いまこそ要求で広く農民と結びつき、
国民の期待に応えられる農民連を!
農政を国連「家族農業の10年」の
方向に転換させるチャンス!
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農民連第24回定期大会議案
2020年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会
(3)都市農業振興計画の策定など自治体の役割を発揮させよう
「都市農業振興基本法」に基づいて策定が義務づけられている「基本計画」の策定状況は、287自治体のうち20年3月末で62自治体にとどまっています。都市農地を守るための具体的な「振興計画」を、都市農地の役割に期待する多くの市民と一緒に運動を進めましょう。
(6)種子を守る運動
(1)大きく広がった種子を守る運動
16年10月に規制改革推進会議が提案した「主要農作物種子法」(種子法)の廃止は、翌年の通常国会で衆参両院わずか12時間の審議で強行されました。同時に成立した農業競争力強化支援法は、公的試験研究機関が持つ種苗の知見を民間企業に提供することを義務づけました。公的育種の役割を放棄し、蓄積した種苗のノウハウまで多国籍アグリビジネスに明け渡して支配させるためのものです。
一方、アグリビジネスが種子を独占することや、種子の多様性が失われて食の安全が脅かされることへの不安が大きく高まり、20年10月末現在、22の道県で種子法の事業を基本的に継続する独自の条例が制定されています。
(2)農民の種子の権利を奪う種苗法改悪
種子法の廃止に加えて、20年12月2日、自家増殖を原則禁止し、農民に種苗を毎年買わせるための「種苗法改定」が、拙速な審議で強行可決されました。
政府は「優良品種の海外流出防止が目的であり、自家増殖禁止は登録品種だけで、許諾料を払えば自家増殖は可能だ。許諾料や価格は高騰しないから農家の負担はわずかだ」などとごまかしています。
しかし、国会の審議を通じて、自家増殖を禁止しても海外流出は防げないこと、登録品種は品種数ではわずかでも、実際の作付割合は地域特産品では5割以上もあること、公的種苗制度を骨抜きにして民間に開放し、遺伝子操作などで民間企業が開発した新品種の独占を狙っていることなどが明らかになりました。
「種苗法改定案」が提案されたのは20年2月の通常国会でした。農民連・食健連は「日本の種子を守る会」などと共同した国会行動や署名運動などを展開し、審議入りさせることなく継続審議に追い込みました。臨時国会でも全力で運動が展開されました。
改定案は強行されましたが、運動は大きな成果を残しました。農業・食料政策に不安をもち、地域で種子条例の制定運動や学校給食の無償化などに取り組んでいる広範な方々との連携が広がったことです。
こうした皆さんとの連携を力に、地域から日本農業と食料、農業生産の基礎である種子を守る運動をさらに大きく広げましょう。
4.家族農林漁業プラットフォームを全国に
19年から始まった国連「家族農業の10年」の運動は、農林漁業と食・農にかかわる草の根の人々が共同して農山漁村を活性化させるとともに、政府や自治体に声を届け、家族農林漁業を守り持続可能な社会をつくるものです。
「家族農業の10年」のスタートにあたって、FAOは各国に「プラットフォーム」(運動の拠点組織)の結成と行動計画づくりを呼びかけました。日本でも農林漁業者や食と農にかかわる団体や個人が参加し「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)」が19年6月に結成され、農民連が事務局を担っています。
21年、運動はいよいよ3年目に入ります。プラットフォームを全国津々浦々に網の目のように結成し、農山漁村を復興させるために、農民連や食健連が先頭に立ちましょう。
(1)政策提言と行動計画作成に向けた努力
FFPJは(1)「家族農業の10年」の啓発活動、(2)政策提言と政府との対話、(3)日本の行動計画の策定、(4)国際的な情報の共有と発信などの活動を行っています。とりわけ力を入れてきたのが、草の根の声を集めて行う政策提言です。
20年3月の「食料・農業・農村基本計画」の閣議決定に先立って、FFPJは次の提言をまとめ農水省に提出しました。(1)「家族農業の10年」、農民の権利宣言、食料主権の理念を基本計画に位置付けること、(2)現在の規模拡大政策を見直し、小規模・家族農業を支援の対象にすること、(3)アグロエコロジーの普及、(4)食料自給率の引き上げ、(5)自由貿易協定の見直し、(6)手厚い価格・所得補償の実施などです。
政府が閣議決定した新「基本計画」は、「家族農業の10年」や農民の権利宣言には一切言及せず、相変わらず自由貿易体制を前提に、規模拡大や輸出増加に偏重するものとなりました。
一方で、これまで「担い手」以外の農家を余計者扱いし、政策支援対象外に置いてきたのと比べて、「その他の多様な経営体」や「中山間地域」にも「配慮する」と述べ、一定の変化を示しています。現在FFPJは、この基本計画への提言を土台にしつつ、日本の国内行動計画の策定に向け、さらに広く意見を募り、提言をまとめる努力をしています。
(2)全国プラットフォームから地域プラットフォームへ
全国版プラットフォームに続き、19年10月には、プラットフォーム和歌山が結成され、続いて同県内に、古座川流域プラットフォームができました。福島県では、20年11月にプラットフォーム浜通りが設立され、二本松市を中心とした地域でも地域プラットフォーム「あだたら食農スクールファーム」のプロジェクトが動き出し、アグロエコロジーなどの連続講座に取り組んでいます。
「家族農業10年」の3年目の飛躍のために、(1)進み出した国内、国際的な経験の紹介と交流を通じて次のプラットフォームにつなげる、(2)国連「家族農業の10年」の理念と背景をさらに普及する、(3)プラットフォーム運動への参加を呼びかけるとともに、イベントや学習会などで広範な団体・個人と協力していく、(4)FAOなど国際機関との連携の強化、などを進めていきます。
5.国際連帯とビア・カンペシーナ
ビア・カンペシーナはコロナ禍で移動制限が求められる中、オンラインを活用して会議、活動交流を行い、今まで以上の存在感を発揮し、提案が実際に国際政治を動かしています。「国連食料への権利報告者」マイケル・ファクリ氏とも意見交換し、同氏の報告書には、ビア・カンペシーナの意見も反映されています。
ビア・カンペシーナは、家族農業の10年を実施するための国際運営委員会のメンバーとして活動し、小規模・家族農家の立場から発言を行っています。ビア・カンペシーナはまた、農民の権利宣言を主導した組織として、同宣言の実施についても力を尽くしています。
日本のODA(政府開発援助)予算を使い、アフリカ・モザンビークで続けられてきたプロサバンナ計画が中止に追い込まれました。小農の土地を奪い、日本向け大豆などの輸出基地にする計画を、現地のビア・カンペシーナ加盟の農民組織と農民連を含む日本の市民社会の協力でとん挫させたことは国際連帯の大きな成果です。
X.求められている生産点での活動強化、産直運動の原点に立った運動
1.生産と結んだ多様な産直運動の発展
「アグロエコロジー」への挑戦が求められているなか、安全・安心な農畜産物の生産が各地で展開され、高齢者や女性の力が生かされる直売所やインショップ、学校給食への納入など地産地消の産直運動が地域での生産の維持と活性化に貢献しています。地域の食品加工、醸造など業者と提携した取り組みも各地で広がっています。「ものを作ってこそ農民」の原点に立った取り組みを強化しましょう。
安全性・品質・収量など栽培に関する先進的な技術の継承・発展も喫緊の課題です。全国各地で実践されているモノづくり講習会や情報交換、先進技術の調査・研究などに取り組みます。
20年に計画されていた農民連研究交流集会や農民連ふるさとネットワークの研究交流の計画はコロナの影響で中止になりましたが、引き続き農薬・化学肥料の低減技術、有機農業などの安全で環境負荷の少ない農業技術、自給率の低い麦・大豆・飼料用作物の効率的な栽培技術など新技術研究と交流を行っていきます。
また、多様な生産と新たな販路の確保による経営の安定につなげるための取り組みも大いに進めていきます。
(新聞「農民」2020.12.14付)
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