小規模農業と食糧主権は、世界危機の打開策(上)ビア・カンペシーナ第5回国際総会 モザンビーク宣言
今、世界は、食糧危機、エネルギー危機、気候危機、金融危機など多面的な危機に直面している。自由貿易や遺伝子組み換え作物の拡大など大国によって強引に押しつけられてきた偽りの解決策では、現状を悪化させることはあっても改善することはない。資本主義システムと新自由主義は、自らがすべての元凶であるという事実から目を背けている。真の打開策を見つけるには、ビア・カンペシーナが提案している食糧主権に目を向ける必要がある。
いかにしてこのような危機が起こったのか?この数十年間、金融資本と多国籍企業は、農業と世界食糧システムに全側面から侵入してきた。種子の民営化と農薬販売から収穫物の買い取り、食品加工、それら商品の運送と流通、消費者への販売まで、すべてが少数の企業の管理下に置かれてしまった。食糧は、すべての人間の権利から単なる商品に変わってしまった。その結果、われわれの食生活は、割高で不健康な食生活に単一化され、固有の伝統料理が失われている。同時に、われわれは植民地時代以来の天然資源支配に対する資本の攻勢を目にしている。資本は、利潤追求の競争に勝つために民営化戦争を始め、小農民や先住民を追い立ててきた。われわれの土地、領域、森林、生物多様性、水、鉱物資源は、民営化によって略奪されている。これは農村と環境に対する攻撃である。大規模なアグロ燃料のモノカルチャーは、この強制移住作戦の一つである。アグロ燃料はエネルギー・気候危機を解決するという偽りの議論によって正当化されているが、実際は、商品を長距離輸送することと、大量運送でない個別の運送のほうがエネルギー・気候危機のより大きな要因となっているのである。 今日、食糧危機と金融危機により状況は悪化している。食糧危機と金融危機は、食糧と土地に対する金融投機とリンクしている。危機が拡大するとともに、金融資本はより窮地に追い込まれており、政府は国家財政を企業の緊急援助に回し、国家予算を削減して貧困と苦しみを拡大している。このような中、飢餓は、世界中で拡大し続けている。搾取とあらゆる形の暴力、特に女性に対する暴力は日々増加している。先進国の景気後退によって、外国人排除が人種差別と抑圧を伴って広がっている。支配的経済モデルは、今までになく農村の若者の選択を奪っている。
全体的に状況は悪化しているが、われわれは、他の危機の時と同様にこれをチャンスとして認識しなければならない。資本主義は、これらの危機を自らのモデルチェンジと新たな利潤拡大のチャンスとして見ているが、この危機は社会運動を躍進させるチャンスでもある。世論の中で新自由主義の基本論理が正当性を失っていることは真実であり、国際金融機関(世界銀行、IMF、WTO)は、危機の原因であり、危機管理能力がないことが明らかになった。この真実は、それら機関に終止符を打ち、本当に国民のために世界経済を調整する新しい機関を作るチャンスを生み出す。多国籍企業が背後にいる真の敵であること、新自由主義志向の政府が国民の利益を守らないことが日々明らかになっている。多国籍企業の食糧体制では多くの世界人口を養えないことが日々明らかになっている一方、小規模農業に基盤を置いた食糧主権がこれまで以上に必要とされている。 (つづく)
(新聞「農民」2008.11.17付)
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[2008年11月]
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