いまこそ要求で広く農民と結びつき、
国民の期待に応えられる農民連を!
農政を国連「家族農業の10年」の
方向に転換させるチャンス!
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農民連第24回定期大会議案
2020年12月3日
農民運動全国連合会常任委員会
はじめに
1.第24回定期大会の意義と目的
2019年1月の第23回定期大会以来、農民連は多くの苦難を乗り越えて生産と農業経営、地域を守る多様な取り組みを進め、憲法・平和・民主主義を破壊する暴政や新自由主義農政とのたたかい、会員と新聞「農民」読者を増やす運動に全力をあげてきました。
20年は新型コロナウイルスの感染爆発で国民の命と健康、暮らしが脅かされ、災害の頻発、牛肉価格・米価の暴落など、農業経営に重大な影響がもたらされました。
農民連は、コロナ禍や災害で「一人の離農者も出さない」ために全国各地で奮闘し、成果を勝ち取ってきました。特に新型コロナ対策では、新たな加入者を含め、多くの会員から「農民連があってよかった」と喜ばれています。
農政を国連「家族農業の10年」の方向に転換させるために多くの人々と共同し、市民と野党の共闘発展にも力を尽くしてきました。
20年は会員と新聞「農民」読者で前進を勝ち取りました。全国で農民連の旗を高く掲げ、農民に寄り添って奮闘された全ての仲間の皆さんに敬意を表します。
こうしたなかで開催される第24回定期大会の目的は、(1)2年間の取り組みを踏まえて激動する情勢に立ち向かう新たな方針を確立すること、(2)組織の増勢をさらに加速させて飛躍を勝ち取る組織方針を確立すること、(3)運動の先頭に立つ役員を選出すること――にあります。
2.破たんした新自由主義農政か、国連「家族農業の10年」か
この2年間の最大の出来事は、安倍政権を国民世論の力で退陣に追い込んだことです。しかし政権与党は破たんした安倍政治を継承する菅政権を誕生させ、憲法無視、「自助」を押し付ける新自由主義を推進しています。
一方、野党陣営は、紆余(うよ)曲折はあったものの、過去3回の国政選挙で市民と野党の共闘を構築し、次期総選挙で野党連合政権の実現をめざす流れが作られつつあります。
野党共闘を市民の側から支えてきた「市民連合」が9月に立憲野党に示した政策要請は、市場原理だけに任せる農林漁業政策を排し、農家戸別補償の復活、カロリーベースで50%の食料自給率をめざすことなどを明記し、立憲野党がこれを大筋で受け入れたことは重要です。
市民連合の政策要請は、いまの農政に歯止めをかけ、国連「家族農業の10年」に踏み出す一歩になりうるものです。
次期総選挙は、亡国の「安倍・菅農政」に終止符を打ち、市民連合が提唱する農政に転換するために「野党連合政権」を実現する絶好のチャンスであり、農民連のあらゆる力を発揮してたたかうときを迎えています。
農民連の果たす役割はいよいよ重要であり、運動と組織を飛躍させることが求められています。
3.当面する農民運動の基本
◆国民の暮らしを支える公正な政治を実現し、家族農業を農政の真ん中に据えて農山漁村を蘇らせ、食料自給率を向上させるために、農政の転換を願う広範な人々、家族農業の役割の評価で一致する人々との連携を広げます。
◆コロナ禍で世界的に食料がひっ迫し、地域経済が停滞しているいま、ものをつくり、地域を守る農民連の役割がますます重要になっています。食料を生産する農民は持続可能な社会の最も重要な担い手です。全ての会員がそのことを認識し、多くの農民と生産のありようを探求し、元気な地域をつくるために力を尽くします。
◆農民の多様な要求を実現する運動をさらに発展させます。農民が自らの要求を自覚することを促し、組織の力と結んで一緒に実現することを基本に要求実現力を高めます。
◆農業でがんばる全ての農民と要求で結びつき、農民連に迎え入れることをあらゆる運動の基本に据えて活動します。そして、会員と読者現勢を1日も早く倍加することを目標に掲げて奮闘します。
T 2年間の活動を振り返って
1.現場と連携して「全国組織の力」を発揮した運動
農民連は、農民の切実な要求を取り上げ、現場と連携して政府を動かし、全国組織の役割を発揮してきました。
◆28年ぶりに発生して大きな被害をもたらした豚熱(CSF)で、渋る政府を動かして緊急ワクチン接種を実現。「豚コレラ」の呼称変更も実現させた。
◆牛マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策事業)のコロナ禍での生産者負担金免除など一定の対策を勝ち取った。
◆放牧を一律に禁止する政府に抗議し撤回させた。
◆相次いだ大型災害対策で、被災地と力を合わせて「担い手限定」をやめさせ、軽トラックも補助対象にするなど、より踏み込んだ対策を実現した。
◆攻撃を跳ね返し、大多数の農家を持続化給付金の対象にさせ、高収益作物次期作支援交付金制度の改善要求で政府を動かした。
◆農民連食品分析センターの検査データでグリホサートの使用を抑制する動きに貢献し、国内産小麦を使用して学校給食に提供する動きを広げた。豊洲市場で発生したカビの分析、北海道新幹線のトンネル工事での土砂から重金属・ヒ素検出などで市民・住民運動の前進に貢献した。
2.要求に基づく組織づくりでの新たな前進
「税金要求に強い組織」をめざし、養成講座テキストを作成し、税金対策部員養成に力を入れ、20年春の大運動では、新たに税金運動で仲間づくりを前進させる経験が広がりました。こうした努力は、持続化給付金の申請支援の取り組みでも生かされ、仲間づくりが一気に広がり、画期的な成果を生みました。切実な要求での学習(相談)会を広く宣伝し、会員の紹介も促して成功させ、「農民連に入って一緒に要求を実現する」原則を貫くという会員拡大の定石をつかんだ組織が生まれ、前進の可能性を広げています。
3.国連「家族農業の10年」運動の先頭に立ってきた
農民連は、19〜28年の国連「家族農業の10年」運動を担っています。前大会に国連食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所のチャールズ・M・ボリコ所長を招き、さらに、全国研究交流集会で講演していただきました。全国各地での「家族農業10年」学習会やシンポジウムなど、多彩な取り組みを展開してきました。コロナ禍を踏まえた農民連ブックレット『国連家族農業10年』は各方面から注目されています。
19年6月に、日本での「家族農業10年」運動を担う「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)」が結成され、農民連は結成に貢献し、事務局を担って運営を支えています。和歌山、福島などで県・地域プラットフォームが立ち上げられました。
プラットフォームは20年3月の「食料・農業・農村基本計画」の策定にあたって「提言」を行い、広範な団体との意見交換を行い、「基本計画」に不十分ながらも「家族農業」の位置付けを記述させたことは大きな成果でした。
4.SNS活用で市民との連携を切り開いた
20年5月に安倍政権の「検察庁法改悪」に抗議するツイートが1000万を超え、成立を阻止しました。「種苗法改悪」に反対する請願署名やネット署名もSNSを通じて広がり、通常国会で成立を阻止する大きな力になりました。こうした取り組みの発展が求められます。
(新聞「農民」2020.12.14付)
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