「農民」記事データベース20060717-740-07

地域農業の振興が、わが農協の生きる道です(2/2)

列島北で南でがんばる農協

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鹿児島・肝付吾平(きもつき あいら)農協

自力で高い成果上げる

組合員の圧倒的多数の合意得て

 鹿児島県の肝付吾平町農協は、大隅半島の中心に位置しています。水田面積は三百五十ヘクタール、畑地は八百ヘクタール、土地の六割は山林という中山間地です。シラス台地の下には湧水が噴出して、姶良(あいら)川を形成しており、この水がおいしい「美里あいら米」をはぐくんでいます。また、畑にはカンショが栽培され、でん粉工場も数カ所あり、稲ワラはムシロや縄などに加工される純農村地帯です。

 利用高は抜群

 県と農協県中央会などの十二合併構想のもとで、県内九十近くあった農協は現在、十八に激減。その中で最小の当農協は、合併せず、自力で進むことを決意しています。この点では、組合員の圧倒的多数の合意に基づいて、理事会は確信を持って運営にあたっています。

 現在、正組合員は千九十八人、準組合員は二百五十三人です。特徴として、自己資本比率は二二・八四%、一組合員当たりの購買品利用高は百九十万円で、いずれも県下で抜群の一位です。

 学習会重ねて

 吾平町は今年一月、鹿屋市と合併しましたが、組合員からは「農協だけは合併せずに単独でがんばってほしい」との声が寄せられています。町役場のない農村での経済、産業、文化の守り手として、農協の役割はますます重要になっています。

 農協に対する内外農家の評価は高く、第一に飼料や肥料の車への積み込みなどサービスがよいこと、第二に購買品の値段が安いこと、第三に年中無休で店舗が開いていることなどがあげられます。また、財政基盤を強める一環として、組合長をはじめ役員の報酬を約四割カットする一方で、組合員の意識を高める教育や農政運動での学習会を重視。さらに、毎年の総会で、組合員の意向に基づいて、組合員の代表があらかじめ質問状を提出し、それに対して執行部が丁寧に答弁するなど、「知は力なり」を実践しています。

 旧吾平町と肝付吾平町農協は十年前から、互いに出資してカボチャ、ネギの価格安定制度をつくり、農家にたいへん喜ばれ、内外の高い評価を受けてきました。私は、日本全体で価格保障制度が確立されることを強く期待しています。(肝付吾平町農協理事・鹿児島県農民連顧問 真戸原勲)


 JA肝付吾平の休坂義教組合長の話

 昨年十月に「経営所得安定対策大綱」が決定され、担い手への施策の集中化・重点化が打ち出されました。

 私どもは、地域の実態に即した担い手づくり対策こそ最も重要であるとの立場から、多くの農民を切り捨てる農政にくみするわけにはいきません。私どものJA管内では、四ヘクタール以上の稲作農家は二人しかいません。

 新たな経営安定対策のうち、品目横断対策から外されたでん粉原料用カンショの対象要件は、実質的に全農家を対象とする「特別措置」をとるなど、本県JAの要請が反映されました。

 こうした方向で実質的に全農家対象の農政を確立するため、全力をあげてまいります。


和歌山・紀の里農協

“ものづくり”の熱意が原動力

「めっけもん広場」への出荷で<お年寄りも生き生きと…

 和歌山・紀の里農協の直売所「めっけもん広場」は、年間二十四億円を売り上げる、全国トップクラスの農産物直売所です。開設から六年、食の安全・安心に対する関心の高まりを背景に急成長しました。「市場に出荷できない少量の農産物もお金になり、お年寄りも生き生きしてきた」と、石橋芳春組合長。農家と消費者をつなぐ架け橋となり、高齢化が進む農村の一条の光となっています。

 平日といえども、にぎわいが消えることのない「めっけもん広場」。年間の来客数は約八十万人、一日平均では二千四百人を超えます。紀の川市内に住む主婦は「安くていいものが買える。同じキュウリでも漬物にするなら形や大きさがそろってなくてもいい。そうした、自分の欲しいものが見つかると楽しい」と魅力を語ります。また、近くに転居したばかりの夫婦は近所の人に「作った農家の名前がわかるから」と聞いて、初めて来店。「梅干しでも漬けようかと思って」と、梅を大量に買い求めていました。

 農を守る決意

 紀の里農協の石橋組合長には「めっけもん広場」について忘れられない記憶があります。一つは、どうしても品ぞろえが不足する雨の日に、腰の曲がったおばあちゃんが「私ががんばらなきゃ」と出荷してくれたこと。もう一つは、小学生の女の子が、つくしを採って出荷したところ百円で売れ、「将来、農家になる」と言ってくれたこと。こうした“ものづくり”への熱意が、「めっけもん広場」の原動力です。

 紀の里農協のエリアは今は紀の川市に合併した紀ノ川沿いの五つの旧町。大阪市から車で一時間ほどですが、和泉山脈が県境を隔て、峠を越えて眼下に広がる景色はまるで別天地。かつてはミカンの里でしたが、輸入自由化で改植が進み、今は桃や柿が主力。ですが、全般的な農産物価格の低迷は、県下一の販売高を誇る紀の里農協の経営さえ圧迫しています。

 「高齢化と後継者不足は深刻。それでも国は“担い手”を限定するという。腹の内は農業をつぶす気か」と、農政への不満を隠さない石橋組合長。「切り捨てられる農家をどう守っていくか、農協の真価が問われる」と決意を語っています。

(新聞「農民」2006.7.17付)
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2006年7月

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