農民連第18回定期大会決議(案)
「ものを作ってこそ農民」、
今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、
たたかいと組織を飛躍させよう!(2/6)
2008年12月5日 農民運動全国連合会常任委員会
関連/「ものを作ってこそ農民」、今こそ食糧主権を!20周年の蓄積を生かし、たたかいと組織を飛躍させよう!(1/6)
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【3】情勢の特徴と農民連のたたかい
(1)追い詰められた麻生内閣、自民党政治が末期症状に
迷走状態に陥っている麻生内閣が解散・総選挙をためらっているのは、アメリカいいなり、財界の利益を最優先した政治が国民との矛盾を深め、選挙を実施すれば下野する可能性が高まっていることにあります。
自民党は、政治基盤の弱体化を小選挙区制の導入と、公明党との連立でしのいできたものの、ついに末期的状況に至っています。「二大政党」のもう一つである民主党は、格差と貧困、憲法や消費税、農業など、当面する国政の重要問題で自民党政治と同じ土俵にあり、本質的には国民が求める政治の受け皿になりえません。
今、国民が新たな政治を探求しており、政治的激動期を迎えています。自公に代わる新しい政治は、今後の選挙によって形作られるものであり、次期総選挙の意義は重要です。
同時に、自民党の農村での政治支配が大きく崩れつつあるなかで、農民の要求実現と農業の発展、平和で民主的な日本の実現を掲げて運動する農民連の役割はいよいよ重要になっています。
次期総選挙は、農業・食糧問題が重大争点であり、ミニマムアクセス米の是非も問われることになります。アメリカと財界の戦略に基づいて食糧を外国に依存し、国内農業を縮小してきた自民党農政の転換を求める世論が大きく広がっています。
選挙結果は、今後の日本の進路と農政に決定的な影響を与えるものであり、全力でたたかうことが求められています。
(2)変わりつつある世界、新自由主義的経済の破たん
ビア・カンペシーナは4年間の運動の成果について「ビア・カンペシーナのたたかいは、新自由主義政策に対抗する社会運動を励まし、刺激し、運動を生み出している。長年の運動の結果、進歩的な政府の数が増え、国際的な食糧危機への反応として多くの国家および地方自治体が食糧主権の重要性を認識し、促進し始めている」と総括しています。
アメリカ大統領選挙でのオバマ氏の勝利は、アメリカ史上初の黒人大統領の誕生であると同時に、共和党ブッシュ政権が進めたイラク戦争など国連を無視した一国覇権主義、貧困と格差の深刻化、金融危機をもたらした新自由主義的な経済政策をアメリカ国民が拒否した重要な出来事でした。
自由化と市場原理を旗印とする新自由主義的経済政策は、異常なマネー経済を作り出し、世界的な金融危機、同時不況を引き起こしました。また、原油や穀物、あらゆる資材価格を高騰させ、食糧危機と格差・貧困をもたらしてきました。
新自由主義的な農業・食糧政策への対抗軸として、食糧主権を求める動きが国際社会に厳然たる影響力をもちはじめ、今後、食糧主権が“変わりつつある世界”をさらに加速させる力になりうる展望が広がっています。
日本にとっても、食糧主権の立場に立って食料自給率を向上させることは、食糧危機の克服にとどまらず、行き詰まった外需依存経済を内需中心の経済に転換するうえでも、そして地球温暖化対策のうえからも避けられない緊急課題になっています。
(3)WTOを危機に追いこみ、現実政治を動かしている食糧主権
WTOドーハ・ラウンドの合意先送りは5回目を迎え、基本的に「冬の時代」「集中治療室と火葬場の間にいる」状態です。「帝国主義」的機関といわれるほど強大な権限を与えられ、大国と多国籍企業が全面的にバックアップして始動したWTOの現在の姿は、多国籍企業やアメリカ本位のグローバリゼーションに対して、世界中の発展途上国や民衆の反発や抵抗がいかに強いかを示すものです。世界的金融危機をバネに、ドーハ・ラウンドの妥結を促進する動きが挫折したことは、危機の深さを改めて示しました。そもそもWTOは、IMF(国際通貨基金)や世界銀行などとともに、金融危機の主要な原因であり、交渉の妥結は危機を促進することにほかなりません。
この間、瀬戸際に立っているWTOに代わって動いているのが、二国間あるいは地域の自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)です。農民連は、農産物の輸入自由化に加えて、産業廃棄物の「輸出」や看護師の「輸入」の問題もとりあげ、国内外のNGOや農民組織と共同して、FTA・EPAとたたかってきました。
米韓FTAは、政府間合意には至ったものの両国の国会批准が1年半以上も棚上げされたままになっています。EU・アフリカEPA交渉も合意に至らず、日比EPAは、成立に至ったものの、フィリピンでの空前のたたかいによって難航しました。こうしたFTA・EPAの矛盾が急速に表面化しているなかで、オバマ次期大統領はNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを主張して当選したことは注目されます。
こういうFTA・EPA戦略を揺るがしているのは世界中の農民組織やNGOの運動であり、その基軸になっているのが食糧主権です。食糧主権は、運動上の概念にとどまらず、マリ共和国、ネパール、ボリビア、エクアドルなど、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ諸国で憲法や農業法に書き込まれ、農政の基本に位置付ける国が短期間に増え、現実の施策となる段階に到達しています。
(新聞「農民」2008.12.22付)
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