「農民」記事データベース20240205-1587-06

仲間を増やして亡国農政を
変える国民運動を
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2024年1月18日
農民連全国委員会決議

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1 はじめに
  全国委員会の任務

 いま、国民の食料と農業はかつてない危機に直面しています。しかし、岸田自公政権はアメリカ言いなりで「戦争する国づくり」の軍備増強に血道をあげ、危機的な農業生産現場の声を放置したまま、さらに食料自給率目標そのものをも放棄し、「食料の有事立法」など亡国の道を突き進もうとしています。

 戦争か平和かの歴史的岐路の情勢のなかで、農民連は農民運動のナショナルセンターとして農政を抜本的に転換する国民運動を巻き起こすとともに、「ものを作ってこそ農民」「アグロエコロジー」を掲げ、広く農民や市民と連帯して安全・安心の食料を増産し、国民に提供する取り組みを強めてきました。いま、市民・消費者と「食」を通じた幅広い共同で大きな世論をつくり亡国と飢餓への道から希望と未来のための農政に変える歴史的局面に立っています。

 今回の全国委員会は、第25回定期大会決定を実践した23年の運動の総括と教訓を明らかにし、情勢の大きな変化を全国の仲間が共有し、春の大運動に続き、6月まで続く通常国会への闘争に向けた意思統一が目的です。

 政府は今後20〜30年の農政の基本方向を決定する食料・農業・農村基本法を通常国会で改定しようとしています。農民連は、「提言」を打ち出し、焦点の食料自給率について、政府の法的義務とする文案まで提案しています。この方向こそ農業・食料の危機を打開するものであり、その実現をめざして奮闘します。

 旧農業基本法以来60年に及ぶ農政の転換は、従来にない食料を守る大きな国民運動を起こすことなしには実現できません。

 農民連が結成されて30年余り、農産物自由化強行などのたたかいの重要な場面で「もっと大きな農民連があれば」と悔しい思いをしてきました。まさに、現局面ほど農民連が求められているときはありません。食と農の学習会・集いを広げ、税金の自主申告運動や切実な要求実現・実利獲得で新しい仲間を迎え、国民の中に思い切って新聞「農民」の読者を増やしていきましょう。

2 たたかう農民と市民・消費者の共同で
  食と農を守る運動を広げた

(1)酪農・畜産危機打開のたたかい

 飼料や光熱費、資材などが高騰し、畜産農家がかつてない経営危機に直面するなかで、農民連は政府に飼料を含む高騰対策を求めて20回以上にわたる要請を重ねるとともに、22年夏からは、「個人要望書(畜産経営を継続するための緊急要望書)」を7次にわたり総計で約2000人分、オンライン署名は9万4000人分を政府に届ける運動に取り組んできました。

 22年11月30日に農水省前で開催した集会には牛・豚・ニワトリも参加し、千葉の酪農家・金谷雅史さんの「酪農、ヤバイです!」というスピーチ動画は10万回以上も再生されるなど、潮目を変える大きな契機となりました。また、23年2月14日の院内集会には、3900頭を搾乳する日本有数の大規模酪農の経営者をはじめ、酪農・畜産団体、生協、消費者団体や、与野党議員25人(秘書参加含む)も参加し、「日本から酪農・畜産の灯を消すな」の国民世論が広がる大きな力となりました。

 野党とも共同した運動が進むなかで、国会審議でも連日のように酪農危機が取り上げられ、政府は、3月に搾乳牛1頭あたり1万円(北海道7200円)の直接支援や配合飼料への補てんの積み増し、自家配合飼料への支援、価格転嫁を話し合う協議会の設置などを含む、約1000億円に及ぶ「畜産・酪農緊急対策パッケージ」を発表しました。また、全国の酪農家に畜産局長名で「お手紙」を発送するという、前代未聞の対応にまで発展しました。緊急対策パッケージは不十分ではあったものの、運動が政府を突き動かしたものであり、「弱小農家は支援しない」という新自由主義農政に風穴を開けるものとなったことを、大いに確信にする必要があります。

(2)地方自治体・議会への要請運動

 政府への要求と結んで自治体・地方議会に要求を届けて、米価補てんや次期作支援、国の対策に上乗せした肥料・飼料高騰対策、畜産頭数に応じた補助金などの支援策を勝ち取ったことは、今後に生きる大きな成果です。多くの場合、国の創生資金が原資になっていますが、創生資金は継続しており、さらに農家の要求を自治体に届けて対策を実現させるとともに、自治体独自の恒常的支援策を求めましょう。

(3)無償化・国産・地場産の学校給食を実現する運動の広がり

 食料危機と円安による物価高が学校給食を直撃し、各地で学校給食の無償化を求める運動が広がり、無償化を実施する自治体が全自治体の3割を超えました。

 遺伝子組み換え食品の表示をあいまいにし、ゲノム編集食品が表示なしで流通し始めるなどの動きから、「こんなものを学校給食に使わせたくない」との運動が、無償化を求める運動と合流した結果です。各地の農民連は、関係者と懇談・交流を重ね、栽培品目の増加や栽培技術の向上をめざして取り組んでいます。

 いま、学校給食の運動は、無償化に加えて給食の食材調達の地産地消・有機化をめざす運動、給食施設の民間委託や「センター化」の是非を問う運動など、「公共を取り戻す」循環型の地域経済をめざす運動に大きく発展しています。

 農民連食品分析センターが、輸入小麦を使用している学校給食のパンにはグリホサートが残留し、国産小麦を使用したパンからは不検出であることを発表したことも、運動の広がりに大きく貢献しました。

(4)消費税減税、インボイス反対のたたかい

 物価高騰に最も効果的な対策として消費税減税を求める国民の声は7割に達しています。岸田政権が物価対策として所得税減税や低所得者への支援を打ち出しましたが、同等の財源で食料品の消費税を0%にできることも明らかになっています(第一生命研究所試算)。政府は、軍事費を5年間で43兆円規模にする税源確保のために、さらなる増税を検討しています。

 インボイス(適格請求書)導入に反対する運動が、消費税減税を要求する運動と相まって国民的運動に広がり、これまで政治や税制とは直接、関わってこなかったフリーランスの方を先頭に署名が50万人分余に達しています。農民連も「インボイス反対」の一点で共同し、インボイスや消費税の学習を積み重ね運動を広げました。23年10月から強行導入されたものの、岸田政権を弱体化させる大きな契機になりました。

 政府がインボイスを強行したのは今後の消費税増税のための地ならしです。インボイスへの理解がないまま事業者登録と消費税課税が押し付けられて、大混乱が予想されます。また、インボイス制度の実施によって農家の分断や差別が発生し、離農に追い込まれた生産者もいます。

 消費税は最悪の農業破壊税です。そして、地域の中で分断を生むインボイスは今すぐ廃止する運動を広げるために、自主申告運動の強化とあわせ春の運動前に学習を広げましょう。

(5)新農業基本法への提言の発表と自給率向上署名運動の広がり

 第25回大会で、旧基本法以来60年の歴史を総括して岸田政権が進める「食料・農業・農村基本法」の見直しの狙いを指摘し、6月に発表した「新農業基本法に対する農民連の提言」と、「アグロエコロジー宣言(案)」をセットに日本の食料・農業政策の転換を求める学習運動を進めてきました。

 提言とアグロエコロジーパンフをJA全中(全国農業協同組合中央会)や全国農業会議所、与野党議員、自治体やJAなどに届け、亡国農政から希望の農政に転換することをめざし懇談してきました。訪問先では、農民連の提案への共感が広がり、マスコミも食料・農業問題を繰り返し取り上げる状況が生まれています。さらに国民全体の課題に広げましょう。

 「食料自給率向上を政府の義務にすること」を求める署名運動で大きな変化が起きています。富山県農民連の荒木義昭さんは、食料自給率向上署名を一人で800人分以上集め「声をかければ皆さんが快く応じてくれるため、署名集めが止まらない」と報告しています。宮城県農協人9条の会は元中央会会長など著名人の集まりですが「これは大事な署名」と県9条の会講演会の開会前に署名活動に取り組みました。署名活動や学習会・集いに取り組んだ組織では情勢の変化に確信が広がっています。

(6)アグロエコロジー宣言(案)への注目と学習や実践、交流の広がり

 アグロエコロジーは、アグロ(農業)とエコロジー(生態学)を組み合わせた言葉で、自然の生態系を活用した農業を軸に、地域を豊かにし、環境も社会も持続可能にするために食と農の現状を変革する方針であり、循環型地域づくり、多様性ある公正な社会づくりと民主的な意思決定をめざす運動です。

 農民連は、アグロエコロジーを農業・食料危機を打開する対案と位置付け、23年1月に「アグロエコロジー宣言(案)」を発表し、パンフレットを発行しました。いま、各地でさまざまな学習や実践が行われています。

 福島県の「あだたら食農スクールファーム」は、有機農業を学び、耕作放棄地を活用して誰でも実践できる不耕起栽培やオーガニックガーデンを参加者が工夫しながら展開する「参加型実証農場」です。

 ハウスの加温栽培や、プラスチックマルチをやめ、被覆植物を利用するなどの環境負荷軽減に取り組んでいる大阪府能勢町の吉村農園の取り組み、ネオニコフリーの米作りの広がりなど、各地で多様で多彩な実践が広がっています。

 5月に宮崎で行われたG7(主要7カ国)農相会合の共同声明には「アグロエコロジー」が初めて盛り込まれ、農山漁村文化協会は11月、『アグロエコロジー 持続可能なフードシステムの生態学』を発売しています。福島大学大学院食農科学研究科には、日本で初めて「アグロエコロジープログラム」が開設され、定員の2・5倍の学生が応募しました。北海道の「マイペース酪農」が日韓国際環境賞を受賞したこともアグロエコロジーへの注目の表れです。

(7)新婦人との新 「4つの共同目標」 が力を発揮し学習会や集いの広がり

 新日本婦人の会と農民連の4つの共同目標が改定され、運動の新たな活力になっています。各地で協議が始まり、「食べて、学んで」を合言葉に、各地での学習会や交流会に参加した新婦人会員が農民連の2つのパンフレットの普及と、食料自給率署名に取り組み、さらに新たに産直会員になる状況も広がっています。新婦人第31回大会方針では、食料自給率向上に向けた学習と自治体への要請、署名の取り組み、産直を通じての援農やアグロエコロジーを進める方針を決定しています。

 4つの共同目標と、4つの目標実現のために大切にする確認事項を新婦人との共同の柱にして運動を発展させましょう。

「新婦人と農民連の産直運動 4つの共同目標」
(2022年5月27日改定)
 1、新婦人と農民連(以下「私たち」)は、安全で新鮮でおいしい国産の農畜水産物を作って食べて、日本の食料自給率を向上させ、自らと家族の健康を守り、食文化を次世代へ継承します。

 2、私たちは、お互いの顔と暮らしが見える交流を活発にして、持続可能な地域社会と農業の担い手づくりをめざします。

 3、私たちは、気候危機の打開、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に大きな役割を果たす家族農業が大切にされる社会への転換を求め、アグロエコロジー、食料主権の確立をめざします。

 4、私たちは、お互いの組織の発展に貢献する産直運動をめざし、定期的な協議をおこない、課題を共有して改善に努めます。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2024.2.5付)
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2024年2月

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