「農民」記事データベース20060717-740-06

地域農業の振興が、わが農協の生きる道です(1/2)

列島北で南でがんばる農協

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宮城・登米とめ農協

「家族農業守ろう」組合員の結集で大きく変化

「環境保全米」運動が自信に

 宮城県のみやぎ登米農協は、県北東部の米どころに位置する広域合併農協です。米の集荷量は、約七十五万俵で県下一。「組合員の結集を強めて農協運動の再構築をめざす」という阿部長壽組合長のもと、地域農業の活性化にとりくんでいます。農政や農協運動のこと、そして農協がとりくむ「環境保全米」などについて、話を聞きました。

 組合長の信念

 「今度の『新農政』は、家族経営主義から農家の選別政策へと転換し、農地の企業解放を進めることがねらい。これは食料自給率ダウン農政であり、市場開放農政の総仕上げです」と、今日の農政を手厳しく批判する阿部組合長。それは「日本農業の根本は、家族経営農業だ」という強い信念があるからです。

 農協は、戦後、生まれた家族経営農家を支援し、地域農業のためにさまざまな貢献をしてきました。しかし今、こうした農協の役割を真っ向から否定する攻撃がかけられています。それはまさに、家族経営農業をつぶす政策を推し進めるうえで、農協がジャマだからです。

 この攻撃をはね返すために、組合員の再結集を図り、農協運動を再構築して、その力をつけることが必要だというのが、阿部組合長の持論です。

 再構築のカギ

 阿部組合長は、かつて宮城県農協中央会の参事も務めた農協運動の“大ベテラン”。その後、地元に帰り、四年前にみやぎ登米農協の組合長に就任しました。まずやったのは、地域農業の特徴と農協の存在感を把握することだったそうです。

 「この農協もご多分にもれず、合併の過程で農協運動が風化し、組合員の農協離れが進んでいました。農協の原点である組合員の再結集をどうやって図るか、そのきっかけを米に求め、『環境保全米』運動を始めたのです」

 「環境保全米」は、無農薬、低農薬の有機栽培米。〇三年の冷害にも収量をあげたことから爆発的に作付面積が増え、〇五年には農協が集荷する米の七割を超えました。それにともなって、組合員の農協に対する見方、考え方も変わってきたといいます。

 協同を基礎に

 まず、組合員の生産意欲が回復し、部会の活動が活発になりました。農協のガソリンスタンドの売り上げも増加し、減らすよう指導した農薬や肥料の購買も、結集が強まったことで、かえって増加したそうです。

 当初は、意識改革を迫られて反発していた営農指導員など職員にも変化が表れました。阿部組合長は「理念は日々の理事会での論戦や職員との会話、業務を通じて浸透していった」と振り返ります。今年の総代会で「農協の再合併はあるのか」と質問した組合員に、組合長は「組合員のみなさんが結集している以上、再合併はしない」ときっぱり答えました。

 「組合員の結集が図られて、本当の農政運動ができる」と阿部組合長。未来を見すえてこう言います。「今世紀のうちに地域農業と農村社会のもつ普遍的な価値が見直されるときが必ず来る。そして、人間がお互いにバラバラにされた社会は終わり、協同を基礎にした社会が始まるでしょう」


北海道鵡川(むかわ)農協

合併拒み自主運営

努力実り販売額も回復

 鵡川農協は、近隣の農協がすべて広域合併するなかで、「合併のために血を流すくらいなら、鵡川のために流したい」と胆振地域では唯一、自主運営を選択しました。

 一九九六年度の農産物販売額は、米の十七億円を中心に三十六億三千万円でしたが、輸入自由化や市場原理の導入で生産者米価が落ち込み、二〇〇一年度には二十九億八千万円に減少。このため、「自主運営五カ年計画」を作り、「小さくても個性豊かな農協めざして」のスローガンのもと、水稲中心から野菜・園芸、肉牛などを取り入れた複合経営に移行する、新たな鵡川農業づくりに歩みだしました。

小さくても個性豊かに…

 昨年度で終了した「自主運営計画」は、販売手数料の引き上げや職員給与の抑制など、農家組合員、役職員の心血注いだ努力の結果、その目標を達成。特に、営農対策室を配置し、営農事業を強化したことが力になり、二〇〇五年度の農産物販売額は、野菜や花き、和牛を中心に三十七億五千万円まで回復することができました。

 この間、「新たな米政策」が展開される中で、“鵡川の農業を維持し、支えている人は、みんな「担い手」”と位置づけ、農業者の選別はしないという方針を明確にしてきました。そして、減反割り当てなどせず、経営実態に合った作物の選択を農家自らおこない、作物別生産組織をつくって研修・研さんをはかる一方、その販売には農協が責任をもつ立場でがんばってきました。こうして、野菜ではホウレンソウに次いでレタス、ニラなども地域の特産として取引されるようになり、和牛は管内市場でトップクラスの評価を得るまでになっています。

 今後、「品目横断対策」を中心とした新たな経営対策が始まろうとしていますが、こうした対策に振り回されず、「独自のやり方で多くの農家が営農できる体制を」と、取り組みを検討しています。

(鵡川農民組合 北村修)

(新聞「農民」2006.7.17付)
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2006年7月

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