正しく継承しつつ、古い型の運動ではなく、農業と農村を愛し、農業にまじめに取り組んでいる農民が、専業・兼業を問わず、また支持する政党、思想・信条、宗教の違いをこえて結集し、農業と食糧の将来を心配する広範な国民と団結して、農業と農民経営を守る、新しい自主的な農民運動の量・質ともに強大な発展をはかること」(2)食糧不足が21世紀の人類最大の問題になることは誰も否定しえない事実であるとし、「世界中の農業を競争原理、市場原理のるつぼに投げ込んでいるWTO協定と、WTO協定を絶対視して日本の農業を担っている大部分の農民を切り捨てる『農業構造改革』の破たんは必至である」と指摘し、「国民の合意と共同に全力をあげることに農業の危機打開の道がある」――としました。

 その上に立って、農民連の基本的な目標と性格を、(1)日本農業の自主的発展と農民経営の安定をめざす、(2)要求を基礎に思想・信条の違いをこえた団結と全国的統一行動、(3)政党からの独立、(4)加盟組織の自主性の尊重、(5)国民諸階層との連帯、(6)国際的な連帯(第17大会で追加)と規定しました。

 農民連の結成は、農業の現実を打開する強い志をもった先輩諸氏、そして全国の仲間の努力の結晶でした。そして、農業・食糧、農山村の要求を担ってたたかう組織を切望する多くの農民、国民の悲願の実現でした。さらに農民運動の苦難の歴史を踏まえ、要求の実現に向けた農民の団結をよりどころに、国民諸階層と広く連帯する自主的農民運動のスタートでした。

 20年にわたり、行動綱領を指針に幾多の困難を乗り越えた全国的な努力の結果、農民連は農民と国民の中で不動の存在としての地歩を築き、農政を揺り動かす重要な役割を担う存在になっています。20周年を迎えた今、その歩みと前進を糧に、さらなる前進をめざして奮闘することが求められています。

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1989年1月26日、農民連が結成されました

(2)食糧主権を対置したWTOとのたたかい、農政を揺り動かした農民連の運動

 この20年間は、WTO(世界貿易機関)が発足し、WTO農業協定を絶対化した政府によって、輸入自由化や「農業構造改革」が押しつけられ、農産物価格の暴落で農民経営が圧迫され、日本農業が根底から揺り動かされてきました。また、残留農薬基準が大幅に緩和されたもとでの輸入農産物の激増によって、食料自給率の低下とともに、残留農薬まみれの農産物や遺伝子組み換え食品の氾濫(はんらん)、O―157やBSE、汚染輸入米の不正流通 など、食の安全が大きく脅かされてきました。

 ガット・ウルグアイラウンド合意とWTO協定の国会批准を許さないたたかいは壮大な運動に発展しました。このたたかいは、その後のWTO協定とのたたかいや食の安全を守る運動、国民諸階層と連携した流通の「もう一つの流れ」を広げるなど、組織と運動を発展させる重要な契機となりました。

 この間の最大の焦点は、WTOを絶対視して巨大企業(多国籍企業)の海外進出の促進と引き換えに、WTOやFTA(自由貿易協定)交渉で市場開放をいっそう進めることを前提に、戦後農政を“総決算”する「農業構造改革」とのたたかいでした。

 農民連は、WTO路線に対する根本的な対案である食糧主権を提唱してきた国際的農民運動組織「ビア・カンペシーナ」に05年5月に加入し、国の内外で「WTOから食糧主権へ」の運動に力を尽くしてきました。これは運動を前進させる画期となりました。食糧主権を求める国際的な運動の広がりはWTOを危機に追い込み、新自由主義を破たんさせることに大きく貢献しました。

 もう一つの焦点は、ミニマムアクセス米の輸入とのたたかいでした。08年9月に発覚した汚染されたミニマムアクセス米の不正流通事件は、WTOの本質と、アメリカいいなり、大企業中心の政治の害悪を全国民にさらしました。

 農民連は、MA米の輸入がスタートして以来、制度の廃止と輸入削減を要求してたたかってきました。そして汚染米事件発覚以来の運動で、事実上、「義務的輸入」を見直さざるをえない段階に追い込んだことは画期的な成果でした。

 「米改革」の集中的な矛盾として表れた米暴落問題で、07年に政府に緊急対策を求めた運動は、国民世論となって政府を揺り動かしました。政府は緊急の備蓄米買い上げなどを柱とする対策を打ち出さざるをえず、これを契機に「米改革」路線の破たんが明瞭になり、混迷に陥っています。

 農民連は、農業と食糧、農山村の要求を担い、国民生活にかかわるあらゆる問題で果敢にたたかってきました。この間の攻撃はし烈であり、要求を阻む壁の巨大さに多くの農民が失望し、生産意欲を低下させてきました。こうしたなかでの農民連の奮闘は、農民や国民の要求を掲げ国民と連帯してたたかえば政治を動かすことができるという展望を示すものでした。

(3)生産の拡大と結んだ農民連ふるさとネットワーク運動

 04年8月に産直運動全国協議会を発展改組して「農民連ふるさとネットワーク」を立ち上げ、生産の拡大、広範な国民、中小流通業者とのネットワークを広げてきたことも大きな前進でした。

 農民連ふるさとネットワークは、中小の米卸や小売り、消費者と共同した「準産直米」、学校給食への地場産農産物の提供や直売所など多様な地産地消のとりくみを発展させています。また、農民連結成直後から、新婦人会員との全国的な産直を発展させてきたことは、生産、運動、事業を結んだ新しいスタイルの農民運動を前進させる契機となり、生産者と消費者が提携する運動の流れを促進し、多数の国民が国内産を求めるという世論に結実しています。大企業の流通支配の強まりに抗し、ライフエリアの共同を力に「もう一つの流れ」を作る運動は、食糧主権に接近する地域からの実践としても重要でした。

(4)農民連食品分析センターの機能強化

 1996年に誕生した「農民連食品分析センター」は、WTO体制で脅かされる農業と食の安全を守る重要な役割を果たしてきました。輸入農産物からの違反農薬の検出など、多くの実績は食品行政を動かし、市民権を確立したことは、20年間の運動のひときわ大きな成果です。こうした成果を土台に、遺伝子組み換え、重金属、ポジティブリスト制などに対応できる機能を、多くの会員や国民に依拠して確立してきました。権力と資本から独立した「国民の分析センター」の存在は、農民連行動綱領を実現する“砦(とりで)”になっています。

(5)食健連運動の果たした役割

 全国食健連は、1990年、農民懇以来の共同運動を発展させて結成され、農業と食、健康を守る国民運動のセンター的役割を果たしてきました。食健連運動は、農と食の国民合意、国民諸階層との提携を広げる“核”であり、農民連の20年間のたたかいのあらゆる場面が食健連との共同によるものでした。食健連運動は、食と農にかかわる国民要求を実現する先頭に立ち、要求で幅広い共同のとりくみを広げる努力を一貫して追求してきました。また、学習を力に国民合意を広げ、安全な国内産農水産物の生産・加工・流通・消費、食を真ん中にした楽しい企画、文化を大事にし、国際的な視野で情勢をとらえ、草の根からの運動を展開してきました。

 食健連運動は、「日本農業割高・過保護論」をはじめとしたイデオロギー攻撃を跳ね返し、圧倒的多数の国民が安全な国内産の農産物を求める世論を構築する上で大きな役割を果たすとともに、食糧主権に接近する運動のモデルとして国際的にも注目されています。

(6)憲法、平和、暮らしを守る共同の一翼を担って

 この20年はソ連が崩壊したもとでのアメリカの軍事と経済の両面にわたる“一国覇権主義”によって、平和が脅かされ、経済のグローバル化によって国際的に格差と貧困が深化しました。アメリカいいなりの自民党・公明党政治は、憲法を踏みにじってアフガニスタン、イラクへの自衛隊派兵を強行し、アメリカの引き起こす戦争に協力するために、憲法改悪を内閣として初めて打ち出し、“戦争する国”への緊迫した情勢が作られてきました。

 また、新自由主義を貫いた「小泉改革」によって、あらゆる分野にわたる規制緩和・撤廃が強行され、雇用、福祉・医療、農業など国民生活が破壊され、格差と貧困を深刻化させました。

 農民連は、「憲法を生かしてこそ農業が守れる」の要求を掲げ、井上ひさし氏をはじめ、日本の良心を代表する9氏が呼びかけた「9条の会アピール」に賛同して「農林水産9条の会」へ積極的に参加し、「9条田んぼ」など、農民らしい創意を発揮して憲法を守るために力を尽くしてきました。

 また、民主勢力の一翼を担い、農民の生活と農業・食糧、国民全体の暮らしを守るために他の階層と共同し、悪政とのたたかいに全力をあげてきました。こうしたたたかいは、平和と暮らしを守る世論を大きく広げ、末期的な状況の自公政治を追い込む大きな力となっています。

(7)農民連への期待の高まりと、切り開いた会員・「農民」読者拡大の展望

 多数の農家が農政への怒りや不安を募らせ、暮らしを破壊する政治に苦しめられているなかで、その時々の農家の苦悩の解決と、根本的解決の展望を掲げてたたかう農民連の運動は、多くの農民に共感され、農業への展望を生み出すよりどころとなっています。

 また、食糧主権の展望を持ち、地域農業を守る共同の“核”として奮闘する農民連の活動は、農協攻撃のなかで奮闘する農協組織、農業委員会などに信頼を広げています。「日本販売農業協同組合連合会」(21JA・約12万人で構成)が農民連に加盟したことは、農協組織の中で注目すべき変化であり、この間の農民連の方針と運動の発展による成果であり、農民連への期待の大きさを示しています。

 組織的には、農民連は多くの県連組織の基盤が未確立な状態の中で発足し、組織原則、運営、財政など、先進的な経験をよりどころに、要求を基礎にした“近代的”組織作りに努力してきた20年でした。

 こうしたなかで、47都道府県連を持つ組織に到達し、農家比で10%に迫る県連組織や、地域で重要な位置を占める組織も生まれています。全国的には02年に到達したピークから若干の後退はあるものの、この20年間に農家戸数が40・6%も減少している中で組織を基本的に維持してきたことは重要な成果でした。

 農民連の組織と運動を前進させ、支えてきた重要な教訓の一つは、月1回刊でスタートし、月3回刊を経て週刊となった機関紙を中心にした活動を貫いてきたことです。「みんなで作ろう、ものいう農民」の見地で編集された新聞「農民」は、「食と農を守る共同の新聞」として運動をリードしてきました。機関紙を組織活動と財政の根幹に据えてきたことが、団結の強化と、自前の財政を確立するうえで決定的な役割を果たしました。

 いま、農業に展望をもって立ち向かい、奮闘する農民連への期待は大きく広がり、新聞「農民」の存在感も高まっています。農民連の主張や運動が多数の農家と響きあう今、目的意識的に働きかければ会員と「農民」読者を大きく前進させることができる展望が生まれています。

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(新聞「農民」2008.12.22付)
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2008年12月

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