「農民」記事データベース20150202-1151-06

農政を転換する国民的運動と
農業・農山村の再生を担う
農民連の建設を!
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2015年1月15日
農民連第21回定期大会決議

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はじめに

 2013年1月の第20回定期大会以来、農民の多様な要求を実現する運動、生産を広げて地域を活性化し食料自給率を向上させる運動を軸に、TPP交渉からの撤退、「農政改革」路線の転換、米価暴落対策などの運動、会員と新聞「農民」読者の拡大運動などに全力をあげてきました。

 民意を無視した安倍暴走政権を追い詰めて国会を解散に追い込み、国会の力関係に大きな変化を作ったことは大きな成果でした。

 こうした新たな情勢のもとで開かれる第21回定期大会の目的は、(1)2年間の運動を振り返るとともに、新たな情勢に対応したたたかいを発展させ、農村で多数者になる組織をめざす方針を確立すること、(2)決算と予算の承認、(3)新役員の選出にあります。

T 私たちをとりまく情勢

1、選挙結果について

 総選挙で自民党は議席を減らしたものの、自公で衆院の3分の2の議席を維持しました。自民党の比例代表での得票は33%にとどまりました。にもかかわらず多数の議席を得たのは大政党有利に民意をゆがめる小選挙区制によるものです。

 選挙結果のもうひとつの特徴は、安倍政権と正面から対決し、暴走政治に対する共同のたたかいの中心的役割を担ってきた日本共産党が改選前の8議席から、議案提案権を持つ21議席に躍進したことです。衆院選挙での日本共産党の躍進は1996年以来18年ぶりです。日本共産党が2013年の東京都議選、参院選に続いて躍進したことは、今後の要求実現と国民が主人公の政治に転換する展望を切り開くものとなりました。

 新基地建設に反対する「オール沖縄」のたたかいが、翁長雄志知事を誕生させたのに続いて、4つの全ての小選挙区で基地建設反対の候補を勝利させ、県民を裏切った自民党の候補者全員を敗北させたことも画期的な成果でした。

 この10年余りの国政選挙は、「二大政党づくり」や「第3極」など、自民党政治を延命させる偽りの構図に国民を押しこめる策略によって、国民の切実な要求が争点にならない状況が続いてきました。今回、民主党は「二大政党」の失地を回復できず、「第3極」といわれた勢力の退潮ぶりも明らかです。

 今後、自民党の民意を無視した暴走と国民要求が正面からぶつかりあう構図のなかで、それぞれの政党の立ち位置が鋭く問われることになります。たたかいは2015年のいっせい地方選挙、16年の参院選挙と続きます。

 農民連は、農村で要求実現と政治を変える運動を担える力をいっそう高めるとともに、要求が一致する政党と連帯してたたかいをさらに発展させるために全力を挙げます。たたかいを発展させて、政治をゆがめ、国民の暮らしや農業を脅かしている根源であるアメリカいいなり政治、大企業中心の政治を転換させる展望を切り開こうではありませんか。

2、安倍政権の民意を無視した亡国政治

 2012年12月に発足した安倍政権は、際立ったアメリカいいなり、大企業中心の民意を無視した暴走政治、右翼軍国主義的政治を推し進めてきました。

 憲法9条の改憲を政治信条とする安倍首相は、「武器輸出3原則」を放棄して軍拡路線を突き進み、13年暮れには国民の目、耳、口をふさぐ憲法違反の「特定秘密保護法」を強行し、14年7月には、アメリカが起こす戦争に自衛隊の派遣を可能にする「集団的自衛権」の行使を容認する改憲にも等しい閣議決定を行いました。こうした戦争する国づくりにむけた危険な動きは国民との矛盾を大きく深めています。

 また、安倍首相は日本政府が慰安婦問題や日本軍国主義が引き起こした侵略戦争への反省を表明した「河野談話」や「村山談話」に否定的態度を示し、侵略の象徴的施設である靖国神社に参拝して、アジアをはじめ国際社会から孤立を深めています。

 経済的には、14年4月から「安定した福祉財源を確保する」として国民の反対を押し切って消費税8%増税を強行し、デフレから脱却して成長をめざすとして、「アベノミクス3本の矢」を打ち出し、極端な金融緩和や大型公共事業を中心にした財政出動、「世界で最も企業が活動しやすい国をめざす」として法人税減税や、戦後の経済民主化や国民のたたかいで確立した様々な規制やルールを「岩盤」だと攻撃し、緩和・撤廃を推し進めてきました。

 福島原発事故が収束せず原因究明もできていないなかで、電力会社や財界の要求をうけて鹿児島・川内原発などを再稼働させ、原発を輸出しようとしています。

 農業でも、安倍首相が14年1月22日に「ダボス会議」で「40年以上続いてきたコメの減反を廃止します。民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます」と演説したように、戦後農政を総決算する政策を推進しています。

 その具体策が、TPPを前提に、「米価は市場で決まるもの」として政府の価格と需給への責任を放棄していることです。また、家族経営農業に見切りをつけて企業や企業的経営が農業を担う構造作りや、「改革」の邪魔になるとして農協や農業委員会を解体し、農地を企業が自由に取得できるようにすることです。

 「アベノミクス」のもとで一部の輸出企業が円安で空前の利益を上げています。しかし、一方で労働者の実質賃金が16カ月連続で減少し、消費税増税による景気の冷え込み、円高で資材や燃油価格が高騰して中小企業の倒産が相次ぎ、国民の暮らしは脅かされています。

 農業では、資材や飼料、燃油、電気料金など生産コストの大幅な上昇が経営を追い詰め、14年米価が40数年前の水準にまで低下して再生産が不可能な状況にまで追い込まれるなど、地域経済の困難が加速されています。

 安倍首相は、大企業がもうかれば経済は成長するといいますが、それは、多国籍企業の利益にひれ伏した政策にほかならず、「アベノミクス」がもたらしたのは格差の拡大と地域経済のいっそうの困難、国の経済と財政をますます困難にするものです。大企業の利益を最大唯一の目的にした政策から、国民の暮らし、福祉、雇用、農業を守る政策に転換することこそが国民生活と経済を立て直す道であることはいよいよ明らかです。

U 2年間の運動をふりかえって

 安倍首相は2013年7月に選挙公約と国会決議を踏みにじってTPP交渉への参加を強行しました。農民連は、14年1月に開催した全国委員会で14年度の方針の柱として安倍内閣を退場させるたたかいを呼びかけ、TPP交渉からの撤退や戦争する国づくり反対、原発再稼働を許さず原発ゼロ、消費税増税反対などの国民的たたかいを農村で担ってきました。

 こうしたたたかいが、他の分野の運動とも連動して安倍政権を追い詰め、国会を解散に追い込み、要求を実現するうえで有利な国会の力関係を作ったことは大きな成果でした。

 前大会で運動の柱と位置づけて全力を挙げてきたTPP交渉から撤退を要求するたたかいは、この2年間、画期的に広がり、危機的事態を幾度も跳ね返していまだに合意を阻止し続けていることは重要な成果です。特に、県や地域に一致点での共同組織が張り巡らされ、政府与党の圧力や妨害を乗り越えて草の根から運動が展開されていることは、TPP交渉での妥結を阻止する基盤であるだけでなく、今後の農業と農山村の発展の展望を切り開くうえでも重要です。

 米価が下落しはじめた14年春以来、政府に当面の緊急対策と米政策の根本的転換を要求し、14年産米価格の暴落が明らかになって以降の「米つくって飯食えねえ」をスローガンにした運動で世論を大きく動かし、かたくなに対策を拒否する政府与党を大きく包囲したことは、農民連の存在を大きくクローズアップさせました。

 14年2月に北関東を中心にした記録的な豪雪被害対策で、従来の枠を超える対策を勝ち取ったことをはじめ、「3・11」や、相次いだ自然災害の被災者救援活動、納税者の権利を守る運動、国保・介護保険などの負担を軽減させる運動など、農民の多様な要求を実現する運動が各地で取り組まれ、前進しています。

 生産を維持し、地域を守る運動も、高齢者や女性、青年の力を掘り起こし、条件を生かして多様に展開され、米価下落などの困難な状況の中で販路を広げて奮闘しています。農民連会員が集落営農組織や生産組織のリーダーとなり、苦労しながらも運営を支えています。

 このように、農民連の運動は、「農民の苦難あるところ農民連あり」の見地から、たたかいと地域を守る核となって奮闘した2年間でした。

 こうしたとりくみと結んで、奈良県連、福島県連、宮崎県連、茨城県西農民センターをはじめ、各地で会員と新聞「農民」読者拡大を前進させた組織が生まれています。また、この2年間に組織現勢の小さい県連の奮闘が広がっていることは大きな希望です。

 こうした前進の一方、全国的には会員拡大数を上回る離農や死亡等により会員と読者現勢が後退していることは重大です。第21回定期大会で、前進した組織の教訓に学び、組織の後退に歯止めをかける前進に転ずることが求められています。

         □ >>〔次ページ〕

(新聞「農民」2015.2.2付)
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2015年2月

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