「農民」記事データベース20240205-1587-09

仲間を増やして亡国農政を
変える国民運動を
(4/5)

2024年1月18日
農民連全国委員会決議

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  (3)畜産・酪農危機打開の運動

 飼料は1・5倍近くに高止まりし、酪農家・畜産農家の離農も止まらず、酪農・畜産の危機は去っていないどころか、「日本から畜産の灯を消すな」の運動はこれからが正念場と言えるほどの深刻な状況です。

 とくに夏の酷暑で、乳量が1〜2割も減少し、家畜の死亡や繁殖障害が多発し、黒毛和牛をはじめ子牛価格が暴落しており、酪農・畜産には大きな打撃となりました。

 円安で輸入飼料価格が高止まりするなか、配合飼料の「新特例」補てんが23年12月で実施期限が切れることも懸念され、引き続き輸入飼料への補てんの積み増し対策が急務となっています。しかし岸田政権は、「輸入飼料依存からの転換」を口実に、対策パッケージで実施した支援策すら打ち切ろうとしており、これを許さないたたかいが求められています。また、飼料高騰によって、10円の乳価の引き上げが必要との声が酪農家から続出しているにも関わらず、昨年は49銭、今年は26銭しか引き上げられなかった加工原料乳の生産者補給金制度を早急に改善させる運動も重要です。

 なにより畜産農家・酪農家が再生産できるよう、今こそ畜産・酪農政策の全面的・抜本的な見直しが必要です。

  (4)若い担い手の確保は緊急課題

 50歳未満の農業者が23%にまで激減し、高齢者が懸命に生産を支えています。自民党が12年に政権復帰して「40歳以下の農業後継者を23年に40万人確保する」と公約しましたが、現在、13万人しかいません。

 民主党政権時代に始まった青年就農給付金は、年150万円を最大5年支給し、若い担い手の確保に灯が見えたのも束の間、政権に復帰した自民・公明党は5年支給を最大3年に短縮し、給付金から融資制度に変質させることを狙っています。

 これは、EUなどで、家族農業の未来を担う青年の新規就農に対する支援が広がっている世界的な動きに全く逆行するものであり、「高齢化と担い手不足であと5年持たない」という農村の悲鳴に対する冷酷な裏切りです。

 EU諸国は、20〜40代が就農者の5〜6割を占め、日本をはるかに上回りますが、これでもヨーロッパ農業の安定的発展は保証されないとして、青年就農支援をさらに本格化させ、予算を3倍化させています。20〜40代が1〜2割にすぎない日本でこそ、本格的な青年就農支援が求められており、待ったなしの課題です。

 「就農青年支援を農民連運動の柱に」――福島、奈良、滋賀、和歌山などで農民連組織が青年の相談に乗り、研修交流会の開催や技術・販路支援、研修受け入れなどに取り組んでおり、若い仲間を会員に迎え入れています。いっそう取り組みを強化しましょう。

 財政審や農政審(食料・農業・農村政策審議会)は「集積・集約化」を連呼して法人経営体の役割を強調する一方で、家族経営を軽視しています。農民連は、家族農業を柱に「誰もが担い手」、女性、青年が生き生きと活躍し、お年寄りも持てる力を生かす農政を進めることを求め、地域農業を守る共同の実践を進めます。

  (5)肥料をはじめ高騰する農産物資材の対策を

 肥料価格の高騰をうけ、農水省は22年から08年以来の肥料高騰対策を実施、化学肥料の使用を低減する生産を行うことを条件に、コスト上昇分の70%相当を助成してきました。しかし23年10月の高騰は、農水省の農業物価指数調査(20年比)で肥料が140・8%、飼料142・5%の上昇となる一方、米価は94・2%、乳価は115・4%で、農家の収益性は大きく悪化しています。

 農水省は資材高騰対策の打ち切りを狙っており、対策の継続と、生産費を償う価格保障政策の確立を求める運動が重要です。

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能登半島地震の被災地に入り要望を聞き取りました(1月20日、石川県七尾市)

  (6)食の安全を脅かすゲノム編集、 ネオニコチノイド、 グリホサート――「みどり戦略」のもとで強まる家族農業とアグリビジネス企業とのせめぎ合い

 2050年までに有機農業を全耕地面積の25%にするとの目標を掲げたみどりの食料システム法に基づく様々な施策が動き出しました。

 有機給食をめざす運動と、「みどり戦略推進交付金」などを活用し安全な農産物を生産する取り組みが各地の農民連組織で広がり、会員の拡大も進んでいます。

 しかし一方で、イオンファームやセブンファームなどが、有機農家の囲い込みを狙い「スマート農業」による大規模化をめざす動きも進んでいます。

 さらに、ゲノム編集食品(トマトやマダイ・トラフグなど)の無表示販売開始や、昆虫食などの動きを促進させようと、食品企業や流通大手、商社などの大企業を中心に、「フードテック」の普及を本格化させています。こうした大企業の狙いは、食品衛生法や食品の表示制度、残留農薬基準などの規制緩和を政府に求め、生産から加工・流通・消費全般(フードシステム)の企業支配をめざすものです。

 これでは日本は、世界的に禁止されている農薬や食品添加物・ホルモン剤などを使用した食品のはけ口になってしまいます。

 ネオニコチノイド系農薬やグリホサートの発がん性や神経・腸内細菌への影響が次々と明らかになり、アメリカやEUだけでなく中国や韓国など使用禁止や規制を強化する国が増えています。アメリカではグリホサートによる健康被害を訴える訴訟が広がり、バイエル社(旧モンサント社)の敗訴が確定しています。イタリアでは培養肉・代用肉など「細胞性食品」の製造・販売を禁止する法律が成立しました。

 この世界の流れに合流し、農民連の「アグロエコロジー宣言(案)」の実践を広め、多くの消費者・国民と共同し、「企業による食の支配」を打ち破りましょう。

  (7)放射線育種によるあきたこまちRの強要は農民の種子に対する権利奪うもの

 秋田県の種子事業において、重金属であるカドミウムの吸収が抑制される品種として開発された「あきたこまちR」への25年産から全面的切り替えが進められており、農家はもちろん、消費者からも危惧する声が広がっています。

 2018年、国連総会で採択された「農民の権利宣言」では「農民と農村で働く人々は、自らの種子と伝統的知識を維持、管理、保護、育成する権利を有する」としています。秋田県が公的種子事業として「あきたこまち」を認めず、「あきたこまちR」しか供給しないというやり方は、農民から種子に対する権利を奪い、消費者から選択する権利を奪うものであり、認められるものではありません。

 23年産で原種生産を開始し、25年産からの全面移行をめざしている秋田県に対して、計画の中止・見直しを求め、農家に対して、あきたこまちの種子もみの供給を継続させるなど、農民・消費者の声を広げることが求められます。

  (8)原発汚染水の海洋放出と、 原発推進政策を許さないたたかい

 福島原発事故の事故から13年近くを経てもなお、被災地の実態は収束とは程遠く、廃炉のめどすら立たず、放射能汚染水が発生し続けています。被災者への賠償に対し、国・東電ともにきわめて不誠実な態度を取り続けています。原発はただちに廃止し、再稼働はやめるべきです。また他の方法を検討することもなく、汚染水を海洋放出することは許されません。

 しかし、岸田政権は、全国の原発を再稼働するだけでなく、60年以上の老朽原発すら稼働させる原発推進政策を進めています。原発は大規模・集中的・一方通行型の電力供給システムの根源であり、再エネ普及の障害にもなっており、気候危機対策にもなっていません。

 地球沸騰化の今こそ、原発と化石燃料から脱却し、再エネ・省エネの抜本的な推進が求められています。

(新聞「農民」2024.2.5付)
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2024年2月

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