「農民」記事データベース20051205-711-03

徹底検証

農水省の「品目横断的経営安定対策」は
日本の農業をどこに導くのか!?

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 農水省が十月二十七日に決めた「品目横断的経営安定対策」は、これまであった畑作物の品目ごとの価格安定対策を廃止し、一握りの「担い手」にしぼって所得の減少に対する補てん(直接支払い)をおこなうというもの。そのねらいは、WTOを絶対視して関税引き下げと輸入拡大を大前提に、“生産を刺激しない(増やさない)”政策体系に移行すること。さらにWTOという“外圧”を利用して補助金を削り、農家を生産からしめ出して構造改革を無理やり推し進めること。その行き着く先は…。

 しかし、WTOは今、香港閣僚会議を前に“壊れかけ”の状態。「改革」が必要なのはWTOであり、WTOに代わる“もう一つの世界”が模索されるなかで、求められる農政は何か――。「品目横断的対策」の及ぼす食料・農業への影響を検証するとともに、農業と農山村の復権に向けた道を探ります。


農政談議

 「品目横断的対策」に多くの農家、自治体、農業関係者が頭を抱えています。「うちには『担い手』の要件を満たす農家はいない」「これがやられたら地域が崩壊する」「『品目横断的対策』で経営は守れるのか」――こんな声をいたるところで耳にします。そんなある日、飛騨の中山間地域から寅さんが上京、農民連本部を訪れ、居合わせた北海道・十勝地方の熊さんや本部役員と、この「対策」をめぐる農業談義が――。


農家の大半は対象外

“狭い農地、集約なんてムリだ”

 大部分の農家を生産からしめ出してなにが「経営安定対策」だ! いやー、困った。

  どうした、浮かない顔して。

  「品目横断的対策」ってやつだよ。

  都府県で四ヘクタール、北海道で十ヘクタールという基準を一律に当てはめて、それ以下の農家は農政の対象から外すっていうあれか。たしかに、ひどいな。

 “4ヘクタール以上はゼロだよ”

  ひどいなんてもんじゃない。これがやられたら地域は崩壊だ。うちのJAは大阪府よりも広く、三千ヘクタールの水田があり、八千七百戸の稲作農家がいるが、四ヘクタール以上はゼロ。七月にJAと水田利用協議会が説明会を開き、初めから基準を二・四ヘクタールに下げて説明したが、それでも三十五戸だ。

  平均規模は〇・三ヘクタールか。でも、集落営農という道もあるんじゃないか。基準は二十ヘクタール以上だが。

 イノシシ、猿、鹿の対策も…

  そう。農協も集落営農の組織づくりに全力をあげると答えた。作業受託組織を全部拾いあげて一覧表にもしている。しかし、それでもカバーできる面積は一八・五%にすぎない。

  初めから八割以上の農地を見捨てるのか。

  しかも、うちらの田んぼは一枚がせいぜい十アールで、畦も広い。水が足りないから、雨が降るのを待って急いで代かきをやり、普段は山水をホースで引く。イノシシ、猿、鹿が出るから、田んぼをトタン、網、電気木柵などで囲まなきゃならない。こんなところで農地を集約しろって言われても無理だ。担わされた農家のほうがまいっちゃう。この対策は、うちらの地域では絶対に具体化できないよ。農地守ってきた努力もバッサリ

  それで頭を抱えていたのか。それにしても、よくがんばっているなぁ。頭が下がるよ。小さい農家が悪条件の中で努力しているから、地域の農業も農地も守られているということだな。ところが農水省はこうした現実や農家の努力をバッサリ。とんでもないな。

  その通り。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2005.12.5付)
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2005年12月

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