「農民」記事データベース20200706-1415-11

ネオニコ使わない取り組み
各地で始まる
(2/4)

農と食の安全守るため何が必要か

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ネオニコ系を使わない
米づくりに切り替える

新潟県十日町市・相澤堅さん

 私がネオニコ系農薬を意識したのは、飼育していたタガメに川魚をあげたところ、全滅したことがきっかけでした。私が農業をしているのは、山間地です。河川は源流に近く、水はきれいだと思っていた私にとっては事件でした。この直後、分析センターの八田さんと話す機会があり、河川に流れ込む農薬の影響の可能性。そして、ネオニコ系農薬という言葉を知りました。

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山の中の田んぼで米作り

 学ぶほど、怖くなるネオニコ系農薬。私の農園では、保育園との取引や子どもたちの体験のため、翌年から減農薬に踏み切りました。

 色彩選別機を導入し、カメムシ防除を取りやめましたが、経営に問題はありませんでした。翌年からは、苗箱に入れる農薬も非ネオニコ系農薬に変えました。そうしたら、育苗プールで死んでいるカエルの姿が見えなくなりました。これほど影響が出るのだと、当時は驚きました。

 私は、タガメを通して、農薬を意識し、ネオニコフリー(ネオニコ系農薬を使用しない)の運動を行うようになりました。無農薬は、リスクを考えると環境を選びますが、代替の農薬は、環境を選びません。まずは、ネオニコフリーの農薬を探して試すことから、始めてみるのはいかがでしょうか?


生態系のバランスを重視
斑点米除去に色彩選別機

島根県邑南町・長谷川敏郎さん

 先代から米作りを引き継ぎ30年余り、カメムシ防除の農薬散布はせずにやってきました。通称「ナイヤガラ」での粉剤散布には抵抗があり、感覚的にも出穂後の農薬散布は輸入農産物のポストハーベストと同じではないかと考えていました。

 現在は、ツバメたちとの協働で1・2ヘクタールの田んぼの生態系のバランスを重視した米作り、消費者への精米の直接販売を経営の中心に据え、斑点米除去は農協の精米センターの精米色彩選別機を利用しています。

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田んぼの溝切りをする長谷川さん

 JAの「稲作暦」による慣行栽培では出穂前と出穂後数回、ネオニコチノイド系農薬散布を指導しています。

 10アール当たりトレボン粉剤1回、スタークル粉剤2回散布の場合、540キログラムの収量なら、玄米30キログラム換算で農薬代は270円になります。

 私の地元の農協ライスセンターには大型の玄米色彩選別機が町の補助で導入され、30キログラム240円(税別、2等)で処理できます。経費を比較するとカメムシ防除の農薬代と同じくらいになります。

 物理的に除去できれば、農薬散布をやめることは可能だと思います。


安全な農作物を作るため
ネオニコフリーの栽培を

福島県農民連・佐々木健洋事務局長

 昨年からネオニコフリーの取り組みを開始しました。ネオニコ系農薬の毒性が報道される中、「安全・安心な国産農作物」を掲げる農民連が、いのちに関わるこの件を無視するわけにはいかないと、危機感を持って始めました。

 まずはネオニコ系農薬の代わりとして、忌避剤のニームを試しに使用。米だけでなく花や果樹農家にも無償で配布し、テストをしています。

 産直米の栽培計画を見ると半数近くはネオニコフリーの栽培ができそうな生産者がいます。可能な人から取り組んでもらって、ネオニコフリーのシールを張って少しでも高く販売できるようにしたいです。まずは少量でも保育園などの出荷からネオニコフリーの米に切り替えられればと考えています。

 取り組む中で、葛藤もあります。「農薬を使わないと広い面積を耕作しきれない」「手間が増えて人手が足りなくなる」などの声もあります。しかし基準値以下でも毒性があるような農薬であることなどネオニコ系農薬の実態を、生産者や新日本婦人の会のみなさんと学習を重ねています。

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大阪の新婦人との学習会

 いまは役員の協力で少しずつ、ネオニコフリーでの栽培の実践例を増やしているところです。新婦人にも色彩選別機で除去できるので、カメムシ被害による2等米でも産直米として扱ってもらえるよう協議しています。

 今年から新しく環境保全型農業直接支払交付金の活用も呼びかけ始めました。自分たちのやっていることがそのまま交付金の対象になる人が結構います。こうした制度も活用し、農家の所得を支えながら、少しでも安全な農作物が作れるように、取り組んでいきます。

(新聞「農民」2020.7.6付)
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2020年7月

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