いまこそ要求で広く農民と結びつき、
国民の期待に応えられる農民連を!
農政を国連「家族農業の10年」の
方向に転換させるチャンス!
(5/10)
農民連第24回定期大会議案
2020年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会
3.消費税の5%減税実現、インボイス導入阻止の運動
19年10月に増税された消費税による消費の落ち込みは、政府の統計からも明らかです。農民連は消費税廃止に向けて、当面5%に引き下げることを求め、消費税廃止各界連絡会やストップ10%ネットワークと力をあわせて運動してきました。コロナ禍対策で世界28カ国が消費税(付加価値税)の減税を実施しています。すべての国民に恩恵が及ぶ5%減税を要求して運動を強めます。
23年から消費税のインボイス(適格請求書保存方式)制度が始まります。インボイス制度は、免税事業者を取引から排除ないし不利益をもたらす最悪の税制です。消費税5%減税とインボイス制度導入阻止は一体です。直ちに消費税5%へ、インボイス制度は廃止せよの運動を広げましょう。
4.地球温暖化とのたたかい
地球温暖化が食料生産と人々の暮らしに重大な影響をもたらしています。
日本でも18年7月には西日本豪雨災害が大きな被害をもたらし、19年には、瞬間風速57・5メートルもの暴風が房総半島を襲った台風15号に続いて台風19号が上陸し、観測史上最高の降雨量を記録するなど、かつて経験したことのない空前の大災害が連続して発生しました。
大型災害に加え、干ばつや長雨、日照不足、異常高温などの農業生産への悪影響も深刻です。不作や減収が続けば、農民の生産意欲もそがれ、離農の原因ともなる深刻な問題です。
(1)災害対策を求める農民連の運動
農民連は災害発生のたびに「農民の苦悩あるところ農民連あり」「災害で一人の離農者も出さない」を合言葉に、現地の組織と協力して調査や激励を行うとともに、国や自治体に対して連続的に要請を行い、対策を要求してきました。
19年11月に政府が発表した支援策は、不十分さはあるものの従来の枠を超えた、農民の要求を反映した内容となっており、運動の成果です。とくに、“担い手偏重”の支援策を「被害を受けた全農家」に是正させたことは、農政の流れに一石を投じるものとなりました。
しかし窓口となる自治体の柔軟性を欠いた対応で、支援制度を農家が活用できない状況が各地で発生しており、自治体の体制強化や事業趣旨の周知徹底が課題となっています。
(2)地球温暖化を防止する政治・経済システムへの抜本的転換を求める運動
IPCCは、気候変動による最悪の事態を回避するためには、世界の気温上昇を1・5度までに抑えること、そのために50年までに温室効果ガスの排出を「ゼロ」にすべきと警告しました。
日本政府はこれまでまともな目標を掲げず世界から強く批判されてきましたが、菅首相が10月26日の所信表明演説で「2050年までに日本の排出を全体としてゼロにする」ことを宣言し、11月20日には国会で「気候非常事態宣言」が採択され、遅きに失したとはいえ、日本でも政策の見直しが始まりました。
しかし、現在の政策では温暖化を止めるには全く不十分です。原子力と石炭火力への依存をやめて、30年までに排出を半減させる目標に引き上げること、再エネ・省エネを推進することなどが求められています。
(3)政府に原発ゼロを決断させ、再生可能エネルギーを広げる運動
今なお3万7000人もの人々が故郷に帰れず、事故収束の見通しが立たない福島原発事故の現実は、安全な原子力発電は存在しないことを示しています。原発の再稼働を断念し、今すぐ全廃すべきです。
原発事故による放射能汚染水の海洋放出や汚染土壌の再利用、「核のゴミ」処分場など、原発推進政策の破たんを農山漁村に押し付ける動きは許されません。
20年9月の「生業(なりわい)を返せ!地域を返せ!」福島原発訴訟の高裁判決は、国と東電の責任を断罪する画期的なものでした。国と東電は原発事故を真しに反省し、全面賠償に向き合うべきです。
避難指示の解除と賠償打ち切りは、被災者に新たな苦しみを押し付け、福島を切り捨てることにほかなりません。また原発事故の影響で、今なお営農上の困難に直面している福島農業の条件不利を補償する、新たな直接支援制度も必要です。
太陽光発電やバイオマス発電など再生可能エネルギーの活用は、農村にこそ資源と可能性があります。農民連組織が自治体や市民団体との共同をはかりながら、事業推進の要の役割を果たすことが求められています。
5、憲法を守り、核兵器のない世界を
菅首相は、9条改憲をねらい、敵基地攻撃能力の保有も推し進めようとしています。敵基地攻撃は、アメリカの先制攻撃の一翼を担うものであり、憲法9条にも国際法にも違反し、歴代の内閣が基本方針としてきた「専守防衛」とも両立しません。日本が敵基地攻撃できる能力の保有に踏み出した場合、周辺国との緊張を高めるばかりか、数兆円規模の大軍拡が避けられず、国民生活も破壊しかねません。
菅政権は、沖縄県民の民意を無視して辺野古新基地建設を強行しています。大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事が必要で、18年12月から始まった埋め立ては2%しか進んでいません。辺野古新基地建設反対、埋め立て反対の世論を広げ、普天間基地閉鎖・無条件撤去、日米安保条約廃棄に向けて運動を進めましょう。
21年1月22日に核兵器禁止条約の発効が確定しました。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は「署名しない」としています。「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」に取り組みます。
憲法を守り、一人ひとりの命を守る政治への転換を求め運動を強めていきましょう。
W 地域から生産を守り、多様な要求を実現する運動
1.米を守り、水田農業を地域から守るたたかい
12年に発足した安倍政権は、戸別所得補償を廃止し、18年から国による生産目標数量配分も廃止しました。需要がある米だけを作り、安定的な生産のためには実需者との直接契約、事前・複数年契約を増やせと生産者・生産者団体に押し付けています。
(1)公的コントロールなき米市場、止まらぬ米価下落
新型コロナウイルス感染拡大で農畜水産物の需要が「消滅」し、産地や流通段階で米の在庫も積み上がり、19年産米の市場取引価格は5月の連休明けから急速に下落しました。
新潟や東北で20年産米のJA「概算金」が60キログラムあたり700円〜900円(マイナス6%程度)引き下げられているなかで新米出荷が本格化し、庭先集荷価格や業者間取引価格は下落の一途をたどり、市場価格は前年産から2000円以上3000円近くも下落しています。
民間流通の取引価格は、需給が締まっている時には農協出荷米より高値で取引されますが、需給が緩和して米価が下落傾向になれば農協出荷米より安値で取引されます。
需給弾性の低い米を市場に任せれば、わずかな作柄変動や需要の変化で、価格は乱高下するのは当たり前で、公的な需給コントロールなしに生産の安定はありえません。
農民連は、19年産米を備蓄米として市場から隔離し、20年産米の価格下落を阻止することを求めて農水省に要請してきました。JA全中(全国農協中央会)、米卸や集荷、小売りの全国団体などの米穀関係団体への要請、10・1米価暴落阻止中央集会を開催するなど、米農家の経営を守り、日本の米作りを守るために奮闘してきました。
(2)史上最大の生産調整の押し付け
政府は米価維持のためと称して21年産主食用米の適正生産量を史上最低の693万トンに設定し、さらに30万トン以上を自主的に減産しろという「基本指針」を決定しました。
「高米価」は消費減になると脅しながら、米価下落を招いたコロナ禍による「過剰」の責任を生産者になすりつけて史上最大の生産調整を押し付けることは許されません。米価下落と需給の混乱、生産調整拡大の押し付け、繰り返される自然災害――このままでは稲作農家の総撤退を招きかねません。
(新聞「農民」2020.12.14付)
|