バンク化・会社化・外部化・中小農協つぶし…
どこへ向かうのか?「JA改革」
全国農協中央会(全中)は六月の理事会で、第二十四回JA全国大会(十月開催予定)に向けた組織協議案「食と農を結ぶ活力あるJAづくり」を決定し、いま組織討議が行われています。「農業・農協つぶし」の攻撃のなか、いま農協に何が求められているのでしょうか。
農家組合員参加の姿勢が全く欠落
―JAの「組織協議案」が示すもの
広島大学名誉教授 三国 英実
全中は、組織協議案を「JAグループの役職員が共有する三カ年の作戦書」と位置づけ、これまで必ず提起してきた「協同活動の強化」を消してしまっています。すなわち、農協の組織・事業の改革を役職員と農家組合員との協同活動で実現するという姿勢が欠落し、農家組合員を単に農協事業の対象・顧客としてしか見ないような農協運営への転換が大きな特徴です。
運営から排除
その証拠に、組織協議案は、すべての農協に「地域における役割」「注力すべき事業・活動分野」などを明確にしたビジョンづくりを提起していますが、ビジョンは全役職員の参加を得て策定し、全役職員で共有化するとしており、ここではビジョンづくりへの農家組合員の参加、農家組合員との共有姿勢がまったく欠落しています。また、役職員の教育・研修は提起されていますが、農家組合員教育の課題が議案から消えています。
農協の基本的構成員である農家組合員を農協運営から排除したということは、協同組合という特質をそう失し、単なる企業体として生き延びる「農協改革」にまい進することを示しています。
人事管理強化
組織協議案は、「担い手支援」を最重要課題とし、品目横断対策を事業拡大の好機ととらえ、担い手への個別事業対応のため、JA・連合組織一体の機能発揮を提起しています。個別事業対応では協同活動の必要性はありません。「経済事業改革」により、農家組合員の必要な施設・事業でも、「赤字」の場合、統廃合、外部委託、別会社化が強力に進められます。全中が決定した「JAの支所・支店の再構築指針」の「存置最低基準」により、農家組合員のよりどころである支所・支店の統廃合をさらに強化する方針です。小規模農協の解消も提起しています。農協経営収支の改善を、人員整理と人件費の削減に求め、職員に対する目標管理、能力主義を基本とした人事制度を一層強化する計画です。
弱体化を促進
今日の官邸・財界からの農協「解体」攻撃は、農協の総合的事業運営と連合会の補完機能に向けられていますが、組織協議案の示す各事業の「JA・連合会の一体的事業運営」の強化は、地域の条件を生かした農協の発展をゆがめ、むしろ農協の総合性・系統性の弱体化を促進します。
戦後、農家組合員とともに築き上げてきた農協の人的・物的資産を守り、役職員と農家組合員との知恵と協同で、農協・連合会の再構築を図ることが大切です。
全農協労連・滋賀単協労連書記長 野村 泰士
一九九二年四月から「農協」が「JA」の愛称で呼ばれるようになり、何かが変わるような錯覚に陥ったことを覚えています。ある農家組合員の方に、「JAはジャーになるから、じゃバイバイにならないようにな」とも言われました。月日が立ち、経営管理委員会制度が導入されると駐車場に張ってあった「組合長」の看板が「理事長」に変わり、農協から「組合長・副組合長」という言葉がなくなりました。
二〇〇五年度から固定資産減損会計が導入されました。農協は、農家組合員の、血のにじむような出資金で営々と築いてきた事業所・資産を経営効率化と称する「経済事業改革」の名によって、統廃合、資産売却へとひた走っています。
「農協」「協同」「組合」という言葉が日常の活動や仕事、会話から消えようとしています。組織協議案では農家組合員を「担い手」か、「非担い手」に選別することを積極的に進めることを決め、JA自らが組合員を切り捨てようとしています。
奇しくも全中のホームページでは、「資本主義社会の経済原則は市場での競争で、弱肉強食の論理です。協同組合は、こうした資本主義社会にあって、人間尊重と社会的公正の実現という理想を持った運動体です」と説明しています。だからこそ、農家組合員・農協職員、地域の人々とともに、組織協議案をもとに議論の風をおおいに巻き起こすことが大切ではないでしょうか。もう一度、農家組合員の営農と暮らしを守り、発展させる協同組合になるように組織協議案の変更を求めていきましょう。
(新聞「農民」2006.7.17付)
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