いまこそ要求で広く農民と結びつき、
国民の期待に応えられる農民連を!
農政を国連「家族農業の10年」の
方向に転換させるチャンス!
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農民連第24回定期大会議案
2020年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会
(3)直接支払いの改善・充実を
直接支払い(多面的機能・中山間地・環境保全型農業)は、国土・環境の保全に果たす農業の多面的機能に対する支援や中山間地域・農村集落の維持、環境保全型農業や有機農業の推進に対する支援策として有力な役割を果たしてきました。
直接支払いは、もともとは平場での生産費を償う価格保障をベースに、コストが高くつく条件不利地域に対する補償としてEUでスタートしました。
「日本型直接支払い」は、EUとはやや性格を異にし、畦畔や水路などの農地機能を維持するための共同管理作業に対する集落・集団への補助からスタートして、農地維持、環境保全、有機農業など農家個々への補助を含むものへと発展してきました。
直接支払いは、農家への支援にとどまらず、農村の維持や気候危機の時代における地球環境の保全、SDGsの実現、都市と農村の交流などを実現するうえで、今後も大きな役割を果たすでしょう。
同時に、直接支払いは、高齢化と後継者不足のなかで壁に直面しており、後継者確保に本腰を入れるとともに、実務の煩雑さの改善や市町村のバックアップ体制の強化、十分な予算の確保などの改善・充実が必要です。
(4)収入保険について
収入保険制度は、TPPなどによる農産物輸入自由化、米の生産調整配分廃止、戸別所得補償廃止による価格下落、所得減少の受け皿として18年にスタートしましたが、欠陥だらけの制度です。
(1)生産費補償が度外視されている、(2)補てん基準価格が過去5年間の単純平均で計算されるため、価格暴落の影響をモロに受けて基準価格が下がり続ける、(3)補てんは基準価格の8割にすぎず、ナラシ対策の9割に比べて不利、(4)掛け金が高い(保険料の農家負担は50%、ナラシ対策の農家負担は25%)、(5)加入資格を青色申告者に限るため対象は全農家の25%にすぎない、(6)災害共済を収入保険に一本化する方向であり、災害補償からも大部分の農家がはじかれる――など。
北海道中央農業共済組合の試算によると、ナラシ対策+農業共済の組み合わせと収入保険を比べた場合、収入保険が有利なのは価格下落が30%以上の大暴落の時だけであり、20%台の減収や下落時にはナラシ対策+農業共済の組み合わせの方がはるかに優れています。その結果、19年の加入者は2万3000戸と、全販売農家の2%にすぎません。
政府は、アメリカの制度を参考にしたと言いますが、アメリカは生産費を償う価格保障をしっかり維持したうえで収入保険を補助的に仕組んでいるのであって、価格保障なしで収入保険一本の日本とは大違いです。
同時に、大災害の頻発とコロナ暴落のもとで、災害と暴落に同時に備えることができるという意味で、収入保険に一定の注目が集まっているのも事実です。
本格的な価格保障確立までの対策として、収入保険の問題点を是正するため、以下の改善を要求します。
(1)基準価格になんらかの形で生産費を織り込む、(2)基準価格の計算にあたって極端な暴落年を除外する、(3)補てん率を90%に引き上げる、(4)農家負担をナラシ対策並みの25%に引き下げる、(5)白色申告者も対象にする、(6)災害共済で行われている自治体の掛け金助成を実現する。
2.日米FTA、RCEPなど総自由化攻撃をめぐる情勢とたたかい
コロナ危機のもとで、新自由主義と自由貿易からの脱却が求められていますが、菅政権は、東アジア地域の包括的経済連携(RCEP=アールセップ)を締結し、「TPPを拡大して、太平洋自由貿易圏(FTAAP=エフタープ)の実現をめざす」と、自由化強行を宣言しています。
RCEPは国内総生産(GDP)、人口ともに世界の3割を占めます。さらにアメリカ、中国、ロシアを含む21の国・地域が参加する予定のFTAAPは世界貿易量の5割、GDPの6割を占める超巨大FTAです。
まともな国家・世界ビジョンを示せず、目先の「成果」を追求するだけの菅“近視眼”政権に地球と人々の未来を託すわけにはいきません。
(1)日中韓FTAに道開くRCEP
政府は「RCEPで重要品目と野菜は守った」と弁解していますが、三重四重のごまかしです。
第1に、米・牛肉・乳製品などの重要品目は、関税削減や撤廃を行わない「除外」扱いとされていますが、「更なる自由化のための再協議が5年後から行われる」と指摘されており、いつまで続くのか保証はありません。日米貿易協定やTPPでは、2国間の約束に再協議規定が隠されていましたが、RCEPでは未公表です。私たちは協定の全貌公表を強く要求します。
第2に、野菜・果実は全て「除外」ではなく、冷凍枝豆、キウイ、マンゴーなど10数品目の関税撤廃を約束しています。また、キャベツ、レタス、トマト、アスパラ、ごぼう、みかん、メロンなどについては、中国向けには関税撤廃を約束しています。
第3に、政府は「輸出がどんどん増える」と宣伝していますが、農産物輸出の重点品目である米と牛肉については、中国、韓国は関税を維持したままです。最大の輸出品目である自動車の関税は撤廃されません。「輸出が増える」は誇大宣伝にすぎません。
第4に、RCEPは実質的に日本が中国・韓国と初めて結ぶFTAですが、中国はRCEPをテコにして「日中韓FTA」交渉の促進とTPP加入を狙っています。
習近平国家主席は4月に「国際的なサプライチェーン(供給網)を我が国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」と、覇権主義をむき出しにし(日経11月16日)、中国政府は、品質が高い輸出用農産物の生産基地の建設を地方政府に指示しました。
中国は日本の農産物輸入先第2位、野菜やりんごジュース輸入先では第1位、韓国はトマト、パプリカの輸入先第1位です。日中韓FTAに道を開くRCEPの脅威は明らかです。
(2)日本が「加害国」になる危険を直視し、アジアの民衆と連帯してたたかおう
RCEPで日本がアジアに対する「加害国」になる危険性を直視しなければなりません。交渉でASEAN(東南アジア諸国連合)諸国やインドが強く抵抗したテーマは、「知的財産」と「投資家と国家の紛争解決手続規定」(ISDS)問題でした。
「知的財産」は農民の種子に対する権利を侵害し、安い医薬品の提供を妨げ、ISDSは国家主権を奪って多国籍企業の利益に奉仕する悪名高い条項で、アメリカと日本が他国の反対を押し切ってTPPに盛り込みました。RCEPの「TPP化」を狙う日本が猛烈な圧力をかけましたが、TPP並みの規定は見送られました。しかし、ISDSについては“継続協議”扱い、知的財産は“玉虫色”決着になり、火種は残ったままです。
RCEPの「TPP化」、TPPの拡大、FTAAPを推進する日本政府と多国籍企業の横暴を許さず、アジアと世界の民衆と連帯してたたかいましょう。
(3)バイデン政権は米に焦点の恐れ 日米FTA交渉の局面が大きく変わる可能性
バイデン政権の誕生は、トランプ政治による対立と分断に抵抗する市民運動の結果であり、新自由主義の行き過ぎをただす政策を掲げています。
同時に、この転換は異常なトランプ政治から伝統的な覇権主義的政治への回帰の側面を持つものであり、とくに貿易・対日政策の動向に警戒が必要です。日米貿易摩擦が激化したのは、共和党政権下ではなく、民主党政権下だったという歴史を考えれば、決して楽観はできません。
第一に、バイデン政権は主な工業製品を国内で生産し、公共事業などに使う製品を全て米国製に限る「バイアメリカン法」を推進するとともに、輸入を規制する一方で、米国の生産と輸出を促進することを貿易政策の目標に掲げています。「アメリカ第一主義」に変わりはありません。
第二にバイデン政権は、圧力の看板をトランプ政権の「貿易赤字解消」から「環境政策重視」に切り換えて、電気自動車など自動車の「グリーン」化を前面に押し出し、アメリカの自動車関税撤廃はそっちのけで、新たな対日圧力を強める可能性が高いことです。
また、中粒米の主産地・カリフォルニアは民主党の牙城であり、バイデン政権が米に焦点を当てる可能性があります。日米FTA交渉の局面が大きく変わる可能性があることを警戒しなければなりません。
第三に、バイデン政権はアメリカのTPP復帰を模索していますが、これはトランプ政権のTPP脱退によって、現在「適用停止」になっているISDS、医薬品の特許期間の延長などが復活し、最悪のTPPをよみがえらせるものであり、重大です。
バイデン氏は副大統領としてTPPを推進した中心人物です。元外務省幹部の孫崎享氏は「バイデン氏を支えるのは軍産複合体とグローバル企業だ。バイデン氏の勝利は日本にとっての福音ではない。沈没の序章だ」と指摘しています。(「サンデー毎日」11月12日)。
(4)野党連合政権を実現し、総自由化攻撃にストップを
腰をすえてたたかうべき局面を迎えています。TPPや日米FTAに野党が一致して反対し、戦争法・憲法改悪反対と並んで、野党と国民的な運動の共同・連帯は戦後史上空前の規模に達しています。日米FTA、TPP拡大、RCEPの「TPP化」などを阻止する野党連合政権を誕生させようではありませんか。
(新聞「農民」2020.12.14付)
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