「農民」記事データベース20150202-1151-06

農政を転換する国民的運動と
農業・農山村の再生を担う
農民連の建設を!
(3/6)

2015年1月15日
農民連第21回定期大会決議

関連/農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(1/6)
  /農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(2/6)
  /農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(3/6)
  /農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(4/6)
  /農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(5/6)
  /農政を転換する国民的運動と農業・農山村の再生を担う農民連の建設を!(6/6)


3、アベノミクス「農政改革」を許さない運動

 (1)戦後農政の総決算、農業を大企業のビジネスチャンスにする「改革」

 アベノミクス「農政改革」は、関税を撤廃するTPP参加を前提に「国際競争力のある強い農業構造をめざす」として、農地を集積して経営規模を拡大する、「農業の成長産業化」を口実に、農業、食料、農村を大企業のビジネスチャンスにすることにあります。

 その内容は、企業的経営が農業の8割を担う構造作りであり、戦後の家族経営を前提にした経営所得対策、生産調整、農地政策などの土台からの見直しと、こうした制度と不可分の関係にある農業委員会、農業協同組合の解体的見直し、株式会社の農地所有に踏み込もうとしています。

 こうした立場から、「食料・農業・農村審議会」で、カロリー自給率50%の目標を放棄する検討が行われ、新潟県や兵庫県では、「改革」のテコにするための「農業特区」が推進されています。「改革」は、米価の大暴落の引き金となり、10アール1万5000円の戸別所得補償の半減や米価補てん制度の廃止で農民経営に重大な打撃をもたらしています。

 農業の根幹にかかわる「改革」の推進が、農民や農業関係者を排除し、企業経営者や、新自由主義的な学者で構成する内閣府の一組織にすぎない「機関」を司令塔にファッショ的に推し進めていることも重大です。

 これまで自民党農政は、大企業の利益を最優先して農産物の輸入を自由化し、流通、小売りの規制撤廃、農業への参入を可能にする農地制度の改悪などを推し進め、農産物価格の低下、高齢化と担い手不足、39・8万ヘクタールにも及ぶ耕作放棄地、食料自給率の低下を招いてきました。そしていま、TPPの受け入れを前提に、食料自給率を向上させる立場を放棄し、家族農業に見切りをつけ、米などの生産を縮小し、日本多国籍企業に日本農業の“残余”の部分を差し出して利益追求の場を提供する、究極の農業つぶしに踏み出したといわなければなりません。

 家族経営を基本にした戦後農政は、侵略戦争に至った戦前の反省に立った経済の民主化のなかで確立したもので、戦前からの先輩たちがたたかいで勝ち取ったものです。これを踏みにじることは、安倍政権が進めている「戦争する国づくり」と根は同じです。

 農業を大企業のビジネスチャンスにすることは、農業の持続性を破壊し、人間が生きるための“糧(かて)”である食料を、ますます大企業の金もうけの対象にするものにほかならず、そのしわ寄せは農民のみならず、全ての国民に及びます。

 農協の解体は、農協事業を支えている信用、共済事業に銀行・金融資本が参入するねらいからのものです。系統機能の軸である中央会制度の見直しは、TPP反対運動で中央会が果たした役割に対する分断攻撃です。農協が担っている生産と農村のインフラ機能の破壊は、生産を後退させ、人の住めない農山村を加速させるものにほかなりません。

 「改革」は、農業と農村が抱えている困難を克服するための農民や関係者の懸命な努力を台なしにし、深刻化する飢餓と貧困を克服するための国際的な流れや、2014年を「国際家族農業年」として打ち出した国連のめざす方向とは真逆のものです。農協解体攻撃に対し、国際協同組合同盟(ICA)が協同組合への国家権力の介入だと厳しく批判しているように、民主主義国家として許されません。

画像
大雪で被害をうけたハウスの撤去を支援しました

 (2)アベノミクス「農政改革」の転換を要求する農民連の運動

 農民連は、アベノミクス「農政改革」のねらいを新聞「農民」や雑誌『農民』、「農民」号外で繰り返し批判し、アベノミクス「農政改革」を中止して、農業再生、食料自給率を向上させる農政への転換を要求してきました。その基本的方向は、(1)TPPやFTA路線を転換して農産物の輸入をコントロールする、(2)主要農産物の生産費を基準にした欧米社会なみの価格保障制度の確立、(3)家族経営を基本に、後継者対策を強めて多様な担い手を確保する対策です。

 また、農協や農業委員会解体、企業の農地取得に反対し、新聞「農民」特集号を全てのJA中央会、単位農協に届けて懇談し、農協の役割を守るための共同の運動を呼びかけてきました。また、農業委員会と農地制度を守るために全国的に農業関係者との対話を展開してきました。

 全労連、自治労連、生協労連、全農協労連、新婦人、全国食健連、農民連が「農政改革」に反対する共同の闘争本部を立ち上げ、「共同アピール」を発して全国的な運動を推進していることも重要な成果です。

 政府与党は、農協や農業委員会解体、農地制度の改悪に対する反発を抑え込むために、運動を自民党農林族への陳情の枠内に押し込む圧力を強めました。しかし、地域ぐるみで反対する動きが広がり、農業委員会で反対建議が相次いで採択されています。総選挙では、これまで自民党を支えてきた農協や農業委員会関係者が自民党に見切りをつけ、「農政改革」に反対する政党への支持を表明するなど、大きな変化が生まれました。

 こうした運動のなかで、JA組織が政府の「農協改革」とは相いれない基本的に現在の機能を維持する「自己改革案」を打ち出したことは重要で、今後の動きが注目されます。

 これに対してマスコミは「全中の権限温存は許されない」(11月9日付「読売」)、「JA全中、政府と対立鮮明、経営指導権の維持狙う」(11月7日付「日経」)などと批判し、選挙期間中は農政連から推薦を受けてダンマリを決め込んだ政府与党も、「政府の方向性と合っているか疑問。意見の違いを収れんさせる」(12月16日、有村治子規制改革担当相)などと巻き返す動きを強めています。

 政府は、2015年の通常国会で農協法や農業委員会法など、「農政改革関連法」を成立させる方針で、法案を阻止するためにさらに運動を強めます。

 運動の主戦場は地域にあります。TPPでの共同の前進を生かし、地域ぐるみで地域農業と農協、農業委員会の役割を考える集いなどを開催しましょう。

4、震災復興、原発事故の賠償要求運動

 (1)震災救援、復興運動

 2011年3月11日の大震災から4年近くが経過しようとしていますが、いまだに9万人の被災者が仮設住宅で暮らし、住宅、雇用、生業など、復興の途上にあります。アベノミクスが復興の妨げとなっているのが現状です。

 福島原発事故は収束のめどが立たず、汚染水もれなどの重大事故が後を絶ちません。約12万人の被災者が避難生活を余儀なくされたままです。放射能汚染に対するいわゆる「風評被害」も依然として深刻で、農業経営に重大な影響をもたらし続けています。こうした状況にもかかわらず東電と政府は賠償の打ち切りや後退など、許されない態度をとっています。

 宮城県などでは、被災者を置きざりにした大企業のもうけ優先の「復興策」や、「水産特区」など漁民の漁業権を奪う「構造改革」のテコにする動きが進められています。

 大企業の要求を受け入れて法人復興税を1年前倒しで廃止し、復興に便乗して復興予算を一般公共事業に流用していることも許しがたいものです。

 農民連は、全国災対連と連携して、住宅の建て替えに対する直接助成の大幅な拡大、政府の全額負担による農業施設の復旧、漁港再建や加工・冷凍などの漁業関係施設の復旧、二重ローンの解消、生活再建支援などを要求して運動をしてきました。

 前大会以後、異常気象による大型台風や豪雨、大雪、地震、火山噴火による被害が相次いで発生し、農業が甚大な被害を受けています。こうしたなか、各地の農民連が救援の先頭に立ち、被災者から喜ばれています。

 「3・11」被害では、仮設住宅などへの支援が継続され、福島の直売所への農産物支援もとりくまれています。ふるさとネットワークの、福島県をはじめ被災地の農産物を全国に紹介するとりくみも継続して進められています。農民連の継続した支援活動に対し、宮城県東松島市長から宮城県農民連と本部に感謝状が届けられました。同市内には、農民連食品分析センターのプレハブが移設されて救援活動の拠点となっています。東日本大震災の被災地には、引き続き物心両面からの支援が求められます。

 2014年2月の関東地方を中心にした豪雪被害では、本部と被災県連が連携して政府交渉、地方自治体交渉を積み上げ、従来の枠組みを上回る画期的な対策を勝ち取りました。しかし、制度の運用が滞って助成金の交付が大幅にずれ込んでおり、引き続くとりくみが求められています。

 この間の農民連の奮闘は、被災者を支えただけでなく、多くの出会いがあり、人と人のつなが りの大切さを浮き彫りにしました。とりくみの中で、被災地に農民連組織が作られていることも重要な成果です。

 「3・11」をはじめ、災害の都度、全国に呼び掛けた救援募金は、被災県連を通して被災者への見舞いや支援活動の資金として活用され、支えとなりました。

 異常気象のもとで、日本中どこの地域でも被災地になる危険性があります。また、大震災が引き起こされる可能性も指摘されている中で、災害対策運動はますます重要になっています。

 (2)原発ゼロと原発事故の全面的な損害賠償を要求する運動

 福島第一原子力発電所の事故以来、政府や財界の分断攻撃を跳ね返し、世論の多数を原発ゼロ、再稼働反対の側に結集し、政府と電力会社の原発再稼働のねらいをおさえてきました。

 安倍政権が原発を再稼働させ、原発の建て替えや新建設まで視野に入れた動きを強めている中で原発ゼロを要求する草の根からの運動がますます重要になっています。

 こうした原発ゼロを政府に迫る運動と一体的に損害賠償運動を展開し、東電と政府の不誠実な責任逃れの態度を跳ね返し、ADR(原子力損害賠償紛争解決センタ)の活用を含めて一定の成果を上げてきました。

 しかしいまだに避難生活を余儀なくされている被災者が12万人を超え、汚染水問題や、発電所のガレキ撤去による放射性物質の飛散、山林や田畑の「除染」作業も進まない状況が続いています。にもかかわらず、政府と東電は、損害賠償を打ち切る姿勢を強めています。

 東電は14年6月4日、被災者への損害賠償よりも東電の経営を優先する態度を明確にして以来、ほとんどの賠償請求に対して「原則賠償の対象外」とし、「個別の事情をお伺いして適切に対応させていただく」という態度に終始しています。

 検査をして「数値を見える化」することによって「安心感」が得られることは、農薬問題で試されずみのことであり、原発事故から28年たったチェルノブイリでは、今でも小学校や農産物市場に検査機器を設置し検査を行っていることからも明らかです。

 しかし、13年1月30日に原子力損害賠償紛争審査会は「例えば、有機農産物等の特別な栽培方法等により生産された商品は……通常のものと比べて風評被害を受けやすく、……留意すべきである」との「中間指針第3次追補」を出しました。

 こうした特別の栽培方法など独自の基準を設けた契約取引について、14年2月、千葉地裁は、この契約取引を「当然のとりくみ」として損害賠償を認め、東電もその判決を受け入れています。

 これらの成果を生かし、「原発ゼロ」と結んで、賠償を逃れようとする国と東電を許さず、田畑を汚された「財物被害」の賠償を含めた全面賠償を求める運動をさらに広げましょう。

(新聞「農民」2015.2.2付)
ライン

2015年2月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2015, 農民運動全国連合会