「農民」記事データベース20170206-1249-06

農民連第22回大会への
常任委員会の報告
(大要)
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はじめに

 今大会の大きなねらいのひとつは、6年間のたたかいでTPPを漂流に追い込んだ私たちのたたかいの成果をみんなのものにすることです。

 一部の人たちの中から「トランプ新米大統領がTPPをつぶした。もっと危険な経済協定が待っている」という議論もありますが、大事な点が見落とされていると思います。

 ひとつは、TPPを米大統領選挙の争点に押し上げたのは「民主的社会主義者」を名乗るサンダース上院議員を中心にした、グローバリズムに反対し、格差と貧困の是正を求める国民のたたかいでした。このたたかいがTPP参加国の国民のたたかいが合流し、国際連帯の力となったことでした。

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報告する吉川利明事務局長

 もうひとつは、「アベノミクス」成長戦略の柱であるTPPの漂流は、安倍政権にとって致命的な出来事だったということです。確かにトランプ政権の布陣や言動を見れば今後、警戒は必要ですが、アメリカ追随の安倍政権を追い込むチャンスを切り開いたという面を直視することが重要です。

 安倍政権は先の臨時国会でTPPが発効する見通しがないにもかかわらず、アベノミクスの看板政策であるTPPの漂流を認めるわけにはいかず、「TPPはまだ生きている」と強弁するための批准を強行しました。追い詰められているのは安倍政権です。

 また、今大会のもうひとつのねらいは、国民と野党の共同の発展で安倍政権を打倒し、農政の転換を勝ち取る展望をつかむことです。参議院選挙で野党統一候補が11人も当選するという大きな成果をおさめました。国民と野党の共同をさらに発展させ、来るべき総選挙で自公とその補完勢力を少数に追い込む、ここに私たちの要求実現の展望があります。そのためにも、農業・農協攻撃に対する地域からの総反撃を組織することが今、求められています。

1.日本の農業の現状

 日本の食料自給率はカロリーベースで39%と異常に低く、主要国の中で最低水準です。基幹的農業従事者数は1985年の346万人から2015年には177万人と30年間で半減しました。

 農業総産出額は85年の11・5兆円をピークに2014年は8・4兆円と27%も減少し、農業所得も4・4兆円から2・8兆円と36%も減少しています。米価については、1俵あたり85年には1万8500円の水準だったものが、2015年には1万円程度と45%も大暴落しています。

 一方、労働者の年間平均給与は、伸び悩んでいるとはいえ30年間で25%上昇しており、都市と農村の格差はさらに拡大しています。

 農業所得の低下は、農業で生計を立てることを困難にし、全国の多くの農村で地域のコミュニティーを維持することを困難にしています。

 日本農業の危機は、自然発生的なものではありません。

 歴代の自民党政権が“自国の食料は自国で賄う”という食料自給政策を投げ捨て、大企業とアメリカ言いなりに農産物の輸入自由化を推し進めてきたからです。

 農民連行動綱領は、「異常な事態がこのまま続けば、単に農民の経営と生活上の問題にとどまらず、民族の自立と主権にかかわる食糧の安全・安定的な供給を危うくし、わが国の将来に重大な禍根を残すことは必至である」と指摘し、「農業・食糧、健康に国民の関心が高まり、農産物を通じた農民と消費者の交流の深まりにとどまらず、労働者、農民、消費者の『国民の食糧と健康・日本農業を守る』共同行動を大きく発展させることにこそ農業の危機打開の道がある」と強調しています。

2.国民的な運動の高揚に合流し

 こうした中で、私たちは国民的な運動の高揚に合流し、安倍暴走政権をストップさせ、農政の転換を求める運動を進めることに、要求実現の展望があります。

 東日本大震災・原発事故以降、市民が政治に自分の言葉で声を上げる動きが広がっています。2015年の戦争法反対のたたかいは、様々な分野の人々が立ち上がった“市民革命”というべき運動に発展しました。

 戦争法反対を軸に、原発ゼロ、TPP反対、消費税増税反対、沖縄問題、社会保障など「一点共同」のたたかいが、「安倍NO!」で総結集し、安倍政権を追い込むための「野党共闘」を後押ししました。そして16年7月の参議院選挙で、32の全ての1人区で野党統一候補を擁立し、11選挙区で勝利したことは、画期的な成果であり、その後のたたかいの足場を築くものでした。自民党が「重点区」と位置づけた1人区のほとんどで野党統一候補が勝利しました。東北・甲信越では野党統一候補の8勝1敗です。このことは、戦争法・憲法の問題に加えて、TPP・低米価などで安倍政権に農民の厳しい審判が下ったことを意味しています。

 新潟県知事選挙で「原発再稼働反対」を掲げる米山候補が当選し、国民と野党の共同がさらに前進しています。

 野党と市民が本気で共闘すれば、自民党に打ち勝てることが明らかになりました。

 4野党は、臨時国会ではTPPや年金カット法案、カジノ法案などで結束してたたかいました。そして、次期総選挙での「協力」を確認し、協議を進めています。

 来る総選挙は安倍政権を打倒し、日本農業の未来を切り開く選挙です。

 戸別所得補償制度の復活で未来をひらく

 戸別所得補償制度の復活は、民進、共産、社民、自由党の4野党が一致する政策です。総選挙で自公とその補完勢力を少数派に追いつめ、4野党の野党連立政権が実現すれば、戸別所得補償制度の復活も可能です。1反(10アール)1万5000円の復活は、稲作経営の未来をひらく政策となります。

 2018年から1反当たり7500円の米直接支払交付金の廃止、国による生産目標数量配分の中止は、国の主要食料の需給と価格の安定に対する責任を完全に放棄するもので、わずかな作柄の変動で価格と需給が混乱するおそれがあり、生産者の不安は計り知れません。

 戸別所得補償制度の復活が18年以降の米作りを継続する最低限の条件です。総選挙の一大争点に押し上げましょう。

 参院選の成果を生かして、衆院小選挙区で野党統一候補を擁立し、自公とその補完勢力を少数に追い込むことが、何よりも重要です。

 総選挙の選挙区は295の小選挙区に細分化されており、単組・支部でのとりくみがいっそう重要となります。

 農村でのちょうつがいの役割を果たす農民連の出番の情勢です。空白自治体を克服し、単組・支部が自転できる組織をめざしてがんばりましょう。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2017.2.6付)
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2017年2月

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