「農民」記事データベース20151026-1187-09

TPP「大筋合意」
「最終」でも「決着済み」でもない
(2/5)

日本農業“皆殺し”の実態
次々と明らかに

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「TPPはゴールどころか、
まだスタート地点にすら立っていない」

 しかし「最善」の「万全の対策」はTPPをつぶすことです。

 経済専門誌『ダイヤモンド』は「日米の議会から承認が得られなければ、今回の大筋合意は何ら実効性を持たない。その意味で、TPPはゴールどころか、まだスタート地点にすら立っていない」と結論づけています(10月8日)。

 実際、TPP「大筋合意」は、最終合意でも、「決着済み」でもなく、ヤマ場はこれからです。

 協定の中にTPPの「墓穴」が

 公開された協定「概要」によれば、TPP協定の発効には交渉参加国のうちGDP(国内総生産)の合計が85%以上を占める6カ国の批准が必要とされています。WTO(世界貿易機関)協定を含めて通常の国際協定は、調印国の過半数あるいは3分の2以上が批准すれば発効することになっており、GDP条項がもりこまれるのは全く異例です。

 これは、異論を唱える経済規模の小さな国に圧力をかけることをねらった米日主導の協定の枠組みを鮮明にしたもので、日本が提案しました。

 アメリカのGDP比率は60・4%、日本は17・7%、合計78・1%です。つまりTPP協定は(1)日本かアメリカの議会のどちらかが否決すれば成立しない、(2)日米2国だけの批准でも成立せず、歴史のゴミ箱に捨てられることになります。

 皮肉なことに、この大国主義的な条項がTPPの墓穴を掘る可能性を強めているのです。これはWTOや他のFTA(自由貿易協定)にはない条件です。

 アメリカ議会でTPP否決の可能性も

 来年の大統領選挙候補の中で最も有力と見られているヒラリー・クリントン候補は10月7日、TPP大筋合意を「米国の雇用創出や賃上げ、安全保障の促進につながるような高い水準に達していない」「為替操作への対策がTPP合意に含まれていない」として不支持を表明しました。

 TPPを推進するための貿易促進権限法(TPA)は過半数ギリギリで成立しましたが、大筋合意発表後の議会の動向は、どう見てもTPP推進は少数派です。かりにTPP交渉が10月中に最終合意(協定全文)に達したとしても、TPA法の規定により、議会審議が始まるのは大統領選挙キャンペーンが本格化する来年3月以降。

 加えて、11月以降には最終合意の全面公開が義務づけられており、TPP協定の反国民性と多国籍企業奉仕ぶりが明らかになれば、更なる反対運動を招かざるをえません。

 議会からは、為替操作に対する規制や日本・カナダなどの農産物市場開放、環境、人権などの課題で「再交渉」を要求する声が強まっています。

 これまでも、韓国や中米諸国と結んだFTAが「再交渉」の末に書き換えられるという事態は当たり前のように繰り返されてきました。

 議会の声を無視すると否決される可能性が強まり、一方、11カ国に「再交渉」を要求しても拒否されることは必至。だからこそ、オバマ大統領は、いまだにTPP協定に署名することを議会に通告できないでいるのが実態です。

 日本でTPP拒否の大運動を

 今、何よりも求められているのは安倍政権が暴走を重ねているこの日本で、TPP拒否の運動と世論を大きく広げることです。

 秘密交渉のもとで安倍政権が進めてきた底無し譲歩の内容が明らかになれば、国民の批判と怒りは燃え広がらざるをえないでしょう。農民連はブックレットや大量宣伝ビラの発行、学習会の開催などでTPPの危険な内容をキャンペーンする方針です。

 また、すべての地方でTPPに反対する集会やデモを行うとともに、東京で大規模な集会とデモを開くための準備に入っています。

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「米価回復、TPP合意阻止」を掲げて行われたパレード=9月29日、東京・霞ケ関

 「大筋合意」によって、地方の経済を支えている作物への壊滅的打撃は確実であり、地方自治体との連携、議会での反対決議を重視してとりくみを強めましょう。

 「農協改革」のもとで、都道府県、単協など農協グループに対する働きかけは特別に重要です。熊本県農協中央会会長は、国会での承認手続きに向けて「国民の『食と暮らし、命』を守るため、最後の最後まで断固反対に向けた運動を徹底的に展開していく」との強い姿勢を示しています。

 各地でとりくまれている全国食健連のグリーンウエーブの中で、この5年間で築き上げてきたTPPに反対する多くの団体・個人との共同をさらに広げ、「合意」の撤回とTPPの息の根を止めることをめざし、運動を大きく発展させるときです。

 戦争法、原発再稼働、消費税増税などに反対し、安倍政権打倒をめざす国民の運動はかつてない規模に広がっています。この運動に合流し、広範な国民とともに、安倍政権ノー、TPPを阻止するために全力を尽くしましょう。

(新聞「農民」2015.10.26付)
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2015年10月

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