農政を転換する国民的運動と
農業・農山村の再生を担う
農民連の建設を!
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2015年1月15日
農民連第21回定期大会決議
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5、農業と農民経営を守る運動
(1)米をめぐる情勢と運動
(1)安倍内閣の下で引き起こされた空前の米価大暴落
アベノミクス型市場任せの米政策のもとで2014年産の市場価格は、40数年前の水準に大暴落しました。農協の概算金は前年を1俵(60キロ)3000円前後も下回り、生産費の半値、物財費にも届かない価格となりました。直接支払い交付金の半減と米価下落補てん給付金の廃止で、まさに“米作ってメシ食えない”事態に陥り、農民の落胆と怒りを呼びました。政府の施策に沿って規模拡大した農家ほどその影響は深刻で、地方の経済や被災地の復興にも大きな打撃を与えるものです。農民連は14年春の段階から今日の事態を想定し、政府に対策を要求してきましたが、事態を放置してきた政府の責任は重大です。
(2)米価暴落の最大の要因は市場任せの米政策とミニマムアクセス米
米価暴落の原因は過剰米とされていますが、過剰はせいぜい30〜40万トン程度に過ぎず、政府がその気にさえなれば、過剰も価格暴落も食い止めることは十分可能です。しかし、農業の分野でも次々と身勝手な要求を突きつける財界の圧力のもとで、政府は「米価は市場が決める」「価格維持のための需給調整はしない」と繰り返してきました。こうした市場任せの政府の姿勢こそ米価暴落の最大の要因です。
一方、MA(ミニマムアクセス)米は需要がなくても毎年77万トンもの輸入を続け、過去19年間の輸入量は1314万トン、国民の消費量の1年7カ月分に相当します。加工用向けや主食用のSBS(売買同時入札)米も含めて国産米の需要と価格に影響を与えていることは明白です。TPP参加と米の輸入自由化を阻止する上でもMA米問題は避けて通れません。ミニマムアクセスは「輸入機会の提供」であり、「輸入は義務」とする政府に改めてその不当性を追及することが求められています。
(3)世論動かした農民連の運動
9月18日、10月22日と、二度にわたる「中央行動」で、政府に正面から対策を要求したことは重要な運動の出発点となりました。全国各地で、自治体や農協への申し入れ、街宣活動やトラクターデモなどがとりくまれ、北海道、東北6県、新潟県の知事連名で「米価対策要求」を行ったことを皮切りに、各地の自治体からも続々と「対策要求」の意見書があげられ、国会でも米価問題が大きく取り上げられました。国民の中でも「消費者は安い米ではなく、安定供給こそが願い」という機運が広がり、政府を大きく追い詰めました。「米作って飯食えねえ」をスローガンにした農民連の運動が世論を動かし政府を揺り動かし、総選挙にも影響を及ぼしたことは大きな成果でした。
(4)対策に背を向けて生産調整放棄へ動き出す政府
政府は、農民の激しい怒りの声に「農協が概算金を下げすぎた」と責任を転嫁し、「ナラシで下落が補てんされる」等のキャンペーンを展開し、ナラシが交付されるまでの間をつなぐ融資制度を打ち出しています。
しかし、米価が回復しない限り追加払いはあり得ず、ナラシも加入者は米農家の7%にすぎません。政府は15年産の主食用米の生産数量目標を前年から14万トン減らしたうえに、さらに12万トン分の生産調整の“深掘り”を求める「自主的取り組み参考値」を都道府県ごとに提示しました。「自主性」を強調していますが、2018年に国が需給調整から完全に手を引くための「トレーニング」と位置付けられるものであり、過剰になれば生産地(者)に責任を負わせようとするものです。“深掘り”は全農の60万トンの飼料用米のとりくみを前提にし、民間任せ、市場任せの路線をさらに強めるもので、需給と価格のいっそうの混乱は避けられません。
全農などが14年産20万トンを市場から隔離し「米穀安定供給機構」が倉敷料を助成する対策が取られようとしています。農民連などの要求を一定程度、反映したもので、下落に歯止めがかかろうとしていることは重要ですが、1年間隔離された米が15年秋に市場に放出されれば、さらに米価暴落の要因になりかねません。求められているのは、国の責任で過剰米を処理して需給と価格の安定をはかる「本筋での対策」です。
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米価対策を求め、農水省横をパレード=2014年10月22日 |
(5)新たな政治情勢も生かして要求と運動を強めよう
政府の進める米政策は農民、国民との矛盾を深めています。総選挙では自民党と農業分野でもきびしく対決し、対案も示した日本共産党が大躍進しました。国会での論戦と結んで、米価の要求と運動を大いに強めることが求められています。
農民連は当面の対策として緊急に過剰米の市場隔離を実施し、米価を回復させること、廃止された価格下落補てん給付金の復活、生産調整の3年後の見直し(廃止)を撤回し、需給と価格の安定に責任を持つ政策の実現を要求します。
さらに米政策のあるべき姿として、(1)あらゆる用途の米を大本で国が管理すること、(2)ゆとりある備蓄米制度を確立するとともに、備蓄米を需給調整にも活用すること、(3)生産費を前提にした価格の保障と不足時の所得の補償の実現、(4)MA米の廃止など、抜本的な米政策の転換を要求します。
(6)地域の共同で生産の維持発展を
米作りは厳しい条件のもとにありますが、米の生産の後退はTPP参加と米の輸入拡大に道を開きます。地域の共同や協力を生かして生産を維持するとりくみを広げるとともに、こういうときだからこそ消費者や米業者との共同や提携を生かして販路を広げることが求められます。
すべての農家や経営体は今後の米作りをどう進めるのか、販路をどうするのか模索をせざるをえず、飼料用米や備蓄米、加工用米などへの関心も高まっています。こうした農民の悩みや要求に応えたとりくみが求められます。農民連として制度を利用したとりくみを進めるとともに、そのためにも飼料用米の調整施設や流通対策などの問題点の改善、制度の拡充を政府に要求していきます。
(2)生産と結んだ多様な産直運動の展開
(1)生産と販路を広げる多様な運動の広がり
適地適作、安全・安心な農産物の生産が各地で展開され、高齢者や女性の力を生かした直売所やインショップ、学校給食など、多様な地産地消のとりくみが地域の生産維持と活性化に貢献しています。地域の業者と提携した加工のとりくみも各地で展開されています。「買い物難民」を解消するために団地自治会などと提携したとりくみや、女性部を先頭に在来種を守る運動が始まっていることも重要な前進です。
2013年11月には多くの業者や団体に呼びかけて4回目の「ふるさと産直みほん市」にとりくみ、成果をあげました。
農民に生産と農業からの撤退を迫るアベノミクス「農政改革」の中で、農民連が地域の仲間と力を合わせて生産を守ることは、攻撃への何よりの反撃であり、地域の活性化と循環型の地域作りの最も重要な課題です。「ものを作ってこそ農民」の真価を発揮し、多様なとりくみをさらに前進させましょう。
学校や保育園給食を“食農教育”として重視し、大都市の学校に全国ネットワークを生かして食材を提供しましょう。組織内産直も重視してとりくみましょう。
(2)新婦人会員との産直のさらなる前進を
新婦人は2014年9月に開催した第162回中央委員会で、農民連との協議を踏まえて「新婦人と農民連が応援する産直運動 あらたな共同目標(案)」を決定するとともに、産直運動を発展させる意気高い方針を打ち出しています。
「あらたな共同目標(案)」は、(1)生産者は安全を最優先して鮮度のよいおいしい農畜水産物を届け、消費者は食べることで、日本の食料と農業、食文化を守りましょう(2)お互いに顔とくらしが見える交流を大切にし、生産が成り立ち、後継者が育つ産直をめざしましょう(3)お互いの組織の発展に貢献する産直運動をめざし、定期的な協議をおこないましょう(4)こうした産直運動を通して、「農政改革」・TPP参加反対、原発ゼロ、再生可能エネルギー普及のとりくみを広げ、食料主権、大災害復興、温暖化防止、みんなが輝く持続可能な循環型の地域社会をめざしましょう。原発事故による生産基盤と食の安全・安心の回復のため、国、電力会社の責任を果たさせましょう――の4つです。
こうした「共同目標(案)」と方針に基づいて、各地で農民連と新婦人の交流や協議が進められ、とりくみが多面的に発展する方向が切り開かれつつあることは重要な前進です。中央段階でも「定期協議」が行われ、「産直わくわくニュース」の共同発行などの努力が行われています。
「あらたな共同目標(案)」を産直にとりくむすべての組織が共有し、とりくみを前進させるための話し合いや学習、交流を強めましょう。
(3)在来種を守る運動、「国際土壌年」に対応した運動
多国籍企業による種子をはじめとした遺伝資源の独占が強まり、世界的に大きな問題になっています。TPPへの参加はこうした動きをさらに加速させるものです。13年6月のビア・カンペシーナ第6回国際総会を機会に「種子を守る運動」が発展し、14年9〜10月に生物多様性条約に基づいて韓国で開かれた国際会議でも同様に強調されています。
15年は「国際家族農業年」に続いて国連が呼びかけた「国際土壌年」です。安倍内閣の「農政改革」は、「国際家族農業年」にも「国際土壌年」にも逆行するものです。国際連帯で遺伝資源の独占や土壌を維持する規制を求めるとともに、生産現場で生物多様性や土壌を維持することに配慮した生産の努力を強めましょう。
(3)農業と農民経営を守る運動
(1)消費税増税、重税に反対する運動
消費税が2014年4月から8%に増税され、デフレ不況のもとで、GDP(国内総生産)は連続的にマイナス、16カ月連続実質賃金減など、国民の暮らしと経済を破壊し、15年10月から10%への引き上げを断念せざるをえない状況にまで経済が疲弊しました。安倍首相は、総選挙の結果を受けて17年4月には消費税10%への再値上げを断行するとしています。
消費税増税は、税額を販売価格に転嫁できない農家にとって死活問題です。消費税に依存しなくても不平等税制を改めて大企業と富裕層への応分な課税によって財源を賄うことは可能です。
農民連はこの間、消費税廃止各界連絡会に結集し、全国各地で増税反対の世論と共同を広げてきました。引き続き、消費税増税阻止、廃止をめざして運動を進めます。
(2)自主申告運動と3・13重税反対運動について
消費税増税や新たな国民負担が押しつけられ、すべての事業者に記帳が義務づけられ、農家の税金に対する関心が高まっています。こうしたもとで今年の確定申告と3・13重税反対行動を、納税者としての自覚を高め、広く農家に宣伝して仲間を広げ、増税に反撃するたたかいに発展させましょう。
税務当局による直売や産直を手掛ける農家に来所依頼を乱発した違法な調査や直売所へのいっせい調査などが増えています。年度途中での消費税率の引き上げによって農家の実務対応が煩雑になり、農家が対応に苦慮する状況も広がっています。
このような税金をめぐる新たな情勢と、農家の税金に対する関心や要求が高まっているなかで、確定申告期の「春の大運動」のとりくみは重要です。記帳簿を前面に、多様な要求で結びつきのある農家に働きかけて会員に迎え入れましょう。所得税だけでなく、国保税、損害賠償請求、生産や販売、準産直など、多様な要求を掲げ、農民連の存在と要求運動を大量宣伝で広く知らせ、結びつきを広げましょう。きめ細かく地域で「相談会」を開きましょう。「春の大運動」を大きく前進させ、「3・13重税反対行動」を成功させましょう。
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「笑いあり、涙あり」の発言が相次ぎました |
(3)免税軽油制度の恒久化を要求して
運動で継続させた免税軽油制度の活用を広げるとともに、恒常的制度にするための運動を強めましょう。
(4)暮らしを守る相談会運動
農家は、営農や暮らし、雇用、高すぎて払えない国保税と保険証の取り上げ問題など、さまざまな問題を抱え、気軽に相談できる窓口を求めています。こうした要求に応えるために、弁護士や労働組合、市民団体、地方議員などと協力した日常的な相談活動を進めましょう。
(4)再生可能エネルギーを全国的な共通課題としてとりくみましょう
政府に原発ゼロの決断を迫るとともに、原発に依存しない社会、省エネ社会、そして小規模に分散した再生可能エネルギーによる循環型社会をめざして奮闘します。
資源の豊富な農村こそ、再生可能エネルギーを飛躍的に拡大して持続可能で自立した循環型社会の潜在力があり、農村の展望を切り開きます。
こうしたとりくみを進めるうえで電力会社が買い取り制限や抑制を行い、政府も追認していることは許されず、国民的運動で跳ねかえさなければなりません。
農民連の会員が農産物の生産に加えて発電の担い手となり、売電収入が得られるようになることをめざしましょう。すべての農民連組織と産直組織が、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーのとりくみを具体化し、会員だけでなく、農村住民や都市住民と連携したとりくみに踏み出しましょう。ふるさとネットワークが再生可能エネルギーのとりくみを蓄積し、推進の軸になることをめざします。
(5)都市農業と農地を守る運動
2012年8月の農水省の「都市農業に関する検討会」、同年9月の国土交通省社会資本整備審議会の「都市計画小委員会」がそれぞれ「中間とりまとめ」を行いました。両者の「まとめ」は、都市農業を「都市と緑・農の共生」として農業生産機能、自然とのふれあい、憩いの場、防災機能などの多面的機能を積極的に評価して都市計画に生かすなど、これまでの農民連や一部自治体などの要求を一定程度反映した積極的なものでした。
しかし政府は、こうした方向を無視し、市街地周辺農地の開発規制の緩和、相続税納税猶予の適用条件(終生営農)を調整区域にまで拡大し、15年度からは、相続税の課税最低限度額を引き下げて課税対象を広げるなど、都市農業をさらに困難にする方向を強めています。
同時に、市街化調整区域の生産緑地を都市の緑地保全の観点からと「都市農業基本法」に基づいて保全していく検討も進めています。
こうした政府の矛盾した都市農業政策に対して、農水省の「都市農業に関する検討会中間まとめ」が強調するように、農地を農地として維持できる税制改正と、農業経営が成り立つ農業振興策を求める方向で国や自治体への働きかけが重要です。
(新聞「農民」2015.2.2付)
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