「農民」記事データベース20170206-1249-08

農民連第22回大会への
常任委員会の報告
(大要)
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5.農産物を通じた消費者・国民との連携を

 「ものを作ってこそ農民」の真価を発揮し

 「ものを作ってこそ農民」の真価を発揮し、地域の仲間と力を合わせて生産を守ることは、家族農業を農政から排除するアベノミクス農政への、何よりの反撃です。また、生産を守ることは、地域の活性化と循環型の地域作りの最も重要な課題です。特に、消費者と共同して生産を守る運動、地場の中小流通業者と提携した運動など、産直運動をいっそう発展させることが求められています。

 長野県上伊那農民組合の「白毛餅」は、草丈が長く倒伏しやすく作りにくいがおいしい、地域に古くから伝わるもち米でした。絶滅しかけていたところを、農民連が復活させ地域の話題になっています。

 高知の土佐文旦が、グレープフルーツの輸入に押され、つぶされそうになる中で、農民連や新婦人の会員との産直を全国的にとりくむ中で復活を遂げ、産地を守りました。

 沖縄パインも、パイン缶詰の自由化で産地がつぶされそうになる中で、生食で産直ができないかと挑戦し、郵便局とも掛け合って全国にパイン産直を呼びかけました。今では農協も手がけるなど一般的になったパイン産直も農民連が始めたことでした。

 多様な産直運動の発展を

   新婦人との産直運動は農民連の産直運動の原点
 新婦人との産直は、共同のたたかいの中から生まれました。牛肉・オレンジの自由化が決まり、アメリカ農産物の売り込みにアメリカントレインが全国を走りました。そのとき「安全な食料は日本の大地から」のスローガンを掲げて農民連と新婦人などがイベントが実施される各駅で抗議宣伝をしました。その当時千葉県の農民組合と新婦人が公園で農産物を販売しながら地域にアピールしていたときに、新婦人の役員の「こんな新鮮な野菜が定期的に届いたらいいね」のつぶやきから始まったのが新婦人との野菜産直です。

 1989年10月に千葉県でスタートし、90年4月に新婦人本部が農民連と提携した産直の全国的なとりくみを提起しました。農民連も90年12月に、新婦人との産直に対応する交流会を開き、「新婦人との産直は、単なる農産物の産直取引ではない。国民の食料と健康を守る活動の一環としてのとりくみだ」「やってもやらなくてもいい課題ではない」と全国でとりくみが始まりました。その後、93年12月に当時の細川内閣が受け入れた米輸入自由化と「米パニック」が重なり、日本の米を守る運動として米産直が始まりました。そして、農民連と新婦人の20数年の産直運動の積み重ねを生かし、今日の食と農をめぐる情勢や震災・原発事故による様々な困難を乗り越えるために、2015年「産直運動の新たな共同目標」が合意されています。新婦人との産直の原点に立ち戻り、日本の農業を守る産直運動を大いに進めましょう。

   米を守る運動について
 現在の米の販売価格は5キロ1690円。茶わん1杯のご飯に換算するとわずか22円です。農家の手取りは1俵(60キロ)1万1000円程度にすぎません。これでは農家が作り続けるのは不可能です。

 私たちの試算では、茶わん1杯30円であれば約1万6000円で、農家は生産費をまかなうことができ、35円であれば約2万円で農家の後継者が育ちます。

 政府は米の生産費を4割下げろと言い、大手量販店などは価格破壊に狂奔していますが、これでは農家も農村も失われてしまいます。

 「茶わん1杯30円、35円が日本の米を守り、国産米を食べ続けられることにつながる」。こうした声を大いに高め、日本の米を守る運動を広げましょう。

 前回大会以降、米卸団体の全米販、米小売団体の日米連、新婦人、主婦連などに「日本の米を守る運動」を呼びかけ、米飯学校給食の拡大や給食費無償問題などで懇談を行ってきました。

   地産地消の学校給食を求める運動
 食の安全への関心が、若いお母さんたちの中で高まっており、安全な食材を学校給食で使ってほしいという運動が起こっています。奈良県では「学校給食を考える会」の事務局を農民連と生協で引き受け、市町村アンケートにとりくみ、県内産自給率を明らかにする一方で、「玉ねぎプロジェクト」として玉ねぎなどを若いお母さんたちと一緒に作って学校給食の食材に提供しています。

 学校給食の無償化が実現している自治体が55市町村、一部補助を実現している自治体が362市町村以上に広がっています。すべての子どもが安心して学校給食を食べることができるよう父母や教職員と一緒になって自治体に働きかけましょう。

   絆を深める交流のあり方
 交流のあり方についてですが、先日、千葉・多古町旬の味産直センターの30周年記念祝賀会に参加させていただきました。旬の味センターの歴史は、挑戦の歴史であり、交流の歴史でもありました。生産者の顔の見える関係にとどまらず、産地丸ごと・農村丸ごとの交流・体験をしてもらい、絆を深める交流のあり方を学びました。特に毎年11月に開かれる「BRAぶらしんのみ祭り」では、村全体が会場となり、七五三の行事料理や、野菜の煮物、てんぷら、きのこ汁、豚汁、焼き芋、田舎まんじゅうなど数え切れないほどの料理が会場となる家々で振る舞われます。「日本には農業と農村が必要だ」の合意作りをすすめる交流だと感じました。

 食の安全を守る食品分析センター

 こうした生産者と消費者の合意運動を支えてきたのが農民連食品分析センターです。

 アメリカは日本に対して食の安全基準の緩和を要求してきています。日本政府はアメリカの要求に押され、食品表示制度や残留農薬基準を緩和するなど、農産物や加工食品の輸入をしやすくする体制を整えてきました。

 2015年5月、厚生労働省は、世界的に議論が高まっているネオニコチノイド系農薬の残留基準を、アメリカやEU(欧州連合)の基準よりも大幅に緩和しました。外国農産物やその加工品を「より輸入しやすく」しようというものですが、基準緩和に対して「日本の農薬使用量は世界一」などという宣伝が強まっているように、「日本の農産物は安全なのか」という攻撃を行い、消費者との分断を図ろうとしています。

 こうした中で、食品分析センターの機能を強化して、輸入農産物の危険性を暴露すると同時に、私たちの作った安全・安心な農産物を科学的に証明し、国民と深く結びついて消費してもらう体制を、これまで以上に広げることは待ったなしの課題となっています。

   2つの機器の導入で機能強化を
 農民連は、15年12月、農民連食品分析センターの機能強化のために二つの機器の導入を決め、そのための募金を提起しました。

 ひとつは、遺伝子組み換え分析機器PCRで、昨年6月に導入し、試験的に遺伝子組み換えでない大豆を使った豆腐などを分析し、新聞「農民」でも発表しました。

 もうひとつは高性能の農薬分析機器LC/MS/MSで、昨年11月に導入し、分析準備に入っています。いずれも2月から検査の受け入れが可能となる見込みです。

 強化募金は、今までに一次目標の8割に達する協力をいただきました。昨年11月には全国商工団体連合会(全商連)と「食の安全に関する協定」を結び多額の募金を協力いただくなど、多くの団体・個人の方々からご協力をいただきました。ありがとうございました。

 しかし、二つの機器がグレードアップしたため機器の価格が予定より高くなったため、機器の購入にあたっては一部を借入金に頼らざるをえませんでした。そこで新たな募金目標を都道府県別に提起させていただきました。

 引き続き、募金目標の達成に向けた努力をお願いします。会員数に応じた数の募金リーフを大会後、お送りしますので、再度会員に呼びかけるなど、ご協力をお願いします。

(新聞「農民」2017.2.6付)
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2017年2月

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