仲間を増やして亡国農政を
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特にロシアによるウクライナ侵略やイスラエルによるガザ攻撃は、国連憲章と国際法違反であるとともに、食と農の基盤である平和を破壊するものであり、直ちに停止することが求められます。
コロナ禍での食料、農業資材、エネルギーの価格上昇は、ウクライナ侵略などの影響でさらに加速し、世界の食料・飢餓、肥料、燃料などの状況が一変しました。
国連食糧農業機関(FAO)の「世界の食料安全保障と栄養の現状」(23年)によると、22年の飢餓人口は、世界人口の9・2%に当たる7億3500万人。コロナ禍前の19年と比べて1億2200万人増えました。
世界の食料供給網も寸断され、そのぜい弱性が浮き彫りになりました。アメリカの国際食糧政策研究所(IFPRI)によると、22年に食料・飼料・肥料の輸出を制限した国は32カ国、制限措置は77項目に及び、ピーク時で世界の食料・飼料輸出の17%が影響を受けました。さらに、23年7月には、世界最大の米の輸出国インドが米の輸出を制限し、小麦価格に加え、米の国際相場も急騰しました。
とりわけ、気候危機による異常気象の頻発は農業生産をいっそう不安定にさせるのは確実です。FAOは23年10月、気候変動などを原因とする災害による農作物や家畜の被害が過去30年間で、推定約3兆8000億ドル(580兆円)に上ったと発表しました。災害件数も70年代までは年間100件程度だったのが、過去20年間で年400件程度に増え、程度も甚大化しています。FAOはまた、異常気象による土壌浸食によって世界の農作物生産は50年までに10%失われると予想しています。同じ時期に世界の総人口は約20%増加して100億人に迫るとされており、飢餓人口のいっそうの増大が懸念されます。
他方、危機の存在を認めながら、背景から目を逸らし、偽りの解決策を提示しようという逆流も強まっています。
アグリビジネスと巨大デジタル企業が主導し、21年9月に国連食料システムサミットが開催され、23年7月には、同サミットの「2年後会合」が開かれました。両サミットは、新自由主義貿易協定や多国籍企業・富裕層が占める支配的地位を維持・強化しながら、食と農のデジタル化、自動・無人化、遺伝子組み換えやバイオテクノロジー技術の大幅活用、知的財産権の強化などを進めることを狙い、農村の崩壊をさらに進め、格差を拡大するとともに、大多数の人々から健康で安全な食を奪うものです。
ビア・カンペシーナや市民社会組織が中心になって、こうした逆流に対抗し、食料主権とアグロエコロジーを危機の真の解決策として掲げ、その実現に向けた取り組みが着実に進んでいます。
食料主権を実現するために欠かせない公正な貿易制度に関しては、マイケル・ファクリ「国連食料への権利特別報告者」が、WTO農業協定や自由貿易協定について「公正な国際市場も、国内市場の安定化ももたらさず、大企業を守り、極めて不公正な状態を固定化している」と批判し、WTO農業協定の段階的廃止と尊厳・自給・連帯を基盤にする新しい国際食料協定を求めました。ビア・カンペシーナは新たな貿易協定を実現するため、特別報告者を含めた専門家、他の市民社会組織と協力していくことを明らかにしています。
農民の権利宣言に関しては23年10月、国連人権理事会で、宣言実施に向けて、包括的かつ効果的な普及と実施を進めるための作業部会を設置するための決議が可決されました。
ビア・カンペシーナは23年12月に行われた第8回国際総会で、それまでの81カ国182組織から、83カ国185組織に拡大し、9つの地域グループだったのが、「アラブ・北アフリカ地域」が加わり10地域に増えるなど、グローバルな危機が深刻化するなかで、逆流に抗しつつ、危機打開を掲げてたたかう農民運動の存在感が増しています。
「アグロエコロジーは、地球の生命の継続性を保証する唯一の生産様式」です(ビア・カンペシーナ国際総会)。生産から流通、消費に至る食料システムと農政を変え、農民の生活や営農への支援、政策決定への参加を後押しすることで社会的公正を実現し、環境にも社会にもやさしい食と農のあり方を進める社会運動です。引き続き運動を前進させなければなりません。
危機に直面しているのに、これまでの枠組みから一歩も抜け出せないのは、アメリカ言いなり政治のしばりがあるからにほかなりません。日本が自給率向上に踏み出したらアメリカからの食料の輸入は減ってしまいます。米や乳製品の「過剰」で生産者が苦しんでいてもMA米やCAには指一本触れないのもそのためです。また、「戦争する国づくり」のための軍事同盟の強化と一体に、アメリカなどへの食料依存をいっそう強化する狙いがあり、農業予算を削減しようとしているからです。
今問われているのは、いつまでアメリカ言いなりを続けるのかです。国民との共同を一気に広げ、政治を転換することが今ほど求められているときはありません。
異常気象による豪雨や台風で農作物や施設に甚大な被害が発生し、猛暑や渇水による被害も深刻です。新潟では米の大幅な等級落ちや、稲や豆類が枯れる、北海道では猛暑でビートやブロッコリーに被害、多雨でニンジン、大根、キャベツが腐る、レタスや白菜の葉が巻かずに廃棄、ジャガイモはでんぷん不足、タマネギが日焼けで商品にならないなど、畑作や稲作に甚大な被害が出ています。酪農でも乳量低下などの影響が出ています。
しかし、政府の対策は収入保険一辺倒で、既存の制度にとらわれて猛暑・干ばつ被害は災害扱いしないなど、異常気象対策の名に値しません。さらに財政制度等審議会(財政審)建議は不十分なセーフティーネットの突き崩しさえ狙っています。
農民連は被害調査を行い、異常な猛暑・干ばつを災害として被害を把握し支援を行うことを求めるなど、苦難軽減のために奮闘してきました。不十分ではありますが、収入保険の見直しで、災害被害のあった年の収入を補正して補てん額を判定するなどの成果を勝ち取っています。しかし、まだまだ多くの農家が営農継続の岐路に立たされています。全農家が経営を継続できる気候危機対策をとらせ、異常気象・災害による離農者を出さないために、今後も奮闘することが求められます。
国内産備蓄米の政府買入価格が60キロ当たり1万1000円であったのに対して、アメリカ米の買入価格は1万4169円。売れないために飼料用にダンピング販売した赤字を政府が負担しているためです。
国内では、米価暴落を放置し、水田活用交付金を削減して農家から110億円を搾り取り、来年からは飼料用米交付金を減額するなど、必要な予算を削り続ける一方、不要なMA米をひたすら輸入し続け、赤字を垂れ流し続ける異常を放置することはできません。
MA米は義務ではありません。「100%輸入は義務」だと言い張って、アメリカ米が高騰すれば代わりをタイやオーストラリアから輸入して「77万トン死守」を貫く政府の異常は明白です。
転作作物も含めた23年産作付面積は大きく減少しました。来年産の米作りを諦めた経営や法人の倒産も増加しています。三菱総研は2030年の米需要632万トンに対し生産は514万トンで、120万トン不足すると試算しています。
いま、日本の農と食の危機的状況を打開するためには、水田活用交付金削減を中止し、米価暴落対策を実現することと、大幅な予算増が緊急に求められています。そのためにも無用のMA米輸入をただちにストップせよの声を大きく広げましょう。
[2024年2月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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