「農民」記事データベース20081117-853-01

農民連含む41組織の新加入で前進

今こそ食料主権確立、
民衆の団結と闘争を

ビア・カンペシーナ第5回国際総会

画像 ビア・カンペシーナ第5回国際総会(4年ごとに開催)が10月16〜23日、南部アフリカのモザンビークで開かれました。総会には57カ国の代表325人を含む550人が出席。各組織の代表は、男性・女性・青年各一人ずつというユニークな構成基準をとっているため、女性の参加が目立ちます。農民連からは真嶋良孝副会長(男性代表)、工藤美恵子さん(女性代表)、杵塚歩さん(青年代表)と、通訳として国際部員の武田伸也さんが参加しました。総会の様子を真嶋がリポートします。

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 連帯組織と初の合同集会ひらく

 総会は第2回青年集会(16〜17日)、第3回女性集会(17〜18日)、国際総会(19〜22日)、第1回ビア・カンペシーナ連帯組織集会(22〜23日)の長丁場。1日のスケジュールは、朝9時過ぎからの「ミスティカ」(各ブロックが工夫をこらして演じる小構成劇)に始まり、夜10時近くまでびっしり。しかし、世界中から集まった、肌の色も風習も異なる参加者が真剣に討議し、和気あいあいと交流しました。

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新しい国際調整委員が選出されました

 総会のメーン・スローガンは「今こそ食糧主権を! 今こそ民衆の団結と闘争を!」。会場のあちこちに、ポルトガル語、英語、フランス語、スペイン語で書かれた巨大な垂れ幕が掲げられました。このスローガンを象徴するのが、ラテンアメリカやネパールで食糧主権が憲法に盛り込まれたという事実と、今回初めて開かれたNGOなど連帯組織との合同集会。さらに総会を特徴づけたのは、41の組織が新たに加入して前進するビア・カンペシーナの勢いを示したことと、女性に対する暴力を根絶しようというキャンペーンの開始です。

加盟組織12カ国 勢いづくアフリカ

 食糧危機の打開策は自給率向上

 総会の半月前に、南米・エクアドルで食糧主権を明記した新憲法が成立したことが、総会に勢いをつけました。ボリビアやキューバ、ベネズエラの代表は「食糧主権を憲法にもりこむ動きを南米全体に広げていく」と熱く語り、ラテンアメリカ全体に食糧主権の確立を求める共同・連帯の流れが脈々と広がっていることをうかがわせます。

 総会の討論で印象深く聞いたのは、農業政策をめぐる議論でした。従来あった“先進国の農業補助金と輸入制限が途上国の農業発展を阻害している”という類の議論はすっかり姿を消し、食糧主権を実現するうえで不可欠な農地改革や価格保障を含む小農民・家族経営農民に対する支援を求める意見が相次ぎました。

 食糧危機のなかで、自給率向上を求める意見がアフリカや中米、アジアの代表から相次いだのも特徴的でした。

 韓国の全国農民会総聯盟(KPL)代表は「農業は生命であり、公共的なものとして守られるべきだ。各国が一定の自給率を保つよう、ビア・カンペシーナとNGOが連帯して世界的な運動を行うべきだ」と提案。

 食糧主権の真髄は輸出用の農業生産ではなく、地域・国内の消費に向けた生産に焦点をあてることであり、その意味では自給率向上は当然の前提です。しかし、私がこれまで参加したどの会議よりも自給率向上が強調された会議でした。

“食糧主権を憲法に”中南米の国次々

 食糧主権は希望と命を生み出す

 また、食糧主権の重要な柱である食品の安全性にも踏み込みました。

 総会の成果をまとめた「モザンビーク宣言」は「新自由主義モデルが『危機』と『死』しか生み出さないのに対し、食糧主権は農村住民と消費者に『希望』と『命』を生み出す」とのべています。総会全体のトーンとして、現在の食糧・気候・エネルギー・金融の4つの危機が、逆に運動にとってのチャンスだということが強調されました。

 私は食の安全をめぐる危機的事態が日本で進んでいることを報告し、汚染米問題が、食の安全を求める消費者の怒りに火をつけ、WTOの最大の矛盾の一つであるミニマム・アクセスの廃止につながる展望があると発言しました。

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ヘンリー・サラギ氏(右端)がモザンビーク大統領(左から2人目)にビア・カンペシーナの旗と帽子を贈呈

 農民連は今総会で正式メンバー

 国際調整委員会の責任者であるヘンリー・サラギ氏が「われわれは大“家族”であるが、その家族がさらに大きくなった」と紹介したように、41組織が新たに加盟し、総会初日に承認され、約200組織になったことが報告されました。農民連はこれまで“候補”組織でしたが、この総会で正式メンバーになりました。東南・東アジアからは、カンボジア農民・自然ネットワーク(FNN)とタイ北部農民連合(NPF)が仲間に加わりました。

 なかでも、アフリカの張り切りようはたいへんなもので、これまで5カ国だった加盟組織が12カ国に増えました。ヘンリー・サラギ氏が「昨年2月に西アフリカ・マリで食糧主権国際フォーラムを開き、今回モザンビークで国際総会を開いた成果が結実した」とうれしそうに語っていたのが印象的でした。

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新たに加盟した各国の組織が紹介されました

 女性への暴力を根絶するために

 総会では「女性に対する暴力を根絶する世界キャンペーン」が提案されました。ヘンリー・サラギ氏は、暴力の根源が新自由主義政策にあるとしたうえで、「暴力は農村のなかにも、われわれの家庭のなかにもある。女性への暴力は、社会不正の根源であることに加え、われわれのたたかいの前進を制限している。ビア・カンペシーナは、新しい社会構築のために、新たなよりよい人間関係を組織内でも築いていく。そのために、このキャンペーンに全力で取り組もう」と提案。

 女性も男性も総立ちになって、この提案を歓迎しました。

今後4年間の行動計画

 総会では今後4年間の行動計画が採択されました。かなり長いものなので、とりあえず柱だけを紹介します。

 (1)多国籍企業が現在の4つの危機の原因であり、主要な敵である。戦略をもち、世界の農民が共同し、広範な社会階層と連帯して多国籍企業とたたかう。
 (2)多国籍企業が世界支配のためにあやつっているWTOや世界銀行、国際通貨基金、FTA・EPAに対するたたかいを強化する。
 (3)食糧主権を確立するため、革新的な政府との共同を強め、憲法や農業法に食糧主権を盛り込ませ、農地改革や農民支援策などの公共政策を実現させる。
 (4)国連と各国政府に対し「農民の権利宣言」の採択を迫る。また現在、危機のなかで増えている移民の権利を守る。
 (5)気候危機に対する対案は持続可能で生物多様性を尊重する家族経営農業である。多国籍企業や先進国の妨害をはねのけ、2009年12月の国際会議で危機を打開する結論をかちとる。
 (6)農地を人間のための食糧ではなく自動車のために使い、モノカルチャーとプランテーションを拡大するバイオ燃料(アグロ燃料)に反対する。
 (7)NGOなど広範な社会階層との連帯強化に全力をあげる。
 (8)「女性に対する暴力を根絶する世界キャンペーン」に力を注ぐ。
 (9)青年は未来であり、希望である。青年の創造性と力を発揮してもらうため、特別の措置をとる。
 (10)強く大きなビア・カンペシーナをつくる。

(新聞「農民」2008.11.17付)
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2008年11月

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